税務調査

税務調査では「外注費」と「給与」の違いが指摘対象となる

近年、政府の働き方改革の影響などによりフリーランスや副業が増えてきました。

それに伴って企業もアルバイトではなく、外注として仕事を依頼するケースが多くなっています。

企業にとっては外注化することで税制上のメリットを受けることが可能です。

しかし、外注を請負契約を結んで頼んでいても業務実態によっては税務署から「この支払いは、外注費ではなく”給与”ではないのか?」と指摘されるケースがあります。

この記事では、税務調査で指摘されることの多い「外注費」と「給与」の税務上の”違い”や”判断基準”について分かりやすく解説しています。

「外注費」と「給与」の税務上の違い

まずは、外注費と給与の税務上の違いを見ていきましょう。

外注費 給与
消費税 控除あり
(課税)
控除なし
(不課税)
源泉徴収 不要 必要
社会保険 会社の負担は必要なし 会社が負担する

※消費税の控除は「本則課税」を選択した場合です。

消費税

消費税の課税事業者であれば、外注費により消費税の納税額を減らすことが可能です。

消費税とは、日本国内でモノやサービスを消費したときに発生する税金です。

この消費税の納税義務については、法人、個人事業主に関係なく、事業を営んでいると発生する可能性があります。

具体的には、

  • 2年前の”課税売上高が1,000万円超”
  • 1年前の上半期(6ヶ月間)の”課税売上高が1,000万円超”かつ”給与等の支払総額が1,000万円超”

のいずれかの条件を満たしたときに消費税の課税事業者となり、消費税を納税する義務が発生します。

計算方法

消費税の納税額は、原則として商品やサービスの提供により顧客から「預かった消費税」から仕入れや設備投資などで「支払った消費税」を差し引いて計算することが可能です。

消費税の納付額 = 預かった消費税 - 支払った消費税

この「支払った消費税」には、仕入税額控除(課税仕入にかかる消費税額を控除)が当てはまります。

国税庁ホームページでは、仕入税額控除の対象となるものとして次の取引があげられています。

  1. 商品などの棚卸資産の購入
  2. 原材料等の購入
  3. 機械や建物等のほか、車両や器具備品等の事業用資産の購入又は賃借
  4. 広告宣伝費、厚生費、接待交際費、通信費、水道光熱費などの支払
  5. 事務用品、消耗品、新聞図書などの購入
  6. 修繕費
  7. 外注費

なお、給与等の支払は課税仕入れとなりませんが、加工賃や人材派遣料のように事業者が行う労働やサービスの提供の対価には消費税が課税されます。

出典:国税庁「仕入税額控除の対象となるもの」

加工賃や人材派遣料のように事業者が行う労働やサービスの提供の対価には、

  • 業務委託
  • 請負契約

などの外注(アウトソーシング)が当てはまることになります。

具体例

具体的に外注費と給与では、消費税の納税額がどのように変わってくるのでしょうか?見ていきましょう。

例えば、売上高3,300万円(内消費税300万円)、仕入高1,650万円(内消費税150万円)の会社があったとします。

このとき

  • 外注費550万円(内消費税50万円)
  • 給与550万円(不課税)

で消費税の納税額を比較してみます。

外注費

納付消費税額 = 300万円 - 150万円 - 50万円 = 100万円

給与

納付消費税額 = 300万円 - 150万円 = 150万円

芦屋会計
支給金額は同じにも関わらず「外注費」と「給与」の違いで消費税の納税額が50万円も違ってきました。

源泉徴収

通常、会社や個人が人を雇って給与を支払う場合は、源泉徴収をする必要があります。

源泉徴収とは、毎月の給与や賞与などを支払うとき、その支給総額から税金(所得税および復興特別所得税)を差し引くことを言います。

また、毎月天引きされる税金は概算で計算されるため、年末調整により「源泉徴収した所得税等の合計額」と「1年間に納めるべき所得税等」を計算して過不足を生産する必要があります。

年末調整については、各種控除も反映させて計算する必要があり、所得税に関する知識も求めらることから場合によっては税理士に依頼する必要性も生じます。

年末調整(源泉徴収票の作成)は税理士に依頼しよう!メリットを解説

外注費における源泉徴収

一方、外注費については、外注内容によって源泉徴収の有無が異なります。

次のケースでは、源泉徴収が必要です。

報酬の受け取りが個人の場合
  • 原稿料や講演料など
  • 弁護士、公認会計士、司法書士等の、特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
  • 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  • プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
  • 映画、演劇、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
  • ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー・キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
  • プロ野球選手の契約金など、役務の提供契約を約することにより一時に支払う契約金
  • 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
報酬の受け取りが法人の場合
  • 馬主である法人に支払う競馬の賞金
芦屋会計
外注内容によっては、源泉徴収が必要ありません。

その場合は、支払う側にとって事務手続きが減るというメリットがあります。

「外注費」と「給与」の判断基準

外注人と給与は、基本的には次のような判断基準となります。

外注費 請負契約またはこれに準ずる契約に基づく対価。自己の計算において独立して事業を行う者
給与 雇用契約またはこれに準ずる契約に基づく対価。

ここで注意していただきたいことは、契約内容だけでなく勤務実態などを総合勘案して判定される点です。

そのため、請負契約を結んでいたとしても勤務実態によっては「給与」と判断される可能性もあります。

国税庁ホームページでは、次の4つの事項に基づいて判断すると案内しています。

1、その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。

自らの判断で他の者に業務をさせても良いか?が焦点です。

例えば、仕事を受けた側が急病等により作業ができなくなった場合、自らの判断で他の作業員を手配することが認められるのであれば、外注費扱いとなります。

一方、業務を行って良いのは”依頼された本人だけ”という場合は、給与扱いです。

芦屋会計
仕事を依頼した側としては、発注した仕事内容について一定の品質がクリアされていれば、誰が作業をしたのかは問わなくても良いはずです。

2、役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。

自己の計算において独立して事業を行っているか?が焦点です。

仕事の発注者から通常の仕様や納期を指定される程度であれば、外注扱いとなります。

一方、仕事の発注者から具体的な作業内容や労働時間を方法を指示されたり、依頼人の指揮下で業務を行っている場合は、給与扱いです。

芦屋会計
仕事の裁量がない場合は、給与として扱われるということですね。

3、まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。

自己で責任・リスクを負って事業を行っているか?が焦点です。

例えば、災害や事故などで引き渡し前の完成品が滅失した場合、仕事を受けた側の責任・リスクになる場合は、外注扱いとなります。

一方、仕事の成果物が消失した場合でも労働時間を基準にして報酬を請求できる場合は、給与扱いです。

芦屋会計
労働時間ではなく、成果物に対して報酬が決められる場合は、外注費として計上できるということですね。

4、役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。

業務に必要となる材料や用具を提供しているか?が焦点です。

自前で業務遂行に必要となる用具を用意している場合は、外注扱いとなります。

一方、仕事の発注者から材料や用具を提供されたり、移動手段を用意されている場合は、給与扱いです。

芦屋会計
請負業者に仕事道具を支給していた場合は、給与として認定される可能性があるということですね。

最後に

税務調査において「外注費」は、チェックされる項目です。

もし、税務調査で「外注費」を「給与」として認定された場合は、

  • 消費税
  • 源泉徴収
  • 社会保険

について見直されることになります。

本来支払っておくべき金額が請求されるだけでなく、加算税や延滞税を課せられる可能性もあります。

そのため、本記事で紹介した「外注費」と「給与」の判断基準を参考にして給与と認定されないように対策すると良いでしょう。

※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。

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