新型コロナウイルス感染症の拡大による”外出自粛要請”により企業では、テレワーク(在宅勤務)導入の動きが強まっています。
しかし、テレワークを導入するには、それ相当のコストが発生することになります。
一例をあげると、
- 情報通信機器の購入費用(パソコン、タブレット、スマートフォン、Webカメラ、ヘッドセットなど)
- インターネット回線の導入費用・使用料(通信費手当)
- ソフトウェア(Web会議ツール、インターネットFAX、勤怠管理システム、ウイルス対策ソフトなど)
など、企業によって必要なものは変わってきますが、費用面で導入のハードルが高いことが分かります。
「テレワークを導入したいけど、費用面で厳しい。」
そこで活用したいのが厚生労働省や自治体が実施しているテレワーク導入の助成金です。
目次
テレワークの新規導入時に利用できる助成金・補助金一覧
ここからは、政府が実施するテレワークの新規導入時に利用できる助成金・補助金は、次のとおりです。
- 【最大100万円】新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース
- 【最大150万円】働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)
1【最大100万円】新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース
募集は終了しています。
厚生労働省が実施する「働き方改革推進支援助成金」の特別コースです。
新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえて、テレワークを新規導入する中小企業事業主を支援します。
対象事業主 | 新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークを新規導入する中小企業事業主 ※試験導入も含みます。 |
---|---|
助成対象の取組 | ・テレワーク用通信機器(パソコンなどのシンクライアント端末が対象)の導入・運用 ・就業規則・労使協定等の作成・変更 ・労務管理担当者に対する研修 ・労働者に対する研修、周知・啓発 ・外部専門家によるコンサルティングなど |
主な要件 | 事業実施期間中に ・助成対象の取組を行うこと ・テレワークを実施した労働者が1人以上いること |
助成の対象となる事業の実施期間 | 令和2年2月17日~5月31日(予定) |
支給額 | 支給額は、取組の実際に要した費用のうち「対象経費」に該当するものについて助成します。 ・補助率1/2(1企業あたり上限額100万円) ※対象経費は、謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製 本費、備品費、機械装置等購入費、委託費です。 |
対象となる中小企業事業主
対象事業主の「中小企業事業主」とは、労働者災害補償保険の適用中小企業事業主であり、次のAまたはBの要件を満たす中小企業を言います。
業種 | A:資本または出資額 | B:常時使用する労働者 |
---|---|---|
小売業・飲食店 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
シンクライアント端末
助成対象の取組にある「シンクライアント」とは、事務所などに設置されているサーバ内に「ファイル」「ソフトウェア・アプリケーション」などを保存して処理のほとんどを行う方式を言います。
クライアントPC(従業員が遠隔地で利用するパソコン)は、ネットワークを経由してサーバーに接続をして、サーバーで処理された結果のみ閲覧できます。
これにより、
- クライアントPCにデータが保持されないため、紛失や盗難に遭っても情報漏えいしない
- サーバー側でOSやソフトウェアの脆弱性を修正する「セキュリティ更新プログラム」を一括で行えるため、セキュリティが強化される
- サーバー側で業務に必要な「ソフトウェア・アプリケーション」を一括でインストール・設定可能。運用管理コストの削減ができる
などのメリットがあります。
特にテレワークの懸念点であるセキュリティリスクを大きく低減できるのは、大きなメリットと言えます。
上記で解説したシンクライアントを利用しないパソコン、タブレット、スマートフォンの購入に関しては、助成金を受けることができないの注意しましょう。
2【最大150万円】働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)
募集は終了しています。
厚生労働省が実施する「働き方改革推進支援助成金」のテレワークコースです。
労働時間等の設定の改善および仕事と生活の調和の推進のため、在宅またはサテライトオフィスにおいて就業するテレワークに取り組む中小企業事業主を支援します。
対象事業主 | 次の(1)〜(4)のすべてに該当する事業者となります。 (1)労働災害補償保険の適用事業者 (2)中小企業事業主 (3)テレワークを新規で導入 ※試験導入も含みます。 (4)時間外労働の制限、その他の労働時間等の設定の改善を目的として、在宅またはサテライトオフィスにおいて、就業するテレワークの実施に積極的に取り組む意欲があり、かつ成果が期待できる事業主であること |
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支給対象の取組 | 次のいずれか1つ以上を実施 ・テレワーク用通信機器(パソコンなどのシンクライアント端末が対象)の導入・運用 ・保守サポートの導入 ・クラウドサービスの導入 ・就業規則・労使協定等の作成・変更 ・労務管理担当者や労働者に対する研修、周知・啓発 ・外部専門家によるコンサルティングなど |
成果目標の設定 | 次の(1)〜(3)の成果目標を達成することを目的に実施 (1)評価期間に1回以上、対象労働者全員に、在宅またはサテライトオフィスにおいて就業するテレワークを実施させる。 (2)評価期間に平均週1回以上、対象労働者に在宅またはサテライトオフィスにおいてテレワークを実施させる。 (3)所定外労働の削減について、労働者の月間平均所定外労働時間数を前年と比較して5時間以上削減させる。 |
評価期間 | 成果目標の達成の有無の基準となる「評価期間」は、事業実施期間(交付決定の日から令和3年2月15日まで)の中で、1ヶ月〜6ヶ月の間で設定します。 |
支給額 | 支給額は、取組の実施に要した費用の一部を目標達成状況に応じて支給されます。(助成額=対象経費の合計額 × 補助率) ・補助率:達成3/4、未達成1/2 ・1人あたりの上限額:達成20万円、未達成10万円 ・1企業あたりの上限額:達成150万円、未達成100万円 ※対象経費は、謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製本費、 備品費、機械装置等購入費、委託費です。(契約形態が「リース契約」「ライセンス契約」「サービス利用契約等」で評価期間を超える契約の場合は、評価期間に係る経費のみが対象です。) |
対象となる中小企業事業主
対象事業主の「中小企業事業主」とは、次のAまたはBの要件を満たす中小企業を言います。
業種 | A:資本または出資額 | B:常時使用する労働者 |
---|---|---|
小売業・飲食店 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
サテライトオフィス
サテライトオフィスとは、企業の本社や拠点から離れた場所に設置される小規模オフィスのことを言います。
支店や支社より小規模な事務所を指すことが多く、
- 都市型サテライトオフィス
- 郊外型サテライトオフィス
- 地方型サテライトオフィス
の3つに分類することができます。
郊外型サテライトオフィスを採用して、従業員が暮らす郊外のベッドタウンなどに事務所を設置すれば、通勤時間を短縮して子育てや介護の両立をしやすい環境を整えることができます。
自治体が実施しているテレワーク新規導入の助成金
東京都では、政府とは別に独自のテレワーク新規導入の支援を行っています。
※東京都内に本社または事業所を置く企業が対象です。
事業継続緊急対策(テレワーク)助成金
令和2年7月31日をもって申請受付は終了しました。
東京都の「公益財団法人東京しごと財団」が実施するテレワークの導入支援です。
新型コロナウイルス感染症対策として東京都内でテレワークを導入する中堅・中小企業等を支援します。
申請資格 | 次の(1)(2)を満たす事業者となります。 (1)常時雇用する労働者が2名以上999名以下で都内に本社または事業所を置く中堅・中小企業等 (2)東京都が実施する「2020TDM推進プロジェクト」への参加が要件です。 ※その他にも要件があります。 |
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助成対象 | ・機器等の購入費 ・機器の設置・設定費 ・保守委託等の業務委託料 ・導入機器等の導入時運用サポート費 ・機器のリース料 ・クラウドサービス等ツール利用料 |
助成対象となる費用の例 | ・パソコン・タブレット・VPNルーター ・VPNルーター等、機器の設置・設定作業費 ・機器の保守費用 ・導入機器等の操作説明マニュアル作成費 ・パソコン等リース料 ・コミュニケーションツール使用料 |
申請受付期間 | 令和2年3月6日(金曜日)~5月12日(火曜日) ※予算の範囲を超える申請があった場合は、受付を終了することがあります。 |
助成事業の実施期間 | 支給決定通知日以降、令和2年6月30日までに完了する取組が対象です。 |
支給額 | 限度額:250万円 助成率:10分の10 |
2020TDM推進プロジェクト
2020TDM推進プロジェクトとは、東京2020大会(東京オリンピック・パラリンピック競技大会)の開催のために大会時の交通混雑緩和を目指し推進しているプロジェクトです。
2020年4月21日時点で328団体、18055社・事業所の参加があります。
具体的には、
- 工事の実施に関するご協力のお願い(大会期間を外した工期の検討、工事関係車両の削減に向けた取り組み)
- 物流に係るご協力のお願い(交通量抑制のために倉庫の共同使用、集配業務の共同化、複数荷主の物流拠点の統合、柔軟な輸配送時間帯の設定、オフィス移転やセール販売促進企画などの大会期間外への変更、)
により交通混雑緩和を目指します。
この取組に賛同・協力する企業であれば、どなたでも登録が可能です。
登録による義務は発生せず、登録完了メールが届いた日の翌日中に2020TDM推進プロジェクトのホームページに掲載されます。
ワークスタイル変革コンサルティング
募集は終了しました。
東京都の「東京都産業労働局」が実施するテレワークの導入支援です。
東京都内の企業等のテレワーク導入を推進するために専門のコンサルタントが訪問して課題解決などの支援を無料で行います。
対象 | 次の(1)(2)を満たす事業者となります。 (1)東京都内で事業を営んでいること (2)常時雇用する労働者が2〜999名の企業、一般社団法人、一般社団法人等であること ※その他にも要件があります。 |
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方法 | 東京都内の事業所に最大5回訪問 (約2時間/回) |
コンサルタント | テレワーク導入・定着の専門コンサルタント |
費用 | 無料 |
はじめてテレワーク(テレワーク導入促進整備補助金)
令和3年3月31日をもって申請受付は終了しました。
東京都の「公益財団法人東京しごと財団」が実施するテレワークの導入支援です。
東京都内でテレワークを導入に向けたコンサルティング(ワークスタイル変革コンサルティング)を受けた中堅・中小企業等を支援します。
補助対象事業者 | 次の(1)〜(4)を満たす事業者となります。 (1)東京都が実施するテレワーク導入に向けたコンサルティング(ワークスタイル変革コンサルティング)を受けていること (2)東京都内に勤務している常時雇用する労働者が2名以上999名以下かつ6ヶ月以上継続して雇用していること (3)就業規則にテレワークに関する規定がないこと (4)東京都が実施する「2020TDM推進プロジェクト」への参加が要件です。 ※その他にも要件があります。 |
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補助対象費用 | ・テレワーク環境の構築(在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務を行うための環境構築費用、対象のテレワーク環境を構築するための機器・関連ソフト等導入費用、モバイル端末等整備費用) ・就業規則へのテレワーク制度整備(テレワークに関する規定を就業規則に定めることに要する専門家への委託費) |
申請受付期間 | 令和2年4月8日から令和3年3月31日まで(必着) ※予算のの全額が執行された場合は、その時点で終了となります。 |
補償対象期間 | 令和2年4月8日以降、支給決定日から3か月以内 |
補助上限額 | ・従業員数300人〜900人の企業:110万円 ・従業員数100人〜299人の企業:70万円 ・従業員数100人未満の企業:40万円 ※いずれも制度整備費10万円を含む |
補助率 | 10/10 |
最後に
新型コロナウイルス感染症の拡大により政府は「オフィス出勤社の7割減」を目標にかかげています。
そのための手段として期待されているのが”テレワーク”という働き方です。
テレワークとは、インターネットを始めとした情報通信技術を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことを言います。
日本は、長らく欧米各国と比べるとテレワークの普及率は低くなっていますが、今回のテレワークニーズの関心や実施率の高まりにより継続的に利用される可能性もあります。
現在、テレワーク導入を考えているのなら助成金を受けれるかどうかを確認することをおすすめします。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。
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