以前、当サイトでは、中小企業の経営安定化を目的とした倒産防止共済(経営セーフティ共済)を紹介しました。
取引先が倒産するなど”不測の事態”が発生したときに無担保・保証人なしで短期間でお金を借りることができる心強い共済です。
それだけでなく、
- 毎月20万円(年間240万円)の掛金を全額損金算入できる
- 40ヶ月(3年4ヶ月)以上納めると掛金の全額が戻る
といった特徴から上手く活用することで大きな節税効果を得ることができます。
しかしながら、経営環境の変化により倒産防止共済の掛金の支払いが重みになることもあるでしょう。
そんなときは、倒産防止共済の掛金の見直しをオススメします。
倒産防止共済の掛金は減額できる
先に言っておくと、倒産防止共済の掛金は減額することも可能です。
毎月の掛金は、
- 5,000円〜20万円
の範囲で”5,000円単位”で設定することができます。
要件
倒産防止共済の運営元である中小機構のホームページでは、掛金の減額について以下の要件が掲げられています。
次の条件のいずれかに該当する場合のみ、掛金月額を減額できます。
- 共済契約者の事業規模が縮小された場合
- 事業経営の著しい悪化、病気または怪我、急な費用の支出などにより掛金の払込みの継続が著しく困難である場合
- 借入金の貸付残高と掛金総額の10倍に相当する額との合計額が8,000万円に達している場合
出典:中小機構「掛金の増額/減額」
将来的な設備投資の資金を確保したいなど、成長戦略による掛金の減額であっても一度申請をしてみましょう。
手続き
倒産防止共済の掛金の減額をしたい場合は、
- 登録取扱機関の団体
- 金融機関の窓口
のいずれかに所定の書類「掛金月額変更申込書(様式 中 210)」を提出しなければなりません。
申し込み期限としては、掛金の減額をしたい月の5日まで(土曜・日曜・祝日の場合は翌営業日)に中小機構に書類が届くようにする必要があります。
書類を5日に提出しても、中小機構に届くのが6日以降になってしまったら、掛金の減額は翌月となっていまうので注意しましょう。
そんなときは、少なくとも8月5日の数日前まで(7月末までが確実)に書類を提出する必要があります。
倒産防止共済の掛金を払い止めすることもできる
倒産防止共済の掛金は、毎月5,000円まで減額することができます。
しかし、それでも尚支払いが厳しい場合は、掛金の払い止め(=掛金の支払いの中止)をすることも可能です。
要件
倒産防止共済の掛金の払い止めをしたい場合は、一定の要件を満たす必要があります。
掛止めは、掛金総額が掛金月額の40倍に達している場合に可能です。
出典:中小機構「掛金の掛止め/払込み再開」
要は「最低40ヶ月間は支払ってください」という意味です。
手続き
倒産防止共済の掛金の払い止めをしたい場合は、
- 登録取扱機関の団体
- 金融機関の窓口
のいずれかに所定の書類「掛金納付掛止届出書(様式 中 211)」を提出しなければなりません。
※1年以上にわたって掛金の払い止めをしている場合は「掛金預金口座振替申出書(変更用)(様式 中 105)」も提出する必要があります。
申し込み期限としては、掛金の払い止めをしたい月の5日まで(土曜・日曜・祝日の場合は翌営業日)に中小機構に書類が届くようにする必要があります。
書類を5日に提出しても、中小機構に届くのが6日以降になってしまったら、掛金の減額は翌月となっていまうので注意しましょう。
そんなときは、少なくとも8月5日の数日前まで(7月末までが確実)に書類を提出する必要があります。
なお、同様の手順で掛金の払い込みを再開することが可能です。
倒産防止共済の掛金を滞納すると強制解約もある
倒産防止共済の掛金の支払いが厳しいという理由で12ヶ月以上の滞納をしていると「機構解約」として契約が強制的に解約されます。
機構解約に該当した場合でも、解約手当金(解約返戻金)を受け取ることは可能です。
しかし、通常の任意解約と比べて、5%も受け取れる金額が減ってしまうデメリットがあります。
掛金納付月数 | 任意解約 | みなし解約 | 機構解約 |
---|---|---|---|
1か月~11か月 | 0% | 0% | 0% |
12か月~23か月 | 80% | 85% | 75% |
24か月~29か月 | 85% | 90% | 80% |
30か月~35か月 | 90% | 95% | 85% |
36か月~39か月 | 95% | 100% | 90% |
40か月以上 | 100% | 100% | 95% |
しかし、資金難により掛金の支払いを無視し続けて、12ヶ月間経過した時点で「機構解約」により強制的に解約させられた。
このとき、本来、解約手当金を500万円受け取れていたはずが、5%減額されて475万円になってしまいます。
倒産防止共済の掛金の負担が大きいと感じた時点で正規の手順で減額の手続きをすることを強くおすすめします。
最後に
倒産防止共済を上手く活用すれば、税金の負担を減らすことができます。
しかし、当初は掛金を問題なく拠出できていても、経営環境の悪化や新規事業の投資、新型コロナウイルス感染症の影響などによるキャッシュフロー悪化により掛金の支払いが厳しくなることがあります。
そんなときは、倒産防止共済の掛金減額を積極的に活用しましょう。
所定の書類を提出することで最短で当月の支払いから減額を受け付けてもらえます。
また、倒産防止共済の支払額を少しでも減らしたい場合は、1年間の掛金を一括で支払う「前納」を活用しましょう。
少額ではありますが、前納減額金としてお金が少し戻ってきます。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。