税務調査

税務調査の推計課税とは?計算方法や要件を徹底まとめ

突然ですが、「推計課税」をご存知でしょうか?

推計課税とは、売上や経費などを「推定」して計算し、その金額をもとに納税額が決定されてしまう・・・という恐ろしい制度です。

この記事では、推計課税の基礎知識から適用される要件、デメリットなどを解説しています。

推計課税とは?

推計課税とは、帳簿書類の紛失などで正しい売上や経費が分からないときに

  • 近隣の同規模同業者の差益率(売上に対する粗利益の割合)
  • 売上や仕入れ・経費の単価
  • 資産や負債の増減状況
  • 水道やガスの使用量

などから所得を推計して、課税する方法を言います。

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推計課税が用いられる理由としては、

  • 帳簿書類を破棄した者にも課税できるようにするため
  • 帳簿書類がない場合、正しい税額を算出するため

などがあります。

推計課税の計算方法

推計課税の具体的な計算方法としては、

  • 比率法
  • 効率法
  • 消費高法
  • 純資産増減法

などがあげられます。

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この中でよく用いられる代表的な推計方法は「比率法」「効率法」です。

比率法

比率法(同業者比率法)とは、近隣の同業者の売上や仕入れ・経費などを参考にして、一定の比率を適用して所得を算出する方法です。

効率法

効率法とは、売上単価や原材料費・経費などの単価から所得を算出する方法です。

例えば、次のような飲食店を例に考えてみましょう。

お客さん1人あたりについて

売上:1000円

原材料費:300円

とすると、お客さん1人あたりの粗利益は700円となります。

月の客数を1000人だとすると、

売上:100万円

原材料費:300万円

粗利益:700万円

となります。

あとは、ここに細かい人件費などの経費を差し引いていけば、最終的な所得が分かってきます。

推計課税が適用されるケース

どのようなときに推計課税が用いられるのかと言うと、

  • 帳簿書類がない
  • 帳簿書類が信用できない、売上や仕入れの根拠がない
  • 帳簿書類の提示を拒否する、協力しない

など、正しい税額が算出できない場合です。

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逆に言えば、推計課税を避けたい場合、帳簿書類の作成・保管はしっかりと行わなければなりません。

法的には「法人税法第131条」「所得税法第156条」で規定が設けられています。

条文は次のとおりです。

法人税法第131条(推計による更正又は決定)

税務署長は、内国法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合には、内国法人の提出した青色申告書に係る法人税の課税標準又は欠損金額の更正をする場合を除き、その内国法人の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその内国法人に係る法人税の課税標準を推計して、これをすることができる。

所得税法第156条(推計による更正又は決定)

税務署長は、居住者に係る所得税につき更正又は決定をする場合には、その者の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその者の各年分の各種所得の金額又は損失の金額(その者の提出した青色申告書に係る年分の不動産所得の金額、事業所得の金額及び山林所得の金額並びにこれらの金額の計算上生じた損失の金額を除く。)を推計して、これをすることができる。

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上記の条文には、推計課税を用いることができるのは、

  1. 内国法人(日本国内に事務所がある)
  2. 更生(または決定)された
  3. 青色申告ではない

の3つが要件として定められています。

ここで注目していただきたいのは、推計課税は青色申告に対しては適用されない点です。

ただし、以前に『税務調査で青色申告取り消しとなる5つのケース』で解説したとおり、

  • 帳簿書類を提示しない
  • 帳簿が法令に則った記載方法ではない
  • 所得の隠蔽や仮装があった
  • 2期連続で申告書を期限内に提出しなかった
  • 帳簿書類に不備がある

といった場合、税務署は青色申告を取り消すことができます。

つまり、青色申告を取り消して白色申告者に戻された上で推計課税が用いられることがあるということです。

推計課税のデメリット

推計課税はできることなら避けたいものです。

なぜなら、

  • 所得が実際より過大に推計される
  • 消費税の仕入税額控除を受けられない

ケースがあるからです。

所得が実際より過大に推計される

推計課税は、あくまでも他の情報から推計して税額を算出するため、現実と異なる可能性が非常に高いです。

それも本来の税額より過大に推計されることが多々あります。

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例えば、

  • 現実は、売上500万円しかないのに、推計で売上800万円あるとされる
  • 現実は、赤字なのに領収書の不備などで経費が認められず、黒字扱いになる

となれば、それだけ重たい税の負担に苦しむことになります。

消費税の仕入税額控除を受けられない

消費税の仕入税額控除を受けるためには、原則、帳簿書類の保存が要件とされています。

そのため、税務調査により「帳簿書類を保存していない」と判断されると、推計課税が用いられるとともに消費税の仕入税額控除も認められない可能性があります。

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消費税の仕入税額控除とは、物品購入など仕入れのために支払った消費税額を差し引くことをいいます。

では、消費税の仕入税額控除の有無で「どのくらい納税額に差が出るのか」シミュレーションしてみましょう。

消費税の仕入税額控除がある場合

例えば、課税売上高2000万円、課税仕入高1200万円の会社があったとすると、消費税の納税額は、

消費税の納付額 = 2000万円 × 8% - 1200万円 × 8% = 160万円 - 96万円 = 64万円

と計算できます。

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96万円の消費税の仕入税額控除を受けることが可能になることが分かります。

消費税の仕入税額控除がない場合

同様の条件で消費税の仕入税額控除が受けれない場合をシミュレーションしてみましょう。

すると、消費税の納税額は、

消費税の納付額 = 2000万円 × 8% - 1200万円 × 0% = 160万円 - 0円 = 160万円

となってしまいます。

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消費税の仕入税額控除の有無で”96万円(= 160万円 − 64万円)”も納税額が変わりました。

最後に

税務調査によって、帳簿書類の不備が発覚し「推計課税」が用いられれば、本来支払う必要のない数十万円、数百万円の税金が課される可能性があります。

もちろん、どうしても税務署の推計方法や同業者のデータなどに納得できなければ、実額をもって反論する”実額反証”によって処分の取り消しや変更などの異議申し立てをすることも可能です。

ただ、その場合は、税務署に実際の所得額を立証する必要があるため、専門的な知識がないとなかなか難しいかと思います。

弊社では、推計課税によって過大な課税がなされないように法人・個人事業主の皆さまを全力でバックアップいたします。

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