消費税

消費税インボイス制度が始まる!個人事業主・フリーランスの影響は?

経営者の皆さん、インボイス制度ってご存知でしょうか?

インボイス制度とは、2023年10月1日から段階的に導入される消費税の仕入税額控除の要件となる請求書方式です。

個人事業主・フリーランスにも大きく影響する制度となっており、口コミサイトで検索すると「ひどり」「やばい」といった声が聞こえてきます。

ニュースでも「インボイス制度によりエンタメ事業者の2割が廃業を検討している」など、衝撃的なデータも出ています。

この記事では、個人事業主・フリーランスにも影響する消費税インボイス制度について分かりやすく解説します。

芦屋会計
インボイス制度により売上1,000万円以下の一人親方やインストラクター、エステティシャン、エンジニアなどの個人事業主・フリーランスであっても消費税の負担が発生したり、仕事が減少してしまう可能性があります。

インボイス制度とは

まずは、インボイス制度(適格請求書等保存方式)についておさらいしましょう。

インボイス制度とは、要件を満たした請求書方式に記載された税額のみを仕入税額控除できる制度です。

導入背景としては、2019年10月1日の消費税増税に伴って導入された”軽減税率”により2つの税率が混在することになり、一つ一つの取引ごとに消費税率を明確にする必要が生じました。

そこで複雑な税に関する会計処理にも対応でき、税の公平性を維持する観点からインボイス制度が導入されることになりました。

インボイス制度の請求書方式では、従来の請求書と比較して、4つの記載項目を追加しなければなりません。

  1. 請求書発行者の氏名または名称
  2. 取引年月日
  3. 取引の内容
  4. 対価の額(税込)
  5. 請求書受領者の氏名または名称
  6. 軽減税率の対象品目である旨
  7. 税率ごとに合計した対価の額(税込)
  8. 登録番号
  9. 税率ごとの消費税額及び適用税率

赤文字が新しく追加する必要のある項目です。

請求書の例

次がインボイス方式に対応した請求書の例となります。

請求書

○○御中
11月分 21,800円(税込)

日付 品目 税込価格
11/1 食料品 ※ 5,500円
11/8 雑貨 5,400円
11/15 食料品 ※ 5,500円
11/22 雑貨 5,400円

合計21,800円
消費税1,800円
(8%対象10,800円消費税800円)
(10%対象11,000円消費税1,000円)

注)※印は軽減税率(8%)適用商品
△△(株)登録番号T1234…

赤文字が新しく追加する必要のある項目です。

芦屋会計
インボイス方式では、標準税率10%と軽減税率8%を区分して記載する必要があるということですね。

インボイス制度は仕入税額控除の要件となる

インボイス制度の導入で重要なことは、仕入税額控除の要件となる点です。

特例措置により一定の猶予期間は設けられていますが、2029年10月1日以降は、インボイス制度の記載事項を順守した請求書のみ仕入税額控除が認められます。

仕入税額控除の特例措置
時期 仕入税額控除の額
2023年9月30日以前 仕入税額控除の額 × 100%
2023年10月1日から2026年9月30日 仕入税額控除の額 × 80%
2026年10月1日から2029年9月30日 仕入税額控除の額 × 50%
2029年10月1日以降 仕入税額控除の額 × 0%
芦屋会計
例えば、2027年1月、仕入先から100万円(うち消費税10万円)の仕入をして”従来の請求書(インボイス未対応)”をもらった。

その場合、仕入税額控除額は、5万円(= 10万円 × 50%)となります。

仕入税額控除とは

仕入税額控除についてピンとこない方のために簡単に解説をします。

通常、消費税の納付額は、売上にかかる消費税額から仕入れにかかる消費税額を差し引くことで求めることができます。

消費税の納付額 = 売上にかかる消費税額 – 仕入にかかる消費税額

この仕入れにかかる消費税を差し引く(控除する)ことを”仕入税額控除”と言います。

では、インボイス制度の移行により仕入税額控除ができなくなると、どのように影響があるのでしょうか?見ていきましょう。

例えば、課税売上高2,100万円(消費税210万円)、課税仕入高1,200万円(消費税120万円)のとき、仕入税額控除の有無により「どのくらい消費税の納税額が変わるのか?」比較してみます。

仕入税額控除あり

消費税の納付額 = 売上に係る消費税額 – 仕入に係る消費税額 = 2,100万円 × 10% - 1,200万円 × 10% = 210万円 - 120万円 = 90万円

仕入税額控除なし

消費税の納付額 = 売上に係る消費税額 – 仕入に係る消費税額 = 2,100万円 × 10% - 1,200万円 × % = 210万円 - 0円 = 210万円

芦屋会計
仕入税額控除ができなくなったことで”120万円(= 210万円 − 90万円)”も消費税の納付額が増える結果となりました。

仕入税額控除の有無が消費税の納付額に大きな影響を与えることが分かります。

インボイス制度は個人事業主・フリーランスにも影響がある

個人事業主・フリーランスの方は、消費税の納税義務が免除される免税事業者になっているケースが多いでしょう。

そのため、

  • 2023年10月1日から消費税のインボイス制度が導入される

と聞いても、自分には関係ないだろうと思っているかもしれません。

しかし、現在、消費税を納付していない個人事業主・フリーランスほどインボイス制度の影響を大きく受けることになります。

芦屋会計
個人事業主・フリーランスであっても消費税の納税義務は生じます。

ただし、消費税の納税義務が生じる要件である

  • 2年前の”課税売上高が1,000万円超”
  • 1年前の上半期(6ヶ月間)の”課税売上高が1000万円超”かつ”給与等の支払総額が1000万円超”

に当てはまらなければ、消費税を納付する必要はなく、事業者の利益(益税)にしても良いことになっています。

関連記事:消費税は個人事業主でも納付義務あり!売上1000万円以下で免除・計算方法

免税事業者はインボイス制度を利用できない

2023年10月1日のインボイス制度導入で知っておきたいことは、免税事業者はインボイス制度を利用できないという点です。

もっと詳しく言えば、

  • 免税事業者には、インボイス制度の記載事項の1つである登録番号(事業者登録番号)

が割り当てられません。

芦屋会計
つまり、免税事業者が発行した請求書は、仕入税額控除ができないということです。

インボイス制度の直接の影響は課税事業者

インボイス制度の導入で直接の影響があるのは、免税事業者から仕入をしている課税事業者です。

これまで課税事業者は、免税事業者から仕入をした場合であっても、仕入れ時に支払った消費税を仕入税額控除により消費税の納付額から差し引くことができました。

芦屋会計
例えば、免税事業者から課税仕入100万円をするとき、消費税10万円(= 100万円 × 10%)を支払うことになります。

しかし、課税事業者であれば、1年間の消費税の納付額から10万円を差し引くことができ、実質的な負担をゼロにすることが可能でした。

インボイス制度開始後は課税事業者の負担となる

2023年10月1日以降は、インボイス制度の開始により仕入税額控除が段階的に適用されなくなります。

そうなれば、1年間の消費税の納付額から仕入れ時に支払った消費税を差し引けなくなり、その分、消費税の負担が増えることになります。

先ほどの例で言えば、税金の負担が10万円も増えてしまうことになります。

どのように免税事業者はインボイス制度に対処すべき?

インボイス制度の導入により課税事業者は、免税事業者の取引で実質的に消費税10%分のコストが増加します。

これにより個人事業主・フリーランスなどの免税事業者は、

  • 商品価格の値下げを要請される
  • 取引を打ち切られる
  • 新規取引先の選考から外される

という可能性があります。

芦屋会計
もちろん、消費税転嫁対策特別措置法によりインボイス制度の要件を満たさないことで値下げを強要する行為は禁止されています。

しかしながら、多くの中小零細事業者は、力関係から値下げに応じなければならないケースがあるのが実情です。

インボイス制度には猶予期間こそありますが、抜け道は存在しません。

では、免税事業者はインボイス方式が始まった後、どのように対処すればいいのでしょうか?見ていきましょう。

免税事業者から課税事業者になる

根本的な対処法としては、免税事業者から課税事業者になることがあげられます。

これによりインボイス制度を順守した請求書を発行することができ、仕入税額控除の対象にもなります。

ただし、

  • 消費税の納税義務が発生する
  • 経理負担が増える

といったデメリットもあるので、取引先との兼ね合いを考えて慎重な判断が必要となります。

少しでも経理の負担を減らしたい場合は、みなし仕入率を活用できる簡易課税による消費税の計算がおすすめです。

簡易課税とは?売上5000万円以下なら消費税を節税できる可能性あり

芦屋会計
消費税は売上をもとに計算されます。

そのため、所得が赤字であっても消費税を納めなければなりません。

商品やサービスの値引きをする

もう一つの対処法が課税事業者に提供している商品やサービスの値引きです。

2023年10月1日からインボイス制度が始まっても仕入税額控除が完全撤廃されるまでには猶予があります。

例えば、2023年10月1日から2026年9月30日の金額は、仕入税額控除に計上できる金額は8割です。

そのため、取引先に税込110万円(内消費税10万円)でサービスを提供しているなら、2万円の値引きをすれば取引先も納得してくれるでしょう。

芦屋会計
2029年10月1日以降は、仕入税額控除が完全撤廃されますが、消費税の納税義務などを負うよりも値引きで対処したほうがトータルコストが安くなるケースもあります。

免税事業者によってはインボイス制度の影響が少ないケースもある

業態によっては免税事業者を継続した方が良いケースもあります。

例えば、

  • 一般消費者がメイン顧客である(BtoC)
  • 免税事業者がメイン顧客である(BtoB)

といった場合です。

小売店や飲食店、美容院・美容師などで顧客の大半が一般消費者の場合は、免税事業者のままで問題ないでしょう。

一般消費者は、自身の生活のために消費を購入します。

事業者として消費税を納税する義務がなく、仕入税額控除のためにインボイス方式の請求書を要求する必要もありません。

同様の理由で、取引先が免税事業者は、そもそも消費税の納税義務がないため、仕入税額控除の有無が関係なくなってきます。

ただし、業務用の小売店では、課税事業者が仕入れに来ることも多く、インボイス方式の請求書の発行を要求されるかもしれません。

芦屋会計
インボイス制度の影響を大きく受けるのは、システムエンジニア(SE)、Webデザイナー、ライター、建築業など、企業から仕事を請け負って請求書を発行する機会のある方になります。

最後に

2023年10月1日から始まる”適格請求書等保存方式(インボイス方式)”

売上高が1,000万円未満で消費税を納税していないエンジニア・プログラマー、ライター、運送業、不動産賃貸業・大家、クリニック、エステ・リラクゼーション、カメラマン、ピアノ講師・音楽家といった個人事業主やフリーランスに幅広く影響する新しい制度です。

現在、免税事業者である場合は、取引先との兼ね合いから対応を迫られる可能性があります。

担当者は、

  • インボイス方式の移行でどのくらい影響を受けるか?
  • 取引先との関係性にどのくらい影響があるか?
  • 課税事業者になることでどのくらい負担が増えるか

といったことを考慮して対策を考えましょう。

また、インボイス方式の移行による仕入税額控除の廃止は、2023年10月1日から2029年10月1日の6年間を通して徐々に実施されることになります。

免税事業者を継続するにしても、どのくらい影響があるのかアンテナを張っておくことが大切です。

場合によっては課税事業者になって対処する必要がありますが、消費税を販売価格に転嫁することが困難な場合は廃業の可能性も出てくるので慎重に行いましょう。

国でもインボイスに関する一般的な質問や相談を受け付ける相談窓口を開設しているので積極的に活用しましょう。

国税庁「インボイスコールセンター(インボイス制度電話相談センター)」はこちら

※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。

低価格で質の高いサービスを月額1万円から

近畿エリアで税理士をお探しならお任せください!

弊社は、”低価格で質の高いサービス”をモットーに700件の顧客先に対して、平均35%の削減実績がございます。

  • ・会社にお金を残す"節税対策"
  • ・銀行融資や与信に有利な"決算書の作成"
  • ・補助金・助成金を活かした無駄のない"会社設立"
  • ・追徴課税の回避や心理的負担を減らす"税務調査対策"

など、私たちなら可能です。

お客様とのコミュニケーションを重視しながら、税務に精通した専門スタッフが誠心誠意サポートさせていただきます。

まずは、電話またはメールフォームでの無料相談をお待ちしております。

※無料相談は顧問契約を前提としておりますので、単なるご質問や一般的な質問に関しては受けかねますので予めご了承ください。

>節税に強い税理士事務所「芦屋会計事務所」の顧問料金表はこちら

初年度決算料0円!税理士の変更は難しくありません!

このような不満はありませんか?

  • ・サービスの割に料金が高すぎる。
  • ・節税の仕方を教えてくれない、アドバイスがない。
  • ・雰囲気・年齢が合わない、話しづらい。
  • ・質問・相談に対する回答が遅い。
  • ・税務調査の対応に不満・不安を感じる。

私たち芦屋会計事務所はこのような不満を解消致します!

当然、当然、税理士の変更に不安はつきものです。

このような不安やリスクを解消し、弊所サービスをよく知って頂くきっかけとして、初年度決算料0円としました。

現在の税理士事務所と比較してみて下さい。

顧問税理士を変更したい方はこちら

 

関連記事

  1. 消費税の「非課税取引」とは?具体例と間違いやすい取引を徹底解説
  2. 消費税の納税義務の判定【基準期間と特定期間を解説】
  3. 【2020年】法人税・消費税の電子申告(e-Tax)が義務化!対…
  4. 【消費税】軽減税率は自動販売機にも適用される?販売手数料は対象外…
  5. 赤字でも消費税はかかる!?免除になる条件とは
  6. 【消費税】課税売上割合とは?95%以上で全額仕入税額控除
  7. 消費税総額表示義務化はいつから?事業者間の請求書も対象?罰則など…
  8. 【消費税】軽減税率は遊園地の食べ歩きにも適用される?売店の扱いな…

所長のごあいさつ

こんにちは、芦屋会計事務所 代表税理士の椎名哲士です。

このホームページは中小企業の経営者の方々やこれから起業しようとする方を支援させていただくために作りました。常に新しい情報を追加する予定です。

このサイトで、あなた様が経営についてのヒントを少しでも見つけていただけたら、私達の目的は達成します。

所長のごあいさつ >

運営事務所

顧問料1万円からの会計事務所
大阪、京都、神戸で税理士事務所を探しているなら節税対策に強い「芦屋会計事務所」にお任せください。

事務所案内 >

スタッフ紹介 >

お問い合わせ >

PAGE TOP