消費税

消費税の中間納付(予定納税)とは?中間申告の時期・回数・計算方法など

皆さんに馴染み深い税金の一つである”消費税”

事業者においても商品やサービスを提供する限りは、常に考える必要のある”切っても切れない税金”となります。

通常、消費税の納税期限は、

  • 法人:事業年度の終了日の翌日から2ヶ月以内
  • 個人事業主:3月末まで

となります。

しかし、前年の消費税の納付税額が一定金額以上になると、中間納付(予定納税)の義務が生じてきます。

この記事では、消費税の予定納税(中間納付)について分かりやすく解説します。

消費税の中間納付とは

消費税の中間納付とは、簡単に言うと消費税を分割で支払うことです。

また、税務署に中間納付の税額を計算して申告することを”中間申告”と言います。

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通常であれば、確定申告時に消費税を一括で全額納付しますが、中間納付では2回、4回、12回と分割して納付します。

例えば、消費税の年税額が100万円であった場合、

  • 8月に50万円
  • 3月に50万円

と分割して納付することになります。

これにより一度に大きな税負担が生じることを防げます。

対象者

予定納税は、前事業年度(個人の場合は前年)の消費税の年税額が48万円を超える者が対象となります。

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消費税は、

  • 国税:6.3%(令和1年10月1日以降は7.8%)
  • 地方税:1.7%(令和1年10月1日以降は2.2%)

に分かれていますが、上記の48万円超は「国税」のみを指しています。

消費税の地方税は含まれないことに注意が必要です。

このことは、国税庁ホームページにも明記されています。

中間申告書の提出が必要な事業者は、個人の場合は前年、法人の場合は前事業年度(以下「前課税期間」といいます。)の消費税の年税額(注1)が48万円を超える者です。

(注1) 地方消費税額は含みません。

中間申告の回数

前事業年度の消費税の年税額によって中間申告の回数は変わってきます。

前事業年度の消費税の年税額 中間申告の回数
48万円以下 中間申告は不要
48万円超から400万円以下 年1回
400万円超から4,800万円以下 年3回
4,800万円超 年11回

※前事業年度の消費税の年税額には、地方消費税を含みません。

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例えば、前事業年度の消費税の年税額が100万円の場合は、中間申告が”1回”必要ということです。

中間納付の期間

消費税の中間納付には、それぞれ納付期間が定められています。

原則は、

  • 各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2ヶ月以内

です。

例えば、3月決済(課税期間4月1日〜翌年3月31日)の法人の場合、納付期間は次のようになります。

申告回数 課税期間末日 納付期間
1回 1回目:9月末 1回目:10月1日〜11月末
3回 1回目:6月末
2回目:9月末
3回目:12月末
1回目:7月1日〜8月末
2回目:10月1日〜11月末
3回目:1月1日〜2月末
11回 1回目:4月末
2回目:5月末
3回目:6月末
4回目:7月末
5回目:8月末
6回目:9月末
7回目:10月末
8回目:11月末
9回目:12月末
10回目:翌年1月末
11回目:翌年2月末
1回目:6月1日〜7月末
2回目:6月1日〜7月末
3回目:7月1日〜8月末
4回目:8月1日〜9月末
5回目:9月1日〜10月末
6回目:10月1日〜11月末
7回目:11月1日〜12月末
8回目:12月1日〜翌年1月末
9回目:翌年1月1日〜2月末
10回目:翌年2月1日〜3月末
11回目:翌年3月1日〜4月末
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申告回数が11回の場合に関しては、1回目と2回目の納付期間が同じになっています。

これは、4月と5月は、確定申告の手続き期間中であり、前期の消費税の納税額が確定する前に申告期限が到来するのを防ぐためです。

還付金

中間納付で払い過ぎた消費税は、確定申告時に精算されて”還付金”として戻ってきます。

還付金の計算式は、次のようになります。

還付金 = 確定申告において納付する消費税額 − 中間納付税額の合計

例えば、中間納付額の合計が100万円であったが、確定申告時に消費税の納付額が90万円となった場合は、次のようになります。

還付金 = 確定申告において納付する消費税額 − 中間納付税額の合計 = 90万円 − 100万円 = − 10万円

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確定申告により払い過ぎていた10万円が還付されます。

中間申告による納付額の計算方法は2種類

中間申告による納付額の計算方法は「予定申告方式」と「仮決算方式」の2種類があります。

どちらの計算方法を選択するかは、納税者が決めることができるので有利な方を選択しましょう。

予定申告方式

予定申告方式とは、前事業年度の消費税の年税額をもとに各回の中間納付税額を計算する方法です。

前事業年度の消費税の年税額 中間申告の回数 中間納付税額
48万円以下 中間申告は不要 なし
48万円超から400万円以下 年1回 前事業年度の消費税の年税額の2分の1
400万円超から4,800万円以下 年3回 前事業年度の消費税の年税額の4分の1
4,800万円超 年11回 前事業年度の消費税の年税額の12分の1

※前事業年度の消費税の年税額には、地方消費税を含みません。

計算が簡単

予定申告方式は、前事業年度に納めた消費税をもとに分割するだけなので計算が楽です。

例えば、前事業年度の消費税の年税額が100万円の場合は、中間申告の回数は1回(確定申告と合わせて申告回数は2回)、中間納付税額は2分の1となります。

そのため、

  • 1回目に50万円(中間申告)
  • 2回目に50万円(確定申告)

と容易に計算することが可能です。

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予定申告方式では、税務署から中間納付税額が記載された「消費税及び地方消費税の確定申告書」と「納付書」が送られてきます。

それに従って中間納付を完了させることも可能です。

仮決算方式

仮決算方式とは、それぞれの中間申告ごとに仮決算をして中間納付税額を計算する方法です。

資金繰りが改善できる

仮決算方式は、仮決算をする分だけ手間がかかる方法です。

ただ、前事業年度と比べて「売上高が下がった」「仕入高が増えた」といった場合は、中間納付税額を抑えることができる可能性があります。

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業績悪化に伴って資金繰りをシビアにしなければならない場合は、仮決算方式がおすすめです。

還付がされない

仮決算方式では、仮決算で計算した納付額がマイナスになっても還付されません。

消費税の中間納付税額が−1万円だったとしても0円として扱われるので注意しなければなりません。

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仮決算では、還付されませんが、確定申告時に還付を受けることは可能です。

中間納付を任意でする方法

消費税の中間納付は、消費税の年税額が48万円を超えると義務が発生します。

しかし、消費税の中間納付の義務がなくても「任意の中間申告制度」を活用すれば自主的に年1回の中間申告をすることが可能です。

※自主的に中間納付をする場合、申告回数3回、11回を選択することはできません。

提出期限

任意の中間申告制度を利用したい場合は、課税期間の開始日から6ヶ月以内に「任意の中間申告書を提出する旨の届出書」を税務署に提出する必要があります。

また、中間申告書は、中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2ヶ月以内に提出しなければなりません。

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例えば、3月決済(課税期間4月1日〜翌年3月31日)の法人の場合、9月末までに提出する必要があります。

また、中間申告書は、10月1日〜11月末に提出しなければなりません。

中間納付税額

任意の中間申告制度による中間納付税額の計算方法は、次のとおりです。

中間納付税額の計算方法 中間申告の回数 中間納付税額
予定申告方式 年1回 前事業年度の消費税の年税額の2分の1
仮決算方式 年1回 仮決算による中間納付税額
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任意の中間申告制度を利用する場合も「予定申告方式」または「仮決算方式」のいずれか条件が良い方を選ぶことができます。

消費税の中間納付の手続方法

消費税の中間納付の手続方法は、7種類あります。

納付手続 納付方法 便利に利用できる方 納付手続に必要となるもの
ダイレクト納付 e-Taxによる簡単な操作で預貯金口座からの振替により納付する方法 ・e-Taxで申告等をされている方
・源泉所得税を納めている方(源泉徴収義務者)など、頻繁に納付手続をされている方
・日付を指定して納付をされたい方
・e-Taxの開始届出書の提出
・ダイレクト納付利用届出書の提出
インターネットバンキング等 インターネットバンキング等から納付する方法 ・e-Taxで申告等をされている方
・インターネットバンキングやモバイルバンキングを利用されている方
・e-Taxの開始届出書の提出
・インターネットバンキング又はモバイルバンキングの契約
クレジットカード納付 「国税クレジットカードお支払サイト」を運営する納付受託者(民間業者)に納付を委託する方法 ・インターネットに接続できるパソコン等をお持ちの方
・クレジットカードを利用されている方
・クレジットカード
・決済手数料
コンビニ納付(QRコード) コンビニエンスストアの窓口で納付する方法 ・金融機関や税務署が近隣にない方
・インターネットに接続できるパソコン等をお持ちの方
・コンビニ納付用QRコード
コンビニ納付(バーコード) ・金融機関や税務署が近隣にない方
・税務署からバーコード付納付書の送付を受けられた方
・バーコード付納付書
スマホアプリ納付 スマホ決済アプリの残高で納付する方法 ・対応のスマホ決済(PayPay、d払い、au PAY、メルペイ、Amazon Pay、楽天Pay)を利用されている方 ・国税スマートフォン決済専用サイトから納付
振替納税 預貯金口座からの振替により納付する方法 ・申告所得税や消費税(個人)の確定申告書を毎年提出する必要のある方 ・振替依頼書の提出
窓口納付
※金融機関や税務署の窓口
金融機関又は所轄の税務署の窓口で納付する方法 ・上記の手続により納付ができない方 ・納付書
(金融機関の窓口で納付する場合)

出典:[手続名]国税の納付手続(納期限・振替日・納付方法)

※スマホアプリ納付、コンビニ納付(QRコード)の納付可能額は30万円以下です。

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一番便利な支払い方法は、ダイレクト納付です。

国税電子申告・納税システム「e-Tax(イータックス)」により金融機関の窓口に行くことなく、預貯金口座からの振替で納税が完了します。

消費税の中間納付のよくある質問(Q&A)

ここからは、消費税の中間納付のよくある質問(Q&A)をご紹介していきます。

Q. 消費税の中間申告をしなかった場合、罰則はありますか?

A. 特に罰則(ペナルティ)は設けられていません。

ただし、期限までに中間申告をしなかった場合は、予定申告方式で中間申告するものとみなされ、税務署から中間納付税額が記載された「消費税及び地方消費税の確定申告書」と「納付書」が送られてきます。

あとから仮決算方式の中間申告に変更することはできないので注意が必要です。

Q. 消費税の中間納付が遅れたら、罰則はありますか?

A. 延滞税を支払う義務が発生します。

延滞税とは、税金の納付遅れに対してかかる罰金のようなものです。

延滞税の税率は、毎年見直しがあります。

例えば、平成30年1月1日から令和元年12月31日は

  • 2ヶ月以内:2.6%
  • 2ヶ月超過:8.9%

となります。

延滞税について詳しくは、次の記事で解説しています。

税務調査の延滞税とは?計算方法と具体例・シュミレーション

Q. 消費税を中間納付したときの仕訳・勘定科目はどうすればいいですか?

消費税の中間納付は、税抜処理と税込処理で仕訳が異なります。

税抜処理では「仮払金」または「仮払消費税等」で仕訳をします。

消費税の中間納付(税抜処理)の仕訳例
借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
仮払金 150,000円 現金 150,000円

税込処理では「租税公課」で仕訳をします。

消費税の中間納付(税込処理)の仕訳例
借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
租税公課 150,000円 現金 150,000円

最後に

消費税の年税額が48万円を超えると中間納付の義務が発生します。

通常、消費税の納税が必要となる

  • 法人:事業年度の終了日の翌日から2ヶ月以内
  • 個人事業主:3月末まで

だけでなく、期中にも消費税を納める必要があるので注意したいところです。

※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。

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