役員報酬が無報酬でも「役員退職金」は支給できるの?

日本の税法上、役員退職金にかかる税金は非常に優遇されています。

例えば、1,000万円の「役員報酬」および「役員退職金」が支給されたときの手取り額を比較すると次のようになります。

役員報酬の手取り額
役員報酬 所得税 復興特別所得税 住民税 社会保険料
1,000万円 76万8,500円 1万6,138円 60万5,500円 144万円

手取り額:716万9,862円

役員退職金の手取り額
役員退職金 所得税 復興特別所得税 住民税 社会保険料
1,000万円 5万円 1,050円 10万円 0円

手取り額:984万8,950円

※勤続年数は20年とします。
※基礎控除を適用しています。社会保険料は14.4%で計算しています。会社や地域によって違ってきますので目安として考えてください。

会社から支給している額は1,000万円と全く同じですが、役員退職金にすることで手取り額が267万9,088円も増えました。

つまり、役員には「役員報酬」より「役員退職金」として報酬を支給したほうが税制面で圧倒的にお得ということです。

しかし、ここで気になるのが、これまで役員報酬が無報酬であったとしても「役員退職金」を支給できるのかどうかです。

役員報酬が無報酬でも「役員退職金」は支給できる

先に結論を言っておくと、役員報酬が無報酬でも「役員退職金」は支給できます。

役員退職金には、

  1. これまでの労働の対価としての”賃金後払い的性格”
  2. 個人の会社に対する功績としての”功労報償的性格”
  3. 退職後の生活を保障するための”生活保障的性格”

という3つの性格があります。

したがって、役員が会社に対して労務の提供があり、その功績が認められる場合は、これまで何らかの理由で役員報酬が無報酬であったとしても、役員退職金を支給することは可能です。

芦屋会計
逆に言えば、会社に在籍しているだけで勤務実態がない場合は、役員退職金の損金算入が認められない可能性があります。

役員退職金が「不相当に高額」な場合は損金算入できない

役員退職金は、法律で明確な基準が設けられていないため、会社が独自に算出して支給することが可能です。

しかしながら、会社の規模や勤務実態に対して、あまりにも高額とみなされた場合は、役員退職金の損金算入が認められない可能性があります。

芦屋会計
税務署の担当者によって「この会社の場合、役員退職金が○○万円までなら問題なし」といった判断が変わってきます。

そのため、実務上は、

  • 功績倍率法
  • 1年当たり平均額法

という2つの判断基準で役員退職金を決めていくことになります。

功績倍率法

功績倍率法は、役員退職金の適正額の判断基準として一般的に利用されています。

計算方法は、次のとおりです。

役員退職金 = 退職時の月額報酬 × 勤続年数 × 功績倍率

功績倍率は、一般的な経営者であれば、過去の判例から2〜3倍が適正と言われています。

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功績倍率は、役職によって異なり、一般的には、

  • 会長 → 3.0倍
  • 社長 → 3.0倍
  • 専務 → 2.5倍
  • 常務 → 2.5倍
  • 取締役 → 2.0倍
  • 監査役 → 2.0倍

が適正水準とされています。

例えば、代表取締役社長、退職時の役員報酬が50万円、勤続年数が25年だった場合、役員退職金は次のように計算できます。

役員退職金 = 退職時の月額報酬 × 勤続年数 × 功績倍率 = 50万円 × 30年 × 3倍 = 4,500万円

定義

功績倍率法については、平成29年度法人税基本通達により定義が明文化されています。

役員の退職の直前に支給した給与の額を基礎として、役員の法人の業務に従事した期間及び役員の職責に応じた倍率を乗ずる方法により支給する金額が算定される方法をいう

出典:法人税基本通達9-2-27の2

1年当たり平均額法

役員報酬が無報酬の場合は「功績倍率法」で計算をすると、著しく少額の役員退職金となってしまいます。

そのため、役員報酬が無報酬だったり、業績悪化により退職時期に役員報酬を大幅に減額していた場合は、1年当たり平均額法で計算することをおすすめします。

役員退職金 = 類似法人の役員退職金の1年当たり平均額 × 退職する役員の勤続年数

最高功績倍率法

1年当たり平均額法では、類似法人の役員退職金の情報を参考に決めていきます。

しかし、

  • 類似法人の抽出基準が十分ではない

といったケースがあります。

そのときは、抽出件数が僅少かつ当該法人と最高功績倍率を示す同業類似法人とが極めて類似していると認められる場合に最高功績倍率法で役員退職金を決めることができます。

役員退職金 = 最終月額報酬 × 勤続年数 × 類似法人の最高功績倍率

役員報酬の「不相当に高額」の法令と判例

法令

ここまで解説した役員報酬の「不相当に高額」については、法人税法で次のように定められています。

2 内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与、以下省略)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

出典:法人税法第34条第2項

上記の条文にある「不相当に高額な部分の金額」は、政令(法人税法施行令)で規定されています。

第七十条 法第三十四条第二項(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める金額は、次に掲げる金額の合計額とする。

一 次に掲げる金額のうちいずれか多い金額

イ 内国法人が各事業年度においてその役員に対して支給した給与(法第三十四条第二項に規定する給与のうち、退職給与以外のものをいう。以下この号において同じ。)の額(第三号に掲げる金額に相当する金額を除く。)が、当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額(その役員の数が二以上である場合には、これらの役員に係る当該超える部分の金額の合計額)

ロ 定款の規定又は株主総会、社員総会若しくはこれらに準ずるものの決議により役員に対する給与として支給することができる金銭の額の限度額若しくは算定方法又は金銭以外の資産(ロにおいて「支給対象資産」という。)の内容(ロにおいて「限度額等」という。)を定めている内国法人が、各事業年度においてその役員(当該限度額等が定められた給与の支給の対象となるものに限る。ロにおいて同じ。)に対して支給した給与の額(法第三十四条第六項に規定する使用人としての職務を有する役員(第三号において「使用人兼務役員」という。)に対して支給する給与のうちその使用人としての職務に対するものを含めないで当該限度額等を定めている内国法人については、当該事業年度において当該職務に対する給与として支給した金額(同号に掲げる金額に相当する金額を除く。)のうち、その内国法人の他の使用人に対する給与の支給の状況等に照らし、当該職務に対する給与として相当であると認められる金額を除く。)の合計額が当該事業年度に係る当該限度額及び当該算定方法により算定された金額並びに当該支給対象資産(当該事業年度に支給されたものに限る。)の支給の時における価額(第七十一条の三第一項(確定した数の株式を交付する旨の定めに基づいて支給する給与に係る費用の額等)に規定する確定数給与にあつては、同項に規定する交付決議時価額)に相当する金額の合計額を超える場合におけるその超える部分の金額(同号に掲げる金額がある場合には、当該超える部分の金額から同号に掲げる金額に相当する金額を控除した金額)

二 内国法人が各事業年度においてその退職した役員に対して支給した退職給与(法第三十四条第一項又は第三項の規定の適用があるものを除く。以下この号において同じ。)の額が、当該役員のその内国法人の業務に従事した期間、その退職の事情、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額

三 使用人兼務役員の使用人としての職務に対する賞与で、他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したものの額

出典:法人税法施行令第70条

判例

過去の判例では、役員退職金について「1年当たり平均額法」が合理的かどうかが裁判で争われました。

税務当局は、役員退職金の算定の重要な要素である「最終報酬月額」が考慮されていないため、功績倍率法と比べて合理性を欠く「1年当たり平均額法」は採用できないと主張。

一方、裁判所では、役員の会社に対する貢献が最終報酬月額に反映されたものでないことから、1年当たり平均額法により算定する方法がより合理的であると判決しています。

請求人の退任役員に対する退職給与の額は、功績倍率法により算出した金額と1年当たり平均額法により算出した金額とのうち、いずれか高い金額を超える部分の金額を不相当に高額な部分の金額とすべきであるとの請求人の主張について、原処分庁は1年当たり平均額法は役員退職給与の額の算定の重要な要素である最終報酬月額が考慮されていないため、功績倍率法に比べて合理性を欠くので、採用できないとしたが、最終報酬月額が役員の在職期間を通じての会社に対する貢献を適正に反映したものでないなどの特段の事情があり低額であるときは、最終報酬月額を基礎とする功績倍率法により適正退職給与の額を算定する方法は妥当でなく、最終報酬月額を基礎としない1年当たり平均額法により算定する方法がより合理的である。

出典:国税不服審判所「役員退職給与ー昭和61年9月1日裁決」

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ここで重要なことは、役員退職金の算定方法は「功績倍率法」だけではないということです。

最後に

役員退職金は、その役員の業務従事期間や貢献度、退職の事情、類似企業の支給状況と照らし合わせて決められます。

そのため、

  • 業務従事期間が短い
  • 業績不振や不祥事等の責任をとって退職をしている

にも関わらず、高額の役員退職金が支給されている場合は、「不相当に高額」として損金算入が認められない可能性があります。

役員退職金は、税制面での優遇が非常に大きいことから、貢献度に合わせて1円でも多く支給したいものです。

役員退職金は、個人の「税金」「社会保険料」だけでなく、会社が支払うべき法人税の節税対策にも大きな効果を発揮します。

例えば、倒産防止共済(経営セーフティ共済)と組み合わせることで、法人税の負担を年間数十万円単位で減らすことが可能です。

倒産防止共済の節税効果は?年間240万円を全額損金できる

2019.02.04

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