「災害により住宅や家財に損害が生じた。」
そんなときに活用できるのが、
- 災害減免法
です。
災害減免法を適用すれば、所得税の税制優遇を受けることができます。
災害減免法は、ご自身で申請手続きをしなければ適用できない”知らなきゃ損する制度・仕組み”です。
たった少しの手間で数十万円単位のお金が戻ってくる可能性があるので、災害で住宅や家財に損失を受けた方は活用しましょう。
目次
災害減免法とは
災害減免法(正式名称:非居住者が、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律)とは、災害(地震、台風、火災など)によって住宅や家財に損害を受けたときに所得税の軽減免除が受けられれる制度です。
1923年(大正12年)に発生した関東大震災をきっかけに創設。
1947年(昭和22年)の改正により現在のように広域的な大規模災害だけでなく、局地的な火災であっても適用できるようになりました。
対象の資産
災害減免法の対象となる資産および適用要件は、次の(1)(2)のいずれにも当てはまるケースとなります。
- 「納税者」または「納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族(その年の総所得金額等が48万円以下)」が所有している住宅または家財
- 住宅または家財の損失額がその価額の2分の1以上である場合
家財
家財については、日常生活に通常必要な家具、じゅう器、衣服、書籍その他の家庭用動産を言います。
別荘、書画、骨とう、娯楽品など、生活に必要な程度を超えるものは含まれないことに注意が必要です。
損失額
住宅または家財の損失額は、次のように計算できます。
住宅または家財の損失額 = 資産に生じた損害金額 − 保険金や損害賠償金などによって補てんされる金額
損害金額の計算方法
資産に生じた損害金額については「時価」または「簿価」の2つの方法で求めることが可能です。
時価を基に計算する場合
時価に基づいて損害金額を求める場合は、次のとおりです。
損害金額 = 損失発生直前の時価 − 損失発生直後の時価
簿価を基に計算する場合
簿価に基づいて損害金額を求める場合は、次のとおりです。
損害金額 = 損失発生直前の簿価 − 損失発生直後の時価
※業務用資産 = 取得価額等 − 減価償却費の累計額、業務用資産以外 = 取得価額等 − 減価の額(耐用年数を1.5倍した年数による旧定額法での償却費相当額 × 年数)となります。
なお、このとき災害減免法の対象となるのは、家財の価額が400万円以上である場合です。
控除対象の金額
災害減免法の対象となる金額は、その年の所得金額によって次のように変わります。
その年分の所得金額 | 所得税及び復興特別所得税の軽減額 |
---|---|
500万円以下 | 全額免除 |
500万円超750万円以下 | 2分の1の軽減 |
750万円超1,000万円以下 | 4分の1の軽減 |
※原則、所得金額が1,000万円を超えた場合は、災害減免法を受けられません。
災害減免法のシミュレーション
ここからは、実際の数値に当てはめて災害減免法の控除額の計算シミュレーションをしてみます。
条件は、
- 年収:500万円
- 所得:356万円
- 所得税及び復興特別所得税:14万1,000円
- 資産の価額:1,000万円
- 資産に生じた損害金額:700万円
- 保険金:100万円
とします。
1、住宅または家財の損失額を計算する
まずは、住宅または家財の損失額を算出します。
損失額は、住宅または家財の損害金額から受け取った保険金を差し引くことで計算可能です。
住宅または家財の損失額 = 資産に生じた損害金額 − 保険金や損害賠償金などによって補てんされる金額 = 700万円 − 100万円 = 600万円
2、災害減免法の判定をする
続いて、災害減免法の対象になるかどうかを判定します。
災害減免法の対象になるには「住宅または家財の損失額がその価額の2分の1以上である場合」という要件を満たさなければなりません。
今回のケースでは、
- 住宅または家財の損失額:600万円
- 資産の価額の2分の1:500万円(= 1,000万円 ÷ 2)
となります。
「住宅または家財の損失額 > 資産の価額の2分の1」であることから災害減免法の対象です。
3、その年の所得金額から所得税及び復興特別所得税の軽減額を求める
災害減免法の要件に当てはまった場合は、その年の所得金額から所得税及び復興特別所得税の軽減額を求めます。
今回のケースでは、その年分の所得金額が356万円であることから全額免除が適用されます。
その年分の所得金額 | 所得税及び復興特別所得税の軽減額 |
---|---|
500万円以下 | 全額免除 |
500万円超750万円以下 | 2分の1の軽減 |
750万円超1,000万円以下 | 4分の1の軽減 |
その結果、所得税及び復興特別所得税が14万1,000円 → 0円に全額免除されることになります。
災害減免法と雑損控除の比較
災害により住宅や家財に損害を受けた場合は、災害減免法の他にも「雑損控除」を選択することも可能です。
それぞれ計算方法に違いがあり、どちらか一方の有利な方を選択しなければなりません。
ここからは、災害減免法と雑損控除の違いについて解説します。
災害減免法 | 雑損控除 | |
---|---|---|
損失の発生原因 | 災害 | 災害、盗難、横領 |
対象となる資産の範囲など | 住居または家財の損失額が、その価額の2分の1以上 | 生活に通常必要な資産 ※棚卸資産や事業用の固定資産、山林など生活に通常必要でない資産は対象外です。 |
所得税及び復興特別所得税の軽減額 または 控除額の計算例 |
その年分の所得金額ごとの所得税等の軽減額は、次のようになります。 ・500万円以下:全額免除 ・500万円超750万円以下:2分の1の軽減 ・750万円超1,000万円以下:4分の1の軽減 |
控除額は、次の(1)と(2)のいずれか多い方の金額となります。 1、損失額 - 所得金額の10分の1 2、損失額のうちの災害関連支出の金額 - 5万円 ※災害関連支出とは、災害により滅失した住宅、家財などを取壊しまたは除去するために支出した金額などです。 |
翌年分以降の繰越控除 | 翌年以後の繰越控除はできません。 | 翌年以後3年間の繰越控除できます。 ※東日本大震災による住宅や家財などの損失については翌年以後5年間となります。 |
所得制限 | 原則として損害を受けた年分の所得金額が1,000万円を超えると受けられません。 | 特になし |
住民税の適用 | 所得税の確定申告では「住民税」に反映されません。 別途、住民税の「雑損控除」の申告が必要となります。 |
所得税の確定申告により「住民税」に反映されます。 |
ここで注意していただきたいのは、
- 災害減免法 → 税額控除(税額から差し引く控除)
- 雑損控除 → 所得控除(税額を計算する基になる所得から差し引く控除)
の違いです。
比較例1
実際、災害減免法と雑損控除のどちらがお得になるのか?比較シミュレーションをしてみます。
例えば、
- 年収:500万円
- 所得:356万円
- 所得税及び復興特別所得税:14万1,000円
- 資産の価額:1,000万円
- 損害金額:700万円
- 保険金:100万円
という条件で「災害減免法」と「雑損控除」で税金の変動額を計算してみます。
※損害金額は、住宅や家財の価額の2分の1以上で災害減免法の適用対象とします。
災害減免法 | 雑損控除 | |
---|---|---|
年収 | 500万円 | 500万円 |
給与所得控除 | −144万円 | −144万円 |
基礎控除 | −48万円 | −48万円 |
社会保険料控除 | −72万円 | −72万円 |
雑損控除 | 0円 | −120万円 |
課税所得 | 236万円 | 116万円 |
所得税及び復興特別所得税 | 0円 | 5万9,000円 |
それぞれの税制優遇が適用されることで税金の合計額が14万1,000円から
- 災害減免法:0円
- 雑損控除:5万9,000円
に軽減されました。
今回のケースでは、災害減免法の方が5万9,000円も税金の負担額が小さいことが分かります。
そのため、別途、住民税の申告により「雑損控除」を適用しなければ、雑損控除のほうが所得税と住民税のトータルで税金の負担が軽くなります。
比較例2
続いて、国税庁が公表している比較例を見てみましょう。
主な条件は、
- 夫婦子供2人(子供は16歳以上、そのうち1人が19~22歳)
- 所得:600万円
- 所得税及び復興特別所得税の額:25万9,800円
です。
その他、災害関連支出の金額はなく、社会保険料控除68万円、生命保険料控除4万円として計算。
損害額は、住宅や家財の価額の2分の1以上となります。
その結果の「災害減免法」と「雑損控除」の比較表は、次のとおりです。
損害額 | 所得税法(雑損控除)適用による所得税及び復興特別所得税の額 | 災害減免法適用による所得税及び復興特別所得税の額 |
---|---|---|
100万円 | 207,700円 | 129,900円 |
200万円 | 105,600円 | |
300万円 | 51,500円 |
そのため、雑損控除と比較してどのくらいお得になるのか?をより慎重に比較したほうが良いでしょう。
災害減免法の申請方法
災害減免法の適用要件に当てはまった場合は、災害減免法の申請をしましょう。
災害減免法は、年末調整で行うことができないため、会社員であっても確定申告を提出しなければなりません。
申請方法は、
- 手書き
- 確定申告書等作成コーナー
の2つです。
災害減免法の申請だけであれば、スマートフォンから利用することも可能になっています。
必要書類
災害減免法の申請をする際は、災害による住宅または家財の損害状況が確認できる書類が必要となります。
具体的には、
- 被害を受けた住宅の取得年月、床面積及び自家用車の取得年月などが分かるもの(売買契約書などでその取得価額の分かるもの及び修繕費などの災害関連支出の領収証が残っていれば併せて用意)
- 保険金等で補填される金額がある場合、その金額が分かる書類
- り災(被災)証明書の写し
などです。
上記の書類を確定申告書類等に添付または提示をします。
なお、e-Taxで確定申告書を提出する場合は、災害減免法の証明書の記載内容を入力して送信すれば、添付や提示の必要はありません。
災害減免法を「確定申告書等作成コーナー」で申請する方法
ここからは、確定申告書を「確定申告書等作成コーナー」で作成する方法を解説します。
確定申告等作成コーナーとは、画面上の支持に従って項目を入力するだけで簡単に確定申告書等が作成できる国税庁運営のサービスです。
まず、国税庁の特設Webサイト『確定申告書等作成コーナー』に移動してから「作成開始 >」をクリックします。
※その年の確定申告書等作成コーナーは、1月上旬に公開されるので注意が必要です。
税務署への提出方法を選択します。
マイナンバーカードとICカードリーダライタがあるなら「e-Taxで提出 マイナンバーカード方式」が便利です。
上記の2点がなくても『確定申告のe-Taxは「ID・パスワード方式」が便利!税務署で申請しよう』を参考にID・パスワードを発行すれば、e-Taxによりオンラインで確定申告書の提出が可能になります。
その他、パソコンで印刷して郵送等により提出する場合は、一番右側の「印刷して提出」を選択しましょう。
なお、スマートフォンから「確定申告書等作成コーナー」で確定申告書を作成する方法は、次の記事で解説しています。
国税庁により動作を確認した推奨環境や利用規約などを確認してから「利用規約に同意して次へ」をクリックします。
災害減免法を受けるために確定申告書を作成する場合は、一番左の「所得税」をクリックします。
次の画面で「作成開始」をクリックしてから質問に答えていきましょう。
一般的な会社員であれば「給与以外に申告する収入はありますか?→いいえ」「お持ちの源泉徴収票は1枚のみですか→はい」「勤務先で年末調整は済んでいますか?→はい」と選択します。
収入金額・所得金額の入力画面が表示されます。
会社員で他の収入がない場合は、給与所得の「入力する」をクリックしてから源泉徴収票に記載されている金額を転記していきましょう。
災害減免法による所得税の軽減免除については「税額控除・その他の項目の入力」で選択可能です。
災害の原因、損害の生じた年月日、損害を受けた資産の種類、損害金額、保険金などで補填される金額を入力しましょう。
災害減免法を「手書き」で申請する方法
パソコンやスマートフォンの操作が苦手な方は、確定申告書を「手書き」で作成できます。
どうしても分からない点があれば、税務署に直接行って説明を受けながら記入することも可能です。
災害減免法を「手書き」で申請するための必要書類は、
- 確定申告書
- 災害による住宅または家財の損害状況が確認できる書類
の2点です。
また、確定申告書を作成するために会社員の場合は、勤務先で発行される「源泉徴収票」も必要となります。
確定申告書の書き方
ここからは、災害減免法を適用するときの確定申告書の書き方を解説します。
正社員、公務員、契約社員、派遣、アルバイト・パートなどの場合は『確定申告書A』をダウンロードしましょう。
自営業の場合は『確定申告書B』を使用することになります。
なお、確定申告書Aと確定申告書Bの記入方法については大きな違いはありません。
ここでは、確定申告書Aの書き方を紹介していきます。
確定申告書A第一表の書き方
確定申告書A第一表には、次の赤で囲まれている枠を記入していきます。(所得状況などによって記入箇所は増えます。)
基本的には、勤務先から発行される「源泉徴収票」の金額を見ながら記入していくことになります。
上部の欄には「管轄税務署」を記入します。
管轄税務署は、GoogleやYahoo検索で「地名+管轄税務署」と検索すると表示されます。
「提出日」「住所」「個人番号(マイナンバーカードの番号)」「名前」「性別」「世帯主」「世帯主との続柄」「生年月日」「電話番号」など、基本的な情報を入力します。
給与(ア) | 源泉徴収票の「収入金額」を記入します。 |
---|---|
給与(1) | 源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」を記入します。 |
合計(5) | (1)から(4)までの合計金額を記入します。給与所得のみであれば(1)の金額を記入します。 |
社会保険料控除(6) | 源泉徴収票の「社会保険料等の金額」を記入します。 |
(7)から(14) | 各種控除に該当する方は、記入をします。例えば、一定所得以下の配偶者がいる方は、配偶者控除の欄に記入しましょう。 |
基礎控除(15) | 合計所得金額が2,400万円以下の方は、48万円と記入します。 |
(6)から(15)までの計(16) | (6)から(15)までの合計金額を記入します。 |
合計(20) | (16)から(19)までの合計金額を記入します。 |
課税される所得金額(21) | (5)から(20)を差し引いた金額を記入します。 |
上の(21)に対する税額(22) | 「所得税の速算表」から税額を算出して記入します。 |
差引所得税額(32) | (22)から(23)(24)(25)(26)(27)(28)(29)(30)(31)を差し引いた金額を記入します。 |
災害減免額 | その年分の所得金額から災害減免額を計算します。例えば、所得金額が600万円で「所得税及び復興特別所得税の額」が25万9,800万円の場合は、軽減額は2分の1です。そのため、災害減免額は129,900円(= 25万9,800万円 ÷ 2)となります。 |
再差引所得税額(基準所得税額)(34) | (32)から(33)を差し引いた金額を記入します。 |
復興特別所得税(35) | (34)に0.021をかけた金額を記入します。 |
所得税及び復興特別所得税の額(36) | (34)と(35)の合計金額を記入します。 |
源泉徴収税額(38) | 源泉徴収票の「源泉徴収税額」を記入します。 |
申告納税額の還付される税金(40) | (36)から(37)(38)を差し引いた金額を記入します。 |
※申告者の状況に応じて記入箇所は変わります。
上の(21)に対する税額(22)の計算に用いる「所得税の速算表」は、次のとおりです。
課税される所得金額 (課税所得) |
税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
確定申告書A第二表の書き方
確定申告書A第二表には、次の赤で囲まれている枠を記入していきます。(所得状況などによって記入箇所は増えます。)
まず、「住所」と「氏名」を記入します。
あとは、源泉徴収票などを見ながら記入してください。
所得の種類 | 会社員の場合は「給与」と記入します。 |
---|---|
種目・所得の生ずる場所又は給与などの支払者の氏名・名称 | 会社員の場合は、勤務先の「会社名」を記入します。 |
収入金額 | 源泉徴収票の「収入金額」を記入します。 |
源泉徴収税額 | 源泉徴収票の「源泉徴収税額」を記入します。 |
源泉徴収税額の合計額 | 源泉徴収税額の合計額を記入します。 |
住民税に関する事項は「同一生計の配偶者」「16歳未満の扶養親族」がいる場合に記入します。
社会保険の種類 | 会社員の場合は「源泉徴収票のとおり」と記入します。 |
---|---|
支払保険料 | 源泉徴収票の「社会保険料等の額」を記入します。 |
合計 | 支払保険料の合計金額を記入します。 |
生命保険料控除 | 「新生命保険料の計」「旧生命保険料の計」「新個人年金保険料の計」「旧個人年金保険料の計」「介護医療保険料の計」「地震保険料の計」「旧長期損害保険料の計」を加入状況に応じて記入します。 |
扶養控除 | 控除対象の扶養親族がいある場合は「氏名」「続柄」「生年月日」「控除額」「個人番号」を記入します。 |
災害減免法のよくある質問(Q&A)
ここからは、災害減免法のよくある質問(Q&A)をご紹介します。
Q. 災害減免法は年末調整により適用できますか?
A. 本文中でも解説したとおり、災害減免法は年末調整の対象外です。
そのため、会社員は、年末調整と確定申告の両方を行う必要があります。
Q. 住所が別であっても「生計を一にする」に当てはまりますか?
A. 生活費を同じ財布から支出していれば、生計を一にするに当てはまります。
生計を一にするは、必ずしも同居を要件とするものではなく、勤務、修学、療養などのために別居している場合でも「生計を一にする」とみなされるケースがあります。
例えば、学校の寮で暮らす子どもに生活費、学資金などを常に送金している場合は、生計を一にしている子と認められます。
Q. 損失額の算出が困難な場合は、どうすれば良いの?
A. 損失額の算出が困難な場合は、国税庁が公表している合理的な計算方法を用いることが可能です。
通常、被害を受けた資産の損失額は、その損失の生じた直前における資産の価額を基に計算する必要があります。
しかし、
- 住宅の主要構造部に損壊がある場合
- 損害を受けた資産について個々に損失額を計算することが困難な場合
の両方に当てはまる場合は、次の方法により計算することが可能です。
ただし、被災者生活再建支援法に基づくものは除きます。
また、損失額には、損害を受けた住宅等の原状回復費用(修繕費)が含まれるものとします。
住宅に対する損失額の計算
(1)住宅の取得価額が明らかな場合は、次のとおりです。
損失額 =(住宅の取得価額 - 減価償却費)× 被害割合
(2)住宅の取得価額が明らかでない場合は、次のとおりです。
損失額 ={(1平方メートルあたりの工事費用 × 総床面積)- 減価償却費)}× 被害割合
家財に対する損失額の計算(生活に通常必要な動産で、車両を除きます。)
(1)家財の取得価額が明らかな場合は、次のとおりです。
損失額 =(家財の取得価額 - 減価償却費)× 被害割合
(2)家財の取得価額が明らかでない場合は、次のとおりです。
損失額 = 家族構成別家庭用財産評価額 × 被害割合
家族構成別家庭用財産評価額は、年齢や家族構成によって次のように定められています。
世帯主の年齢 | 夫婦 | 独身 |
---|---|---|
~29歳 | 500万円 | 300万円 |
30~39歳 | 800万円 | |
40~49歳 | 1,100万円 | |
50歳~ | 1,150万円 |
※大人(年齢18歳以上)1名につき130万円を加算し、子供(年齢18歳以上)1名につき80万円を加算します。
- 40代夫婦
- 子供(18歳未満)2人
の場合は、1,260万円(= 1,100万円 + 80万円 × 2人)が家庭用財産評価額として扱われます。
車両に対する損失額の計算
車両に対する損失額の計算は、次のとおりです。
損失額 =(車両の取得価額 - 減価償却費)× 被害割合
生活に通常必要であるかどうかは、専ら通勤に使用しているなど、車両の保有目的、使用状況を総合的に勘案して判断されます。
Q、相続・遺贈または贈与によって取得した財産が災害によって被害を受けたときの相続税・贈与税の扱いは?
一定の条件を満たすことで災害減免法により相続税または贈与税の減免が受けられます。
適用条件は、
- 相続税等の課税価格の計算の基礎となった財産の価額(相続税については債務控除後の価額)のうちに被害を受けた部分の価額の占める割合が10分の1以上であること
- 相続税等の課税価格の計算の基礎となった動産等※2の価額のうちに当該動産等について被害を受けた部分の価額の占める割合が10分の1以上であること
のいずれかに該当する場合です。
なお、減免措置は「申告期限前に被害を受けた場合」と「申告期限後に被害を受けた場合」で内容が異なります。
最後に
今回は、災害減免法の対象や計算方法などについて詳しく解説しました。
災害減免法は、災害によって住宅や家財に損害を受けたときに適用できる税額控除の一つです。
その年の所得金額に応じて
- 500万円以下: 全額免除
- 500万円超750万円以下:2分の1の軽減
- 750万円超1,000万円以下:4分の1の軽減
の所得税及び復興特別所得税の軽減額を受けることができます。
ただし、雑損控除と併用はできず、盗難や横領による損害も対象外です。
所得金額や損害額によっては、雑損控除を適用したほうが税金の負担額が小さくなることも多いので比較することをおすすめします。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。
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