1月7日、日本でも出国税(正式名称:国際観光旅客税)の適用がスタートしました。
これからは、日本から出国するときに一律1,000円の税金が徴収されることになります。
つまり、海外旅行の回数や人数が多いほど、出国税の負担が大きくなってくるということです。
この記事では、出国税の基礎知識や徴収方法、免除要件、目的・使い道などを徹底解説しています。
目次
出国税とは
出国税とは、冒頭で説明したとおり、飛行機や船で日本を出国するときに課せられる税金です。
一部例外を除き、訪日観光客だけでなく、日本人であっても国籍を問わずに”一律1,000円”が徴収されます。
飛行機や船で国内旅行(例:大阪 → 沖縄など)をするときは徴収されません。
出国税が免除されるケース(例外)
ただし、次のケースに該当する場合は、出国税が免除されます。
- 2歳未満(1歳364日以下)の乳幼児
- 乗継旅客(日本入国後24時間以内に出国する者)
- 飛行機や船の乗員
- 天候などやむを得ない事情で日本に立ち寄った者
- 日本から出国したが、天候などやむを得ない事情で日本に帰ってきた者
- 政府専用機などで出国する者
- 日本に公用で派遣された外交官、領事館員など
- 強制退去者
※2019年1月6日より前に航空券を購入していた場合も免除の対象となります。ただし、1月7日以降に予定を変更した場合は、課税対象となるので注意が必要です。
なお、大手航空会社では、飛行機の搭乗をキャンセルした場合、キャンセル料を差し引いたあとに「燃油サーチャージ」「航空使用料」を含めて出国税も全額返金対応しています。
しかし、格安LCCの運賃種別やキャンペーンの航空券については、キャンセル・変更をしても、航空券以外の諸経費(出国税など)が返金されなかったり、高額なキャンセル料を払わないと返金されないケースがあるので注意が必要です。
出国税の徴収方法
出国税は、航空券、船舶券、ツアー代金などに上乗せされる方法で徴収されます。
そのため、「空港の窓口で1人あたり1,000円が請求される」なんてことはありません。
なお、プライベートジェットで日本を出国する場合は、利用者が搭乗するまでに税関に納付しなければなりません。
今回新たに課税される「出国税」は、その存在を知らなければ、全く気づかない人もいるかと思います。
出国税の目的・使い道
今回の出国税を導入による税収は約400〜500億円と見込まれています。
国土交通省観光庁の最新調査(2017年度)によると日本からの出国者数は約4658万人。
そのうち、外国人が約2869万人(約62%)、日本人が約1789万人(約38%)となっており、外国人から徴収する割合が高いことが分かります。
目的
出国税の目的については、国税庁ホームページを確認すると、
観光先進国実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図るための恒久的な財源を確保するため
と説明されています。
使い道
出国税の使い道について、政府では、
- ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備
- 我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化
- 地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上
の3分野を規定。
主にインバウンド観光客に向けた財源とするようです。
出国税は日本だけ?導入国を紹介
出国税は珍しい税金ではなく、すでに日本だけでなく海外でも導入している国が多くあります。
出国税のある国を一部紹介しましょう。
国 | 税額(現地通貨) | 税額(日本円) |
---|---|---|
日本 | 1,000円 | 1,000円 |
韓国 | 10,000ウォン | 約970円 |
香港 | 120香港ドル | 約1,660円 |
タイ | 700バーツ | 約2,380円 |
カンボジア | 25ドル | 約2,720円 |
オーストラリア | 60AUD | 約4,700円 |
イギリス | 13〜156ポンド ※距離とクラスによって違う |
約1,800〜21,256円 |
※2019年1月8日時点のレートです。
また、アメリカのようにビザなしで渡航する外国人に対して「電子渡航認証システム(ESTA)」の申請を義務付け、手数料として14ドル(約1,520円)を徴収している国もあります。
EU(欧州連合)でも2020年からヨーロッパ版ESTAとして「欧州渡航情報認証制度(ETIAS)」が導入される予定で、申請の義務化と手数料7ユーロ(約870円)がかかってきます。
2015年導入の富裕層向け「出国税」とは違う
2015年7月1日にも出国税(正式名称:国外転出時課税制度)が導入されていましたが、今回導入された一律1,000円の出国税(正式名称:国際観光旅客税)とは全くの別物です。
2015年の出国税は、海外に移住(1年以上の転勤・留学も含む)する”富裕層向け”の税金となっています。
具体的には、日本からの出国時、有価証券等(株式、投資信託、信用取引、デリバティブなど)の時価が1億円以上だった場合、その「含み益」に対して所得税(復興特別所得税含む)が課税されます。
国税庁のホームページでも次のように案内されています。
対象者 この制度の対象者は、次のイ及びロのいずれにも該当する方です。
イ 国外転出の時に所有等している対象資産の価額等(未決済信用取引等又は未決済デリバティブ取引については、決済をしたものとみなして算出した利益の額又は損失の額に相当する金額)の合計額が1億円以上であること。
ロ 原則として、国外転出をする日前10年以内において、国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年を超えていること。出典:国税庁
対象資産とは、次のとおりです。
対象資産 この制度の対象資産には、有価証券(株式や投資信託など)(※)、匿名組合契約の出資の持分、未決済の信用取引・発行日取引及び未決済のデリバティブ取引(先物取引、オプション取引など)が該当します。
(※) 株式を無償又は有利な価額により取得することができる権利を表示する一定の有価証券で国内源泉所得を生ずべきものを除きます。
上記を見ると分かるとおり、現行法においては、仮想通貨(ビットコイン、イーサリアム、バイナンスコイン、テザー、リップルなど)は、出国税の対象にはなっていません。
今後の税制改正により課税対象となる可能性もありますが、仮想通貨が無課税の国に移住すれば、仮想通貨の売却益に税金がかからないことになります。
※海外への移住しても生活の拠点が日本国内であれば、日本の税法が適用される可能性があるので注意が必要です。
最後に
日本からの出国時に1人1,000円が徴収される”出国税”
国税としては1992年の地価税以来、27年ぶりの新税であり、海外旅行をする際は、誰にでも影響してくる税金になります。
出国税を財源とした観光客向けの環境整備についても、国民一人ひとりが注目していきたいところです。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。
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