税金の知識

生命保険の解約返戻金に税金はかかるの?所得税と贈与税に注意しよう

生命保険を解約期間の途中に解約した。

そんなとき、生命保険の種類によっては解約返戻金を受け取れます。

解約返戻金は、生命保険を解約したときに受け取れるお金であり、大きく分けて3つの種類があります。

生命保険の解約返戻金の種類
従来型 保険料の支払い額に応じて解約返戻率が増えていくタイプです。終身保険や養老保険などで採用されています。長期に渡って継続することで解約返戻率が上がるメリットがあります。
低解約返戻金型 従来型と比べて解約返戻金が約70%程度少ないタイプです。従来型と同様、終身保険や養老保険などで採用されています。保険料が従来型と比べて安く抑えられ、払期間満了後は解約返戻率が一気に上る特徴があります。
無解約返戻金型 解約返戻金がゼロであったり、ほとんどないタイプです。定期保険や収入保障保険など、いわゆる「掛け捨て」で採用されています。保険料を安く抑えられるメリットがあります。

さて、ここで気になってくるのが、生命会社から受け取った解約返戻金に対して税金がかかってくるのかどうかです。

この記事では、生命保険の解約に伴って受け取れる解約返戻金の税金について”いくらかかるか”など詳しくまとめていきます。

生命保険の解約返戻金に税金はかかるの?

先に言っておくと、生命保険の解約返戻金には税金がかかる可能性があります。

税金がかかるケースとしては、

  • 保険料の負担者と解約返戻金の受取人が違う
  • それまでに支払った保険料の総額よりも解約返戻金のほうが多い

のいずれかです。

保険料の負担者と解約返戻金の受取人が違う

保険料の負担者と解約返戻金の受取人が違う場合は、贈与税として税金がかかってくる可能性があります。

次は、国税庁のホームページで公表されている税金の種類の判別表です。

満期保険金等の課税関係の表
保険料の負担者 解約返戻金の受取人 税金の種類
A A 所得税
A B 贈与税

上記の表を見れば分かる通り、保険料の負担者と解約返戻金の受取人が同一人物かどうかで税金の種類が変わってきます。

芦屋会計
例えば、田中太郎さんが保険料の負担をして、田中花子さんが解約返戻金を受け取った場合は、贈与税の対象となります。

それまでに支払った保険料の総額よりも解約返戻金のほうが多い

保険料の負担者と解約返戻金の受取人が同一人物で税金の種類が所得税であった。

そのときは、それまでに支払った保険料の総額よりも解約返戻金のほうが多かった場合に税金がかかってくる可能性があります。

逆に言えば、これまで払ってきた保険料の総額より解約返戻金が少ない元本割れであれば、非課税扱いとなって税金がかかってくることはありません。

税金がかかるかどうかの判別
保険料の総額 > 解約返戻金 税金がかからない
(非課税)
保険料の総額 < 解約返戻金 税金がかかる

解約返戻金が保険料の総額を上回る例としては、終身保険で保険料払込期間が満了したり、貯蓄型保険で運用益が解約返戻金に上乗せされるケースなどがあります。

掛け捨て保険の場合は、基本的に今まで払い込んだ保険料の総額の方が多くなるので解約返戻金を受け取っても税金がかかってくるケースはほぼありません。

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例えば、これまで生命保険の保険料を総額700万円支払っていたが、解約により解約返戻金を800万円受け取った。

このときは、差額の利益である100万円(= 800万円 − 700万円)であることから所得税の対象となります。

生命保険の解約返戻金にかかる税金の計算

生命保険の解約返戻金が「所得税」または「贈与税」の対象である場合は、国が定める計算式によって税金の額を計算します。

芦屋会計
外貨・ドル建て生命保険では、円に換算して税金の計算を行います。

為替レートは、生命保険会社の「ご契約のしおり」などに記載されています。

所得税が課税されるときの計算方法

所得税の対象である場合は、さらに受け取り方法によって「一時所得」と「雑所得」に分けることが可能です。

一時所得

生命保険の解約返戻金を”一時金”で受け取った場合は、一時所得として課税されます。

一時所得は、解約返戻金から既に支払った保険料の掛け金を差し引き、さらに特別控除額50万円を差し引いた金額の1/2となります。

一時所得の計算式は、次のとおりです。

一時所得 =(解約返戻金 - 保険料の総額 - 50万円)× 1/2

例えば、保険料の支払い総額700万円、解約返戻金800万円の場合は、次のように計算できます。

一時所得 =(解約返戻金 - 保険料の総額 - 50万円)× 1/2 =(800万円 - 700万円 - 50万円) × 1/2 = 25万円

芦屋会計
一時所得には、50万円の特別控除があります。

そのため、生命保険の解約返戻金による利益が50万円以下であれば、税金はかからないということですね。

さらに税金の額を求める場合は、その他の所得(給与所得、事業所得、雑所得など)と合算してから課税所得を求めて、国税庁が公表する「所得税の速算表」に当てはめて計算することになります。

所得税の速算表
課税される所得金額
(課税所得)
税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 9万7,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 42万7,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 63万6,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 153万6,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円

例えば、給与所得438万円、一時所得25万円、基礎控除48万円、社会保険料控除86万円、配偶者控除38万円の場合は、課税所得は291万円(= 438万円 + 25万円 - 48万円 - 86万円 - 38万円)となります。

所得税の速算表に当てはめれば、所得税は19万3,500円(= 291万円 × 10% - 9万7,500円)と計算可能です。

雑所得

生命保険の解約返戻金を”年金”で受け取った場合は、雑所得として課税されます。

雑所得は、その年に受け取った年金の額からその年の年金の額に対応する保険料の掛け金を差し引いた金額となります。

雑所得の計算式は、次のとおりです。

雑所得 = その年に受け取った年金の額 - その年の年金の額に対応する保険料の掛け金

例えば、保険料の支払い総額900万円、解約返戻金1,000万円で10年間支給するとします。

その場合は、1年あたりの年金は100万円、その年の年金の額に対応する保険料の掛け金は90万円(= 900万円 ÷ 10年)であることから、雑所得は次のように計算できます。

雑所得 =その年に受け取った年金の額 - その年の年金の額に対応する保険料の掛け金 = 100万円 ÷ 90万円 = 10万円

なお、年金で受け取った場合は、原則として所得税が源泉徴収されます

贈与税が課税されるときの計算方法

贈与税の対象である場合は、次の計算方法により税金の額を計算できます。

贈与税の計算式は、次のとおりです。※税率および控除額は、一般贈与財産用に基づきます。

贈与税 =(解約返戻金 - 110万円)× 税率 - 控除額

例えば、解約返戻金800万円、税率40%、控除額125万円の場合は、次のように計算できます。

贈与税 =(解約返戻金 - 110万円)× 税率 - 控除額 =(800万円 - 110万円)× 40% - 125万円 = 151万円

なお、贈与税の税率および控除額は「一般贈与財産用」と「特例贈与財産用」で次のように定められています。

一般贈与財産用(一般税率)

次の一般贈与財産用の速算表は、兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子(未成年)などへの贈与に使用します。

一般贈与財産用の速算表
基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超 300万円以下 15% 10万円
300万円超 400万円以下 20% 25万円
400万円超 600万円以下 30% 65万円
600万円超 1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超 1,500万円以下 45% 175万円
1,500万円超 3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

※解約返戻金などの贈与の総額から基礎控除110万円を差し引いた金額を上記の速算表に当てはめます。

特例贈与財産用(特例税率)

次の特例贈与財産用の速算表は、直系尊属(祖父母や父母など)から20歳以上の者(子・孫など)への贈与に使用します。

課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超 300万円以下 15% 10万円
300万円超 400万円以下 20% 30万円
400万円超 600万円以下 30% 90万円
600万円超 1,000万円以下 40% 190万円
1,000万円超 1,500万円以下 45% 265万円
1,500万円超 3,000万円以下 50% 415万円
3,000万円超 55% 640万円

※解約返戻金などの贈与の総額から基礎控除110万円を差し引いた金額を上記の速算表に当てはめます。

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贈与税の計算では、これまで支払った保険料が考慮されません。

そのため、一時所得に対する所得税より高額になるケースが多く、生命保険に加入する際は注意しなければなりません。

生命保険の解約返戻金は確定申告が必要?

生命保険の解約返戻金を受け取った場合は、確定申告が必要となるケースがあります。

会社員で給与所得を受け取っている場合は、解約返戻金による「一時所得」と他の所得を合算した所得が20万円を超えると確定申告が必要です。

もし、確定申告の義務があるのにしていなかった場合は、本来納めるべき税金に加えて無申告加算税が請求される可能性があるので注意しましょう。

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芦屋会計
給与所得者でその他の所得が20万円以下であっても住民税の申告は必要となります。

最後に

生命保険の解約返戻金の税金については、負担者と受取人が”同一人物であるかどうか”で大きく変わってきます。

保険料の負担者と受取人が違っている場合は、贈与税扱いとなり高い税率が課せられるので注意しなければなりません。

それ以外であれば、解約返戻金からこれまでに支払った保険料の総額を差し引いた利益分に基づいて税額が計算されます。

特別控除額50万円を差し引いて、さらに1/2が課税対象となることから納めるべき税金の額は、少ないケースがほとんどです。

※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。

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