「家賃に消費税ってかかっているの?」
そんな疑問を持っている方は、多いのではないでしょうか?
特に最近は、消費税率が5% → 8% → 10%と2回の増税が行われたことで気にしている方は多いでしょう。
現在、マンションやアパートなどの住宅の家賃は、消費税がかからないものとされています。
しかし、家賃に消費税がかかるケースも存在します。
目次
家賃に消費税が課税される条件
先に結論を言うと、
- 居住用 → 消費税がかからない(非課税)
- 事業用 → 消費税がかかる(課税)
となります。
住居用とは、契約者が「住む」ために借りることです。
事業用とは、契約者が「事業を行うため」に借りることを言います。
表にまとめると、次のとおりです。
非課税 (消費税率0%) |
【居住用】 一戸建て、マンション、アパート、借り上げ社宅、寮、青空駐車場 |
---|---|
課税 (消費税率10%) |
【事業用】 一戸建て、マンション、アパート、事務所、店舗、倉庫、工場、駐車場 【旅館業に係る施設】 ホテル、旅館、リゾートマンション、貸別荘、ウィークリーマンション、民泊 【その他】 貸付期間が1ヶ月未満の場合 |
賃貸借契約で「居住用」「事業用」が決まる
家賃に消費税がかかるかどうかは、賃貸借契約書の契約形態が「居住用」か「事業用」かで判断がされます。
つまり、
- 個人契約 = 居住用
- 法人契約 = 事業用
というようには決まりません。
また、逆に契約者がその物件でビジネスをして収入を得ていた場合であっても契約上「居住用」となっていれば、非課税扱いとなって消費税が発生しません。
家賃の消費税の取り扱いで間違いやすいケース
ここから紹介するのは、家賃にかかる消費税処理で間違いやすいケースとなります。
社宅(借上社宅)
会社が法人名義で契約をして、役員や従業員に貸しているケースは多いと思います。
この場合であっても、最終的に「人が住むための物件」であれば消費税はかかりません。
- 会社が大家に支払う家賃
- 従業員が会社に支払う家賃
の両方について消費税が非課税となります。
なお、役員や従業員に社宅を提供することで節税効果も得られるので活用してみましょう。
マンスリーマンションとウィークリーマンション
1ヶ月単位で借りられるマンスリーマンションについては、
- 契約者が「住む」ために借りる
- 契約期間が1ヶ月以上
- 旅館業法第2条第1項に規定する旅館業(ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業)に該当しない施設
であれば、消費税はかからないとされています。
一方、ウィークリーマンションについては、最短の宿泊期間が1週間程度と短く、施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有さないことを原則として営業しています。
これにより不動産賃貸業ではなく、旅館業として扱われるため、消費税の課税対象となります。
- ウィークリーマンションは消費税がかかる(課税)
- マンスリーマンションは消費税がかからない(非課税)※条件あり
ということですね。
店舗付き住宅
店舗付き住宅については、
- 店舗部分 → 消費税がかかる(課税)
- 居住用部分 → 消費税がかからない(非課税)
という扱いになります。
店舗と居住用を区分する方法としては、「貸付面積の比」や「近隣の貸付け相場」などが考えられます。
消費税率10%であれば、消費税4,000円となります。
土地
原則、土地を更地で賃貸借した場合は、地代に消費税がかかりません。
ただし、
- 貸付け期間が1ヶ月未満
- 施設(駐車場、野球場、プール、テニスコートなど)としての貸付け
の場合は、消費税がかかってきます。
駐車場
駐車場は、条件によって「消費税がかかるかどうか」が変わってきます。
- 駐車場 → 消費税がかかる(課税)
- 駐車場(マンション、アパートに付設)→ 消費税がかからない(非課税)
- 駐車場付きの戸建て住宅 → 消費税がかからない(非課税)
- 青空駐車場 → 消費税がかからない(非課税)
駐車場(マンション、アパートに付設)
マンション、アパートに付設とは、
- 入居者1戸あたり1台以上づつの駐車場が確保されている
- 自動車を保有しているかの有無にかかわらず、全住戸に駐車場が割り当てられている
- 家賃収入を住宅部分と駐車場部分とに区別して収受していない
の条件をすべて満たした状態をいいます。
これらの条件を1つでも満たさなければ、消費税がかかってきます。
駐車場付きの戸建て住宅
基本的に戸建て住宅は、家賃の中に駐車場代が含まれているため、消費税がかかりません。
青空駐車場
原則、青空駐車場は、土地の貸借と判断されるため消費税がかかりません。
ただし、
- アスファルト舗装
- 砂利敷の整備
- フェンスの構築
- 紐などで駐車区画の設置・整備
などを行った場合は、駐車場とみなされ消費税の課税対象となります。
居住用の家賃に消費税がかからない理由
そもそも、なぜ、居住用の家賃に消費税がかからないのでしょうか?
実は、平成元年に消費税が導入された当初は、居住用の家賃にも事業用と同様に消費税がかかっていました。
しかし、平成3年10月に税制が改正され、住居用に関しては、家賃が非課税となりました。
非課税とは、「消費税が課税される4つの要件」に当てはまっていても、
- 消費税という税の性格になじまないもの
- 社会政策的配慮
から消費税を課税しない例外的な取引をいい、住居用の家賃もこれに当てはまります。
事業者側の家賃収入の消費税の扱いについて
ここからは、物件を貸す側の立場になって消費税の扱いを見ていきます。
先ほど解説したとおり、賃貸借契約が「事業用」の場合は、消費税の課税対象です。
そのため、原則として事業用物件(事務所、店舗、倉庫、工場など)を貸している事業者側は、課税売上高として計上することになります。
なお、不動産経営において発生する収入についての「課税取引」と「非課税取引」の分類は、次のとおりです。
居住用 (住宅) |
事業用 (テナント・事務所) |
|
---|---|---|
家賃 | 非課税 | 課税 |
共益費・管理費 | 非課税 | 課税 ※1 |
敷金・保証金 | 非課税 | 非課税 |
礼金 | 非課税 | 課税 |
更新料 | 非課税 | 課税 |
仲介手数料 | 課税 | 課税 |
駐車場料 | 課税 | 課税 |
※共益費・管理費を水道光熱費、管理人の人件費、清掃費等として徴収をして、経費として支払っている場合は、課税対象となります。しかし、水道光熱費等の費用のメーターがテナントごとに区分されており、集金したお金を預かって電力会社等に支払うにすぎない場合は、課税売上には該当しません。
上記の表では、唯一「敷金・保証金」については、非課税対象となっていますが、これは将来的に借り主に返還されるためです。
課税売上高が1,000万円超で課税業者
事業者は、借り主から消費税を徴収したとしても小規模の事業であれば、消費税の納税義務がありません。
しかし、
- 2年前の”課税売上高が1,000万円超”
- 1年前の上半期(6ヶ月間)の”課税売上高が1,000万円超”かつ”給与等の支払総額が1,000万円超”
のいずれかの条件を満たした場合は、消費税を納税する義務が発生することになります。
大家・オーナーのインボイス制度の影響について
2023年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートしました。
大家・オーナーにおいては、すでに課税事業者であったり、アパートやマンションなどの住宅のみを取り扱っている場合は、基本的に影響はありません。
しかし、免税事業者かつ事業者向けに消費税がかかるテナント物件を取り扱っている場合は、競争力の低下につながる可能性があります。
なぜなら、借り主は、テナント物件の賃料にかかる消費税を仕入税額控除できないからです。
これにより賃料の値下げを求められたり、テナント物件の候補から外されてしまう可能性があります。
最後に
いかがでしたか?
今回は、家賃まわりの消費税についてまとめていました。
基本的には、
- 居住用 → 消費税がかからない(非課税)
- 事業用 → 消費税がかかる(課税)
となりますが、土地や駐車場などは、判定が難しいので注意したいところです。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。