「ウチの会社は赤字決算だから、税務調査なんて来ないだろう。」
そう思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、税務調査は、赤字だろうと黒字だろうとやってきますので、安心してはいけません。
目次
赤字決算の法人に税務調査が入る確率は約35%
次は、国税庁が発表した「平成28事務年度 法人税等の調査事績の概要」です。
それによると、
法人税の実地調査件数 | 9万7千件 |
うち無所得申告法人に対する法人税の実地調査件数 | 3万4千件 |
となっており、税務調査対象となっている法人の約35%が無所得申告法人に対する税務調査ということが分かります。
「やっぱり、黒字法人よりは少ない」と思うかもしれませんが、国内企業(266万125社)のうち赤字法人の割合は63.5%と母数が多く、赤字決算だからといって油断はできません。
- 赤字の法人
- 利益が出ていない法人
です。平たく言えば、”黒字ではない法人”を言います。
税務調査により黒字転換した法人は13.4%
さらに先ほどの資料には、
有所得転換割合 | 13.4% |
という興味深いデータがあります。
これは、赤字の法人(無所得申告法人)が税務調査により黒字に転換した割合です。
つまり、本当は黒字なのにワザと”赤字”にしている法人が少なからずあるということです。
国税庁もこのことを把握しており、ホームページでも、
本来、黒字でありながら赤字を装って申告することにより納税を免れている法人を放置しておくことは、納税者の公平感を著しく損なうものです。無所得申告法人に対しては、このような赤字の仮装や消費税の観点から、重点的に調査に取り組んでいます。
と明記しています。
赤字決算の法人を税務調査する理由
税務調査は、赤字法人の「黒字転換」だけを狙ってするわけではありません。
赤字でも納税義務が発生することのある「消費税」や「源泉所得税」が正しく申告されているかも税務調査を実施する大きな理由となっています。
消費税においては、課税売上高が1,000万円以下で免税事業者になれます。
そのため、意図的に売上高をごまかして年間数十万円単位で税金を逃れている可能性もあります。
- 黒字法人の利益をグループの赤字法人に意図的に付け替える
- 赤字額を多く見せかけて、繰越欠損金(将来の黒字と相殺できる赤字)を多額計上している
といった行為をしていないか税務署は目を光らせています。
税務調査でチェックされるポイント
赤字法人にも税務調査が来ることが分かりました。
では、具体的に「どのようなことをチェックされるのか」見ていきましょう。
1、売上の期ずれ
期ずれとは、今期に計上すべき売上や経費を”前期または来期”に計上することをいいます。
ミスが発生しやすく、税務調査の際は必ずといっていいほどチェックされる項目です。
- 請求書を出した月
- 入金があった月
に計上してしまうことです。
日本では一般的に「発生主義」で会計処理をします。
発生主義とは、現金の収入や支出に関係なく、取引が発生した時点で収益や費用を計上する方法をいいます。
そのため、正しくは、”納品した月”に売上を計上しなければなりません。
2、売上の漏れ
売上の漏れとは、実際は売上があったにもかかわらず、帳簿に記録されていない(=実際の所得より過少申告している)ことをいいます。
もし、わざと売上の記録を漏らしていると判断されれば、35〜40%の重加算税が課される可能性もあります。
3、私的な支払いが経費に含まれていないか
会社の経費に認められるのは、会社の事業に必要な支払いだけです。
ですから、社長や家族の私的(プライベート)な支払いを経費として計上することは認められません。
例えば、
- 出張旅費(宿泊費、交通費、日当など)
- 接待交際費(飲食代、贈答品など)
などは、公私混同しがちな経費としてよくチェックされる項目です。
特に使途秘匿金(目的がわからない支出)は、発見されると”脱税”と認定されるおそれもあるので、注意しなければなりません。
4、在庫の計上漏れ
在庫の計上漏れとは、在庫を実際より少なくすることをいいます。
それにより、まだ売れていない商品を”今期の経費”に計上することができ、その分利益を減らす(=税金を減らす)ことができます。
例えば、2018年に商品を”100個”仕入れて、2018年度中に”60個”売れたとします。
その場合、
- 2018年に売れた60個の商品 → 今期の経費
- 2018年に売れ残った40個の商品(在庫として計上)→ 来期以降の経費
となります。
つまり、商品は売れたときにはじめて経費に計上できるということです。(仕入れてお金を支払ったときではありません!)
そのため、商品を在庫に計上せず、今期の売上とすることで、経費を水増しし、利益を圧縮することが可能となります。
税務調査官もそのことをよく知っているので、在庫を注意深く調査します。
5、人件費の水増し
人件費の水増しを図っていないかも税務調査の対象になります。
例えば、帳簿上は従業員に給料を30万円支払ったことになっているが、実際には25万円しか渡していないといったケースが該当します。
- タイムレコーダーの記録確認
- 源泉徴収簿と銀行取引明細の照合
- 源泉徴収簿と社会保険の支払い記録の照合
などがあげられます。
最後に
以前に
で紹介したとおり、税務調査が入る確率「実調率」は3.1%とそこまで高くはありません。
しかし、
- 赤字決算だから
- 小さな会社だから
- 個人事業主だから
と油断してはなりません。
いつ税務調査が来ても良いように常日頃からきちんと準備をしておきましょう。
弊社は、税務調査を優位に進めるノウハウと交渉力を持っています。
「正しく申告しているか不安・・・」
「税務調査の連絡が入った・・・」
「事前対策はどうすればいいだろう・・・」
「追徴課税を受けそうだけどどうすれば・・・」
など不安がありましたら、お気軽にご相談ください。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。