今年も肌寒い季節がやってきました。
この気温が下がる季節に気をつけなければならないのが、インフルエンザの感染です。
厚生労働省では、インフルエンザ予防のために「マスクの着用」「手洗いうがい」の他にも季節性インフルエンザワクチン接種を推奨しています。
インフルエンザの流行は、企業にとってもオフィス内の蔓延による業務停止など大きなダメージになり得ます。
このような事態を防ぐため、最近では、企業側の費用負担で従業員にインフルエンザの予防接種を受けてもらうケースもあります。
さて、ここで気になるのが、インフルエンの予防接種の費用に対して消費税が課税されるのかどうか?です。
この記事では、インフルエンザ等の予防接種を受けたときの消費税の扱いについて解説していきます。
目次
インフルエンザ等の予防接種には消費税が課税される
先に結論を言っておくと、インフルエンザ等の予防接種には消費税が課税されます。
なぜなら、予防接種は、非課税取引の要件である「療養、医療、施設療養に係るもの」に該当しないからです。
そのため、インフルエンザ等の予防接種を受けた場合は、予防接種の費用に加えて消費税10%が加算されて請求されることになります。
一方、発熱や風邪症状などにより病院で医療サービスを受けた場合は、消費税が課税されない非課税扱いとなります。
では、消費税の課税と非課税の境界線は何でしょうか?もう少し掘り下げて見ていきましょう。
消費税が非課税とは
まず、消費税とは、日本国内でモノやサービスを消費したときに発生する税金です。
原則として
- 国内において行われる取引
- 事業者が事業として行う取引
- 対価を得て行う取引
- 資産の譲渡、資産の貸付け又は役務の提供
に当てはまった場合に課税されます。
しかし、上記に当てはまっていても「消費税という税の性格になじまないもの」「社会政策的な配慮」から消費税が課税されないケースもあります。
これを消費税の非課税取引といいます。
医療サービスの非課税取引について
医療関係の非課税取引で言えば、健康保険法、国民健康保険法などによる「医療」「労災保険」「自賠責保険」の対象となる医療サービスが対象となります。
ただし、医療サービスの中でも次のように消費税がかかるケースがあります。
- 患者の希望によって保険算定額を超える部分(差額ベッド代等)
- 自由診療(美容整形、健康診断・人間ドック、インフルエンザ予防接種など)
- 医療相談料(健康相談、健康指導、機能訓練、診断書作成料)
- 歯科自由診療(金属床義歯、歯科矯正等)
- 地方公共団体等から委託を受けて行われる老人保険法の健康診査及び母子保健法の妊婦・乳児の健康診査
- 柔道整復師・鍼灸師・マッサージ師の施術で療養費の支給外のもの
- 200床以上の病院の初診料・診察料のうち特別料金部分、その他自由診療
インフルエンザ等の予防接種については、健康保険の適用対象外となることから消費税の課税対象となります。
会社負担なら勘定科目は「福利厚生費」で経理処理できる
会社の費用負担により従業員がインフルエンザ等の予防接種を受けた。
その場合、会社は、従業員に補助した予防接種費用を福利厚生費として必要経費に算入できます。
福利厚生費とは、会社が従業員のために支給する給与以外のサービスの提供にかかった費用を言います。
国税庁では、次のように定義されています。
- 創立記念日、国民の祝日、新社屋の落成式などに際し、従業員におおむね一律に、社内において供与される通常の飲食に要する費用
- 従業員等(従業員等であった者を含みます。)又はその親族等のお祝いやご不幸などに際して、一定の基準に従って支給される金品に要する費用(例えば、結婚祝、出産祝、香典、病気見舞いなどがこれに当たります。)
出典:国税庁「No.5261 交際費等と福利厚生費との区分」
また、課税対象となる「経済的利益」と判定されないためには、著しく高額ではなく従業員全員を対象にしていなければなりません。
当該用役の提供を受け又は当該施設を利用した役員又は使用人が受ける経済的利益については、当該経済的利益の額が著しく多額であると認められる場合又は役員だけを対象として供与される場合を除き、課税しなくて差し支えない
出典:国税庁「給与等に係る経済的利益」
インフルエンザ等の予防接種については、
- 従業員全員を対象としている
- 社会通念上、著しく高額ではない
- 業務上必要である(インフルエンザ等の感染による業務停止を防ぐためなど)
という点を満たせば、基本的には福利厚生費として認められます。
会社負担でインフルエンザ予防接種をするときはインボイス制度に注意
会社負担でインフルエンザ予防接種の負担をする場合は、消費税を支払わなければなりません。
ただ、負担した消費税については、仕入税額控除により売上にかかる消費税から差し引くことが可能です。
ただし、2023年10月1日から始まったインボイス制度の影響によって仕入税額控除には登録番号が必要となります。
この登録番号を発行するには、課税事業者になって適格請求書発行事業者の登録を受ける必要があります。
もし、インフルエンザ予防接種を受けたクリニックが適格請求書発行事業者でない場合は、会社で負担した消費税については仕入税額控除ができません。
最後に
今回は、インフルエンザ等の予防接種に関わる消費税を中心に解説しました。
原則、健康保険法、国民健康保険法などによる「医療」「労災保険」「自賠責保険」の対象となる医療サービスは、消費税の非課税取引となっています。
しかし、インフルエンザ等の予防接種については、健康保険の定期用対象となることから消費税が課税されます。
会社負担や一部補助金、助成金の適用や65歳以上の無償実施であっても消費税を含めた金額で計算されることになります。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。
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