個人事業主(フリーランス)の方は、税金周りのことを税理士に依頼するか迷っている方も多いでのはないでしょうか?
個人事業主になるとお金を稼ぐための事業だけでなく、税金を納めるための経理業務も必要になってきます。
経理業務は、法律で義務付けられている「確定申告」を行うための業務であり、一定のルールに基づいて日々の取引内容を記録していかなければなりません。
日本の税制は、世界銀行「Doing Business 2018」の納税項目で第68位となっているとおり、世界と比較しても複雑極まりないものとなっています。
税制が複雑な理由としては、
- 毎年のように変更される税制
- 複数の選択肢がある期間限定の減税・特例措置
- 複雑な税制の「抜け穴」を塞ぐための規制
などがあり、一般人が理解するには非常に困難です。
そのため、取引件数が増えていくにつれて間違えやミスの可能性が高まったり、税制の特例措置を把握しきれずに無駄な税金を支払うことにも繋がります。
そこでこの記事では、税理士に確定申告を依頼するメリットや依頼できる時期についてまとめてみました。
目次
確定申告とは
まずは、個人事業主(フリーランス)に年1回の義務がある確定申告についておさらいしましょう。
確定申告とは、国に税金を納めるために自身で所得金額を計算して税務署に申告する制度です。
具体的には、
- 毎年1月1日から12月31日の期間に発生した所得や経費から所得税を計算して税務署に提出する一連の流れ
を言います。
必要な人
専業で個人事業主、フリーランスとして収入を得ている場合は、所得が48万円以上を超えると確定申告が必要となります。
これは「確定申告をする必要のある人の要件」として、次のように明記されているからです。
その年分の所得金額の合計額が所得控除の合計額を超える場合
出典:国税庁
所得控除とは、一定の要件にあてはまった場合に所得金額の合計額から差し引ける控除です。
基礎控除、給与所得控除、社会保険料控除、扶養控除、配偶者控除、医療費控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除などが該当します。
この中でも基礎控除は、すべての納税義務者が一律で48万円を差し引くことが可能です。
そのため、所得金額の合計額が48万円以下であれば、課税所得は0円となり、確定申告はしなくても良いとされています。
その他、サラリーマンや年金受給者でも確定申告が必要になるケースがあるので注意しましょう。
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類がある
個人事業主(フリーランス)が税制面の優遇を受けるために知っておきたいことは、確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類がある点です。
次の青色申告と白色申告の比較表を見てください。
白色申告 | 青色申告 (10万円控除) |
青色申告 (最大65万円控除) |
|
---|---|---|---|
特別控除 | なし | 10万円 | 55万円 (e-Taxまたは電子帳簿保存は55万円) |
届出 | 不要 | 必要 | 必要 |
記帳 | 単式簿記 | 単式簿記 | 複式簿記 |
専従者給与の経費計上 | なし | 全額経費 | 全額経費 |
事業専従者控除 | 配偶者:86万円 専従者:50万円/人 |
なし | なし |
貸倒引当金 | なし | あり | あり |
減価償却の特例 | なし | あり | あり |
赤字の繰越 | なし | あり | あり |
※白色申告の事業専従者控除は、事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額のほうが低い場合は、そちらが適用されます。また、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除と併用は不可です。
上記の比較表を見ると、青色申告を選択することで最大65万円の特別控除を受けられることが分かります。
これにより
- 基礎控除:48万円
- 青色申告特別控除:65万円
の合計113万円の控除額が可能です。
また、青色申告を選択することで特別控除65万円以外にも次の特典を受けることができます。
専従者給与の経費計上 | 青色申告者と生計を一にしている配偶者や親族(15歳以上)に支払っている給与を必要経費に算入することができます。 |
---|---|
貸倒引当金 | 事業所得で事業を営んでいる青色申告者は、その事業で生じた貸金(売掛金、貸付金など)の貸倒れによる損失の見込額として、年末における貸金の帳簿価額の合計額の5.5%以下(金融業は3.3%)を必要経費にできます。 |
減価償却の特例 | 減価償却資産の取得価額が30万円以下の場合、年間300万円以内まで一括償却できます。 |
赤字の繰越 | 事業所得などで赤字になった場合は、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年の所得金額から控除できます。 |
青色申告特別控除65万円を受けるための条件
確定申告で「青色申告」を選択することで税制面の優遇を受けられることが分かりました。
しかし、青色申告特別控除65万円を受けるためには、
- 事業開始時に「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」を提出する
- 日々の取引内容を「複式簿記」で記帳する
- 確定申告書に「貸借対照表」と「損益計算書」を添付する
- e-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存をする
といった条件をクリアする必要があります。
事業開始時の「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」の提出については、必要事項を所轄税務署に提出するだけなので難しいことではありません。
しかし、複式簿記では、取引を「借方(かりかた)」と「貸方(かしかた)」という形で左右に分けて表す必要があり、専門的な知識が求められます。
例えば、ノートパソコン8万円をクレジットカードで購入した場合は、次のように仕訳をしなければなりません。
借方 | 貸方 |
---|---|
消耗品費 8万円 | 未払金 8万円 |
未払金 8万円 | 普通預金 8万円 |
その他にも
- 事業の財務状況を把握できる”貸借対照表”
- 事業の経営状況を把握できる”損益計算書”
も合わせて作成・提出する必要があります。
しかし、最近は、便利な会計ソフトが登場したことから取引内容を入力するだけで「複式簿記による記帳」「貸借対照表・損益計算書の作成」ができるようになっています。
そのため、事業で一定の収入があるのであれば、青色申告で確定申告書を作成することをオススメします。
税理士に確定申告を依頼するメリット
ここからは、税理士に確定申告を依頼するメリットを解説します。
本業に集中できる
税理士に確定申告を依頼できるメリットは、経理業務の負担を減らして本業に集中できる点です。
先ほどお伝えしたとおり、確定申告の作成は、会計ソフトのやり方を覚えてしまえば、そこまで難しい作業ではありません。
しかし、確定申告を作成するには、
- 証票書類(レシート、領収書など)を分類・整理する
- 会計ソフトに証票書類の内容を「勘定科目」に分類しながら仕訳・入力する
といった日々の取引内容の記帳は欠かすことはできず、取引件数が多くなれば、それだけ時間のかかる作業となります。
会計ソフトで銀行口座やクレジットカードを同期させることができれば、ある程度手間を省くことができますが、現金のやり取りが多い場合は、請求書や領収書を確認しながら手作業で入力しなければなりません。
税理士に「確定申告書の作成」と「記帳代行」を依頼すれば、煩わしい経理業務を丸投げすることができ、その分をより生産性の高い業務に割くことができます。
節税対策で税金の負担が軽減できる
日本では所得が高ければ高いほど税率も上がっていく累進課税を採用しています。
次は、国税庁ホームページが公表している所得税の税率です。
課税される所得金額 (課税所得) |
税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
フリーランスで所得が少ないうちは問題ありませんが、課税所得が増えると重い税負担になることが分かります。
所得税 = 課税所得 × 税率 – 税額控除額 = 1000万円 × 33% – 153万6,000円 = 176万4,000円
さらに上記の所得税に加えて、住民税が約10%かかってきます。
このように税金の負担が増えてきたときに頼りになるのが税理士です。
一応、税金のことに関しては税務署に無料&匿名で電話相談することもできますが、一般的な手続きの方法しか教えてくれません。
例え、大幅に節税できる余地があっても税務署から「こうすれば、もっと税金を抑えることができますよ。」教えてくれることはないのです。
そのため、具体的な節税方法を聞きたいのであれば、税理士に相談することが一番となります。
節税のアドバイスを受けられるだけでなく、これまで経費にしていなかった部分を経費とすることで毎年の節税効果を期待できます。
税務周りの業務に加えて、
- 融資相談
- 会社設立支援サービス
- 経営コンサルティング
なども依頼することが可能です。
税理士に確定申告を依頼できる時期はいつまで?
原則、確定申告の締め切り時期は、毎年3月15日(郵便局窓口なら消印有効扱い可能)です。
そのため、税理士に依頼するときも確定申告の締め切り日までに問い合わせる必要があります。
しかし「日頃から確定申告に向けて取引内容を記帳したほうが良いと分かっていても、気がづいたたら提出期限ギリギリになっている。」という方は多いのではないでしょうか?
実際、確定申告の締め切り時期直前でも依頼することはできるのでしょうか?
確定申告時期に近づくほど依頼が難しくなる
結論を言っておくと、その税理士事務所のキャパシティによっては、確定申告の依頼を断られることがあります。
一般的に税理士は、年末調整や確定申告などの業務が集中する12月から3月半までが繁忙期です。
そのため、税理士に確定申告を依頼する場合、12月以降から確定申告の締め切り日に近づくにつれて断れられる可能性が高まっていくことになります。
また、確定申告直前(1〜3日前)の場合は、締め切り日を過ぎてから提出する「期限後申告扱い」になるケースが高くなります。
「税理士に確定申告を依頼したいけど、なかなか見つからない・・・」という状況にならないためにも余裕を持って相談してみることをおすすめします。
税理士に無料相談しよう
税理士に確定申告を依頼するかどうか迷っているなら無料相談を活用しましょう。
多くの税理士事務所では、無料相談を受け付けています。
税理士に依頼することで「どのような業務を減らせるか」「どのくらい節税ができるか」など知ることができるでしょう。
もちろん、現時点で税理士に依頼した場合の費用対効果が薄ければ、断ることもできます。
また、業績が上向いて忙しくなったときのために税理士に依頼する手段を頭に入れておくと良いでしょう。
当事務所では、大阪、神戸、京都エリアで無料相談を受け付けています。
確定申告だけでなく、最近の税制を活用した節税対策、銀行融資に有利な決算書の作成など、税務に関することならお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。