税金の知識

【新型コロナ】売上減少で固定資産税・都市計画税の全額免除を発表

原則2021年2月1日をもって市町村による申請受付は、終了しています。

新型コロナウイルス感染症の拡大による経済への影響が深刻化しています。

店舗の休業や客足減少など、厳しい経営環境を余儀なくされる事業者が増える中、令和2年4月20日「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置(案)」が閣議決定されました。

この中には、中小事業者の保有する設備や建物等の固定資産税・都市計画税の免除が含まれており、対象になれば税金の負担を大幅に減らせます。

この記事では、新型コロナウイルス感染症の緊急経済対策の一つである固定資産税・都市計画税の減免について解説します。

※新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置(案)が実施されるのは関連法案は成立した後になります。国会の審議によっては見送られたり内容が変更される可能性がありますので予めご了承ください。

新型コロナによる売上減少で固定資産税・都市計画税を免除

新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置(案)の「中小事業者等が所有する償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税等の軽減措置」の概要は、次のとおりです。

中小事業者等が所有する償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税等の軽減措置
対象事業者 ・中小事業者
・2020年2〜10⽉の任意の3ヶ⽉間の売上が前年同期比30%以上減少
減免率 ・前年同期⽐減少率が30%以上50%未満:1/2
・前年同期⽐減少率が50%以上:全額
減免対象 ・設備等の償却資産および事業⽤家屋に対する固定資産税
・事業⽤家屋に対する都市計画税
減免の対象年度 令和3年度課税の1年分

現時点では、事業者自身が2020年2〜10⽉から3ヶ月の期間を選択して前年同期で比較できるとされています。

例えば、2020年2〜10⽉で売上減少幅の大きかった「2020年4〜6月」と「2019年4〜6月」を比較できるということです。

固定資産税とは

今回、免除の対象となっている「固定資産税」とは、固定資産の所有者に課税される地方税を言います。

課税対象

課税対象となる「固定資産」は、次のとおりです。

固定資産税の課税対象一覧表
土地 宅地、田、畑、その他の土地を指します。
家屋 住家、店舗、工場、倉庫、その他の建物を指します。定着性、外気遮風性、用途性の3つの王権を満たす「登記簿に登録すべき建物」が該当します。
償却資産 事業のために用いることができる構築物、機械、工具、器具、備品等を指します。基本的には、税務会計上「減価償却の対象になる資産(耐用年数が1年以上、取得価額が10万円以上の資産)」が該当します。※取得価額が10万円以下であっても減価償却している場合は固定資産税の対象です。

償却資産

償却資産の具体例としては、

  • 構築物:舗装路面、庭園、門・塀・緑化施設等の外構工事、看板(広告塔等)、ゴルフ練習場設備、受変電設備、予備電源設備、その他建築設備、内装・内部造作など
  • 機械及び装置:各種製造設備等の機械及び装置、クレーン等建設機械、機械式駐車設備(ターンテーブルを含みます。)など
  • 船舶:ボート、釣船、漁船、遊覧船など
  • 航空機:飛行機、ヘリコプター、グライダーなど
  • 車両及び運搬具:大型特殊自動車(分類記号が「0、00~09、000~099」「9、90~99、900~999」の車両)など
  • 工具、器具および備品:パソコン、陳列ケース、看板(ネオンサイン等)、医療機器、測定工具、金型、理容及び美容機器、衝立など

となります。

※自動車税、軽自動車税の課税対象となるもの、無形減価償却資産、リース契約で借りている資産などは、償却資産の対象外となります。

芦屋会計
固定資産税は、土地や家屋だけでなく、事業用の機械、器具、備品なども対象になるということですね。

税率

固定資産税の税率は、標準税率1.4%となります。

計算式は、次のとおりです。

固定資産税の税額 = 課税標準 × 1.4%(標準税率)

ただ、固定資産税は、これから紹介する条件に当てはまった場合、軽減措置や免除を受けられる可能性があります。

土地

住宅用地(人が居住するための家屋の敷地として利用されている土地)であれば、固定資産税の住宅用地の特例を受けることが可能です。

住宅用地の軽減の割合は、次のとおりです。

固定資産税の住宅用地の特例
住宅用地の区分 固定資産税
小規模住宅用地
(200平方メートル以下の部分)
6分の1
一般住宅用地
(200平方メートルを超える部分)
3分の1
芦屋会計
例えば、住宅用地が300平方メートルで標準税率が1.4%であれば、

  • 小規模住宅用地(200平方メートル分):課税標準 × 1/6 × 1.4%
  • 一般住宅用地(100平方メートル分):課税標準 × 1/3 × 1.4%

となります。

なお、併用住宅(住居の一部を店舗・工場などで使用)の場合は、住宅部分の割合が1/4以上であれば固定資産税の軽減を受けることが可能です。

固定資産税の住宅用地の特例を受けられる「住宅用地の面積」は、次のように計算します。

住宅用地の面積 = 家屋の敷地面積 × 住宅用地の率

住宅用地の率は、住居割合によって決まってきます。

併用住宅における住宅用地の率
居住割合 住宅用地の率
地下4階建て以下 4分の1以上2分の1未満 0.5
2分の1以上 1.0
地下5階建て以上 4分の1以上2分の1未満 0.5
2分の1以上4分の3未満 0.75
4分の3以上 1.0
芦屋会計
例えば、2階建ての店舗併用住宅の敷地面積が500平方メートル、家屋の敷地面積が100平方メートル(店舗部分75平方メートル、住宅部分25平方メートル)の場合、

  • 居住割合:4分の1
  • 住宅用地の率:0.5
  • 住宅用地の面積:250平方メートル(= 500平方メートル × 0.5)

となります。

固定資産税の住宅用地の特例は、小規模住宅用地(200平方メートル分)は1/6、一般住宅用地(50平方メートル分)は1/3に適用されます。

償却資産

償却資産を保有している場合、毎年1月1日時点の内容を申告する必要があります。

ただ、償却資産の課税標準額が合計150万円(免税点)未満であれば、固定資産の課税はされません。

芦屋会計
償却資産の標準額は、国が定めた「耐用年数」「原価率」などにより計算され、時間と経過とともに価値が減少していきます。

そのため、償却資産の取得時の合計金額が150万円以上であっても一定期間が経過しているなら課税対象外となる可能性があります。

都市計画税

今回、免除の対象となっている「都市計画税」とは、原則として市街化区域内に所在する土地や家屋の所有者に課税される地方税を言います。

課税対象

都市計画税は「市街化区域」または「一部の市街化調整区域」に所在する土地や家屋が対象となります。

※償却資産は、都市計画税の対象外です。

都市計画税の課税対象となる地域
市街化区域 都市計画法に基づく都市計画区域の一つであり「すでに市街地を形成している区域」および「おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」と定義されています。
市街化調整区域 都市計画法に基づく都市計画区域の一つであり「市街化を抑制すべき区域」と定義されています。
芦屋会計
都市計画税は、土地や家屋の所在地によって課税の有無が異なってくるということですね。

税率

都市計画税の税率は、市町村によって定められており、最高0.3%となります。

計算式は、次のとおりです。

都市計画税の税額 = 課税標準 × 最高0.3%(制限税率)

ただ、都市計画税は、これから紹介する条件に当てはまった場合、軽減措置を受けられる可能性があります。

土地

住宅用地(人が居住するための家屋の敷地として利用されている土地)であれば、都市計画税の住宅用地の特例を受けることが可能です。

住宅用地の軽減の割合は、次のとおりです。

都市計画税の住宅用地の特例
住宅用地の区分 固定資産税
小規模住宅用地
(200平方メートル以下の部分)
3分の1
一般住宅用地
(200平方メートルを超える部分)
3分の2
芦屋会計
例えば、住宅用地が300平方メートルで制限税率が0.3%であれば、

  • 小規模住宅用地(200平方メートル分):課税標準 × 1/3 × 0.3%
  • 一般住宅用地(100平方メートル分):課税標準 × 2/3 × 0.3%

となります。

なお、併用住宅(住居の一部を店舗・工場などで使用)の場合、家屋の居住割合が4分の1以上であれば、住宅用地とみなされます。

最後に

新型コロナウイルス感染症の拡大により突然の休業を余儀なくされている事業者は多いでしょう。

そんなときに重くのしかかってくるのが土地や家屋などの所有者にかけられる「固定資産税」および「都市計画税」です。

記事執筆時点で新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置(案)の一つとして「中小事業者等が所有する償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税等の軽減措置」が検討されています。

中小事業者で「売上が前年同期比30%以上減少」といった要件に当てはまる場合は、税金の免除を受けられる可能性があるので活用してみましょう。

※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。

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