今年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大により幅広い業種で経営的に計り知れない打撃がありました。
特に緊急事態宣言の時期を中心にホテルや飲食店では、予約のキャンセル・取り消しが相次いだことでしょう。
さて、一般的にホテルや飲食店をキャンセルした場合は、利用日からさかのぼって一定の割合でキャンセル料が発生します。
例えば、ホテルの予約であれば、当日のキャンセルなら宿泊料の100%、前日なら80%、2~3日前なら50%、4~7日前なら20%といった具合です。
もちろん、新型コロナウイルス感染症の拡大という特殊な状況であることからキャンセル料を取らないケースもありました。
しかし、ホテルにとっては、すでに確保しておいた部屋が売上に繋がらないことで損失が発生することになります。
また、ホテルの食事プランや飲食店の予約であれば、それまで準備していた食材を破棄する必要も生じることから、その損害分のキャンセル料を徴収したケースもあるでしょう。
この記事では、ホテルや飲食店のキャンセル料を受け取ったときの消費税の扱いなどについて解説します。
キャンセル料の消費税は「不課税」のケースもある
顧客からキャンセル料を受け取った場合は、キャンセル料の種類によって扱いが異なります。
具体的には、
- 解約に伴う事務手数料としてのキャンセル料
- 逸失利益に対する損害賠償金としてのキャンセル料
の2種類があります。
事務手数料としてのキャンセル料
こちらは、解約手続きに伴う手数料の性格を持つキャンセル料であり、消費税の課税対象となります。
国税庁ホームページには、具体例が紹介されています。
例えば、航空運賃のキャンセル料などで、解約等の時期に関係なく一定額を受け取ることとされている部分の金額は、解約等に伴う事務手数料に該当し課税の対象になります。
出典:国税庁「No.6253 キャンセル料」
損害賠償金としてのキャンセル料
こちらは、本来得ることができたであろう利益がなくなったことの補填金の性格を持つキャンセル料であり、消費税の課税対象にはなりません。
なぜなら、消費税が課税される4つの要件である
- 国内において行われる取引
- 事業者が事業として行う取引
- 対価を得て行う取引
- 資産の譲渡、資産の貸付け又は役務の提供
の4番目「資産の譲渡等」に該当しないからです。
先ほど同様、国税庁ホームページで具体例が紹介されています。
例えば、航空運賃のキャンセル料などで、搭乗区間や解約等の時期などにより金額の異なるものは、逸失利益等に対する損害賠償金に該当するので課税の対象となりません。
出典:国税庁「No.6253 キャンセル料」
事務手数料と損害賠償金としてのキャンセル料
では、キャンセル料に「事務手数料」と「損害賠償金」の両方が含まれている場合は、どうなるのでしょうか?
そのときは、全額を不課税として取り扱うと国税庁ホームページでは案内されています。
ゴルフ場の予約をキャンセルした際に受領するキャンセル料などで、事業者がその全額について事務手数料に相当する部分と損害賠償金に相当する部分を区分することなく一括して受領しているときは、その全額を不課税として取り扱うこととされています。
出典:国税庁「No.6253 キャンセル料」
最後に
今回は、ホテルや飲食店のキャンセル料に消費税が課税されるのかどうかについて解説しました。
一口にキャンセル料といっても
- 事務手数料
- 損害賠償金
と性格が若干異なり、消費税の扱いにも影響してくるので予め決めておいたほうが良いでしょう。
なお、基本的にキャンセル料について不課税扱いとなりますが、消費税が発生しない取引としては他にも「非課税」「免税」もあります。
それぞれの違いについては、次の記事でまとめていますので参考にしてください。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。
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