役員報酬

役員報酬を代表取締役に一任する手続き方法【議事録・決定書の書き方】

社長や役員(取締役や監査役など)が受け取る給与の代わりとなる”役員報酬”

役員報酬を決めるときは、

  • 役員報酬の増減による会社の利益調整
  • お手盛りの弊害(会社財産を毀損させること)

を防ぐために一定の手続きが求められます。

この記事では、役員報酬を代表取締役に一任するための手続方法について詳しく解説していきます。

役員報酬を決める手続き方法

通常、役員報酬を決めるときは、

  • 株主総会を開催
  • 役員報酬変更についての株主総会議事録(合同会社は同意書)を作成・保管する

という手続きが必要になります。

例えば、3月決算の法人の場合、次のようなスケジュールで役員報酬を変更します。

3月決算の役員報酬の変更スケジュール例
4月1日 事業年度の開始日
5月 株主総会の開催
(株主総会議事録の作成・保管)
6月 新しい役員報酬の支給
芦屋会計
株主総会議事録とは、株主総会を開催した経過や結果などを記録する文書です。

ここには、

  • 開催日時
  • 会場
  • 出席者
  • 議長
  • 取締役承認の件

についての記載と出席者の署名・捺印がされています。

法令

上記の手順で役員報酬を決めることは、会社法361条「取締役の報酬等」でも定められています。

(取締役の報酬等)

第361条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容
2 前項第2号又は第3号に掲げる事項を定め、又はこれを改定する議案を株主総会に提出した取締役は、当該株主総会において、当該事項を相当とする理由を説明しなければならない。

出典:会社法361条

役員報酬を代表取締役に一任する手続き方法

先ほど紹介した方法では、株主総会で個別に役員報酬を決めていました。

その他、株主総会で役員報酬の総額を決めてから、その総額の範囲内で代表取締役が個別に役員報酬を決定することもできます。

手続きとしては、

  1. 株主総会で議事録・決定書を作成
  2. 取締役会で議事録・決定書を作成

となります。

芦屋会計
代表取締役に一任する方法をとった場合、株主等に役員の個別の役員報酬が開示されないメリットがあります。

1、株主総会で議事録・決定書を作成

まずは、株主総会で役員報酬の総額の決議を取ります。

定時株主総会議事録

1、開催日時令和○○年○○月○○日 午前10時
2、開催場所○○○株式会社 本社
3、出席者発行株主数 200株
この議決権を有する株主総数 4名
この議決権の数 200個
出席株主数 4名
この議決権の個数 200個
4、議長代表取締役 芦屋会計 太郎

取締役報酬の決定の件
議長は、総取締役の報酬総額を年額金○○○○万円とし、その個別の分配方法を取締役会に一任したい旨を述べて、直ちに議事に入った。その理由を詳細に説明し、その承認を求めたところ、満場一致をもって承認可決した。

上記の議事を明確にするため議事録を作成し、議長および出席株主が次に記名押印する。

令和○○年○○月○○日

株式会社○○○ 定時株主総会

議長・議事録作成者代表取締役 芦屋会計 太郎
出席株主芦屋会計 花子
出席株主芦屋会計 一郎
出席株主芦屋会計 次郎

芦屋会計
株主総会で役員報酬の総額を決めることで、お手盛りの弊害を防止して、会社法361条を遵守します。

2、取締役会で議事録・決定書を作成

続いて、取締役会で役員報酬の総額の具体的な配分を代表取締役に一任する決議を取ります。

取締役会議事録

1、開催日時令和○○年○○月○○日 午前10時
2、開催場所○○○株式会社 本社
3、出席者取締役 3名
監査役 1名
4、議長代表取締役 芦屋会計 太郎

取締役月額報酬の決定の件
議長は、取締役の令和○○年○○月○○日の月額報酬を社長に一任したい旨を述べて、直ちに議事に入った。その理由を詳細に説明し、その承認を求めたところ、満場一致をもって承認可決した。

上記の議事を明確にするため議事録を作成し、出席取締役および監査役が次に記名押印する。

令和○○年○○月○○日

株式会社○○○ 定時株主総会

議長・議事録作成者代表取締役 芦屋会計 太郎
取締役芦屋会計 花子
取締役芦屋会計 一郎
監査役芦屋会計 次郎

最後に

役員報酬を代表取締役に一任することにより、個人別の報酬額が明らかになることを避けることができます。

このような取り扱い方法は、

  • 株主総会で「役員報酬の総額の枠」を決議する
  • 取締役会で「代表取締役に個別の報酬額の決定を一任すること」を決議する

という手続きを取ることで判例でも許容されており、多くの会社で採用されています。

役員報酬を決めるときは『役員報酬の変更時期に注意!原則、期首から3ヶ月以内のみ可能』を始めとして細かいルールがいくつかあります。

役員報酬の決め方に関して、不安な点がありましたが、税務の専門家である私たちに『役員報酬の手取りを増やす節税方法』と合わせてご相談いただければと思います。

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