決算や確定申告などの会計・税務の負担を軽減したい。
そんなときに頼りになるのが”税理士”という存在です。
税の専門家である「税理士」に税務関係の処理を一任することにより本業に専念して業績アップを図ることができます。
しかし、ここで気になることが「税理士はどのような税務処理をしてくれるか?」という点です。
この記事では、税理士だけに許されている「独占業務」に的を絞って解説していきます。
目次
税理士の独占業務とは
税理士の独占業務とは、税理士だけが許されている業務を言います。
具体的には、税理士法第2条で定められている
- 税務の代理
- 税務書類の作成
- 税務相談
という3つの税理士業務を指します。
これらの税理士業務に関しては、税理士法第51条により
税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行ってはならない。
と規定されています。
そのため、原則、税理士または税理士法人でない者が税理士業務を行うことはできません。
1、税務の代理
税務の代理とは、本来納税者がすべき「税務の申告・申請」を税理士が代理で行うことを言います。
具体的には、
- 確定申告・青色申告の承認申請
- 税務調査の立ち会い
- 税務署の更生・決定に不服がある場合に主張や陳述をする
などが該当します。
税務調査について
税務調査の入り確率(実調率)は、「法人3.1%」「個人1.1%」とそこまで高くはありません。
しかし、現金取引による売上が多いなど、業種によっては入られやすいケースもあり、最大7年にさかのぼって徴収される可能性があります。
顧問税理士がいれば、税務調査が入ったときに税務署の言いなりになることなく、適切な対応をすることが可能です。
また、近隣の同規模同業者の差益率などから所得を計算する「推定課税」により過大な課税がなされたときは、税務署に正しい所得額を立証するためのサポートもします。
2、税務書類の作成
税務書類の作成とは、本来納税者がすべき「税務署類の作成」を税理士が代理で行うことを言います。
具体的には、
- 確定申告書の作成
- 法人税申告書の作成
- 償却資産税申告書の作成
- 源泉所得税納付書の作成
- 法定調書の作成
などが該当します。
確定申告書の作成について
法人や個人事業主は、1年間に生じた「所得金額」とそれに対する「納税額」を計算してから確定申告書を作成して提出する必要があります。
確定申告書を作成するには、
- 帳簿付け
- 試算表の作成
- 決算整理仕訳
- 決算書の作成
など、やるべきことは多く専門知識な知識も求められます。
「これは経費計上できるか?」「どの勘定科目で処理すべきか?」「税制上の特例を受けれるか?」など細かい点で迷うことも多く、慣れていないと必要以上に時間がかかる上、最新の税制改正を常にキャッチし続ける必要もあります。
顧問税理士を付けることで会計業務の時間を減らすことができ、ミスや申告漏れのない正しい確定申告が可能です。
その他、確定申告書に税務署の署名・押印がつくことで銀行融資(資金調達)も有利に働きます。
3、税務相談
税務相談とは、納税者の税金に関する相談を受けることを言います。
具体的には、
- 納税額の計算方法
- 税金の還付請求の方法
- 節税対策
などが該当します。
節税対策について
中小企業が実践できる節税対策の基本は、役員報酬の決め方です。
もし、役員報酬を適当に決めてしまうと
- 役員報酬が高すぎて、赤字になってしまった
- 役員報酬が低くすぎて、法人税が高くなってしまった
- 役員報酬が低すぎて、かなり生活が厳しくなってしまった
という事態に陥ってしまいます。
法人税を安くするには、役員報酬を調整して、利益を0円に近づける必要があります。
ただし、役員報酬が高すぎれば、個人の税率が高くなると同時に社会保険料も上がってしまうデメリットがあります。
だからこそ、役員報酬をいくらにすれば、「法人税と個人の税金・社会保険料の総支払金額が安くなるのか?」「節税対策でどのくらい税金が安くなるか?」をしっかりとシミュレーションする必要があります。
次の記事で紹介しているとおり、役員報酬は、さまざまな節税対策を組み合わせることで手取り額を増やすことができますので、積極的に活用しましょう。
その他、不測の事態が発生したときに無担保・保証人なしでお金を借りれる「倒産防止共済(経営セーフティ共済)」を活用することで法人税等の負担を減らすことも可能です。
税金の世界では「知らない人が損をして、知っている人が得をする」制度が数多くあり、税務署も積極的には教えてくれません。
また、その会社の状況に応じても”節税対策のやり方”は変わってくるので、どのくらいの税金を減らすことができるか?など、一度、税理士に相談されることをオススメします。
税理士法違反には罰則がある
税理士以外の者が税理士業務を行った場合は、報酬を受け取ったかどうかに関係なく違法行為となります。
税理士法第59条に罰則規定もあり、
- 2年以下の懲役
- 100万円以下の罰金
のいずれかに処される可能性があります。
税理士法に抵触するのは、税理士でない者が報酬を受け取って「税理士業務」を行った場合だけではありません。
例え、善意の無償であっても税理士以外の者が税務の相談やアドバイスを行った場合は、税理士法違反に該当する可能性があるため注意が必要です。
税理士以外でも「税理士業務」が例外的にできるケースがある
税理士法では、例外的に税理士以外の者が「税理士業務」を行うことを認めています。
この例外を受けられるのは、
- 地方公共団体の職員および公益社団法人など
- 弁護士
- 行政書士
です。
1、地方公共団体の職員および公益社団法人など
国税局長(地方税については、地方公共団体の長)は、「租税の申告時期」「管轄区域内に災害があった」など必要性がある判断した場合は、申請から2ヶ月以内の期間に限り一部の税理士業務を無報酬という条件付きで許可することができます。
許可できる税理士業務とは、
- 申告書等の作成
- これに関連する課税標準等の計算に関する事項について相談に応ずること
です。
ただし、その許可を受けることができる者は、地方公共団体の職員および公益社団法人または公益財団法人その他政令で定める法人その他の団体の役員または職員に限ります。
2、弁護士
弁護士は、所属弁護士会を経て国税局長に通知することにより、その国税局の管轄区域内において、随時、税理士業務を行うことができます。
このとき弁護士は、税理士法の一部の規定を受けることになります。
税理士法の規定 | 1条 税理士の使命、30条 税務代理の権限の明示、31条 特別の委任を要する事項、33条 署名押印の義務、33条の2 計算事項,審査事項などを記載した書面の添付、34条 調査の通知、35条 意見の聴取、36条 脱税相談などの禁止、37条 信用失墜行為の禁止、38条 秘密を守る義務、41条 帳簿作成の義務、41条の2 使用人などに対する監督義務、41条の3 助言義務、43条前段 業務の停止、44条 懲戒の種類、45条 脱税相談などをした場合の懲戒、46条 一般の懲戒、47条 懲戒の手続など、48条 懲戒処分の公告、54条 税理士の使用人などの秘密を守る義務、55条 監督上の措置 |
---|
3、行政書士
行政書士または行政書士法人は、他人の求めに応じて
- ゴルフ場利用税
- 自動車税
- 軽自動車税
- 自動車取得税
- 事業所税
- その他政令で定める租税(石油ガス税、不動産取得税、道府県たばこ税、都たばこ税、市町村たばこ税、特別区たばこ税、特別土地保有税、入湯税)
に関して税務署類の作成ができます。
税理士は独占業務以外の業務も担う
税理士は、税理士の独占業務ではないものの関連性が高いことから「会計業務」などを取り扱っているケースが多くあります。
例えば、
- 記帳代行
- 毎月の試算表の作成
- コンサルティング業務
- 新規事業・借入・借り換え業務
などです。
そのため、経理や総務の担当者を1人雇うより顧問税理士を付けて税務関係などの業務を”アウトソーシング(外部委託)”したほうが安く済ませられるケースもあります。
顧問税理士は、必ず付けなければならないということはありません。
しかし、税理士に依頼することで税務関係の手間を省いて正しい申告ができたり、今まで気がつなかった節税対策ができる可能性もあります。
売上が伸びてきて業務が忙しくなってきたなら税理士を活用してみることをオススメします。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。