法人税

NPO法人の法人税は?収益事業は課税対象になる

経営者にとって馴染み深い税金の一つに法人税があります。

法人税とは、法人が事業活動によって収益(=所得)を得たときに課税される税金です。

通常、法人税の納税義務が発生するのは、普通法人と協同組合等です。

法人税が課される法人一覧
普通法人 株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、医療法人、相互会社、企業組合、一般社団法人、一般財団法人など
協同組合等 農業協同組合(農協、JA)、漁業協同組合(漁協、JF)、森林組合、生活協同組合(生協)、事業協同組合、信用金庫、労働金庫など

この記事で詳しく解説するNPO法人については、法人税法上の「公益法人等」に該当します。

公益法人等は、公益を目的とする事業を行う法人であり、法人税法第4条第2項の規定により”公益事業”については法人税が非課税(免除)となっています。

この記事では、NPO法人の法人税の納税義務について詳しく解説していきます。

NPO法人とは

まずは、NPO法人について簡単におさらいしましょう。

NPO法人(特定非営利活動法人)とは、特定非営利活動促進法に基づいて設立された法人であり、次のような目的が定義されています。

ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与することを目的とする。

要件

NPO法人は、特定非営利活動(不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与すること)を行うことを主な目的として、次の要件を満たしている必要があります。

  1. 営利や特定の公職の候補者若しくは公職にある者又は政党を推薦、支持、反対することを目的としないこと
  2. 宗教活動や政治活動を主目的としないこと
  3. 特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として事業を行わないこと。特定の政党のために利用しないこと
  4. 特定非営利活動に係る事業に支障が生じるほどその他の事業を行わないこと。その他の事業の会計については、特定非営利活動に係る事業の会計から区分して経理することが必要であり、その利益は、特定非営利活動に係る事業に充てること
  5. 暴力団、暴力団又は暴力団の構成員若しくはその構成員でなくなった日から5年を経過しない者の統制下にある団体でないこと
  6. 社員の資格の得喪について、不当な条件をつけないこと
  7. 10人以上の社員を有すること。また、報酬を受ける役員数が役員総数の1/3以下であること(そのうち理事3人以上、監事1人以上を置き、それぞれの定数の2/3以上いること)
  8. 役員は、法第20条に規定する欠格事由に該当しないこと
  9. 各役員について、その配偶者若しくは三親等以内の親族が2人以上いないこと。また、当該役員並びにその配偶者及び三親等以内の親族が、役員総数の1/3を超えて含まれていないこと
  10. 会計は、正規の簿記の原則に従って行うこと

参考:東京都生活文化局「定義と要件」

芦屋会計
NPO法人として認められるには、さまざまな要件を満たす必要があるということですね。

特に営利や特定の個人・団体の利益を目的として事業を行ってはいけない点は、株式会社や合同会社といった法人とは大きく違うところとなります。

収益事業も認められる

NPO法人は、特定非営利活動を主たる目的としなければなりません。

しかし、NPO法人であっても特定非営利活動を継続するためには”活動資金”が必要であり、そのための収益事業は認められています。

実際、内閣府が実施した「平成26年度特定非営利活動法人及び市民の社会貢献に関する実態調査」によれば、NPO法人の財源は、会費6.1%、寄付金11.1%、補助金・助成金17.3%、事業収益63.6%となっており、収益事業で支えられていることが分かります。

もちろん、一般の株式会社と違って

  • 収益事業の規模は全体の50%以下に抑えること
  • 収益事業で儲けた利益は「特定非営利活動(NPOの事業)」の活動資金に充てること

などの制約は存在します。

芦屋会計
NPO法人と言えば「儲けてはいけない」というイメージがありますが、持続的な特定非営利活動をするために利益を上げても問題ありません。

また、NPO法人は、ボランティアだけではく、スタッフを雇って給与を出して「特定非営利活動」をしてもらうことも可能です。

ただし、役員報酬を支給できるのは「役員総数の3分の1」までと定められているので注意をしましょう。

NPO法人で役員報酬を支給できるのは「役員総数の3分の1」まで

NPO法人の事業は「非収益事業」と「収益事業」に分類できる

先ほど、NPO法人は、活動資金を得ることを目的に「収益事業」も行えると解説しました。

NPO法人で収益事業を行った場合は、法人税法上の「非収益事業」と「収益事業」で税金の扱いが大きく違ってくるので注意しなければなりません。

次は、NPO法人における4つの区分経理となります。

法人税法(税制度)
非収益事業 収益事業
NPO法(法人制度) 特定非営利活動に係る事業 非課税 課税
その他の事業 非課税 課税
芦屋会計
上記の表から

  • 非収益事業 → 非課税対象
  • 収益事業 → 課税対象

ということが分かります。

では、非収益事業と収益事業について、具体的にどのようなケースが当てはまるのでしょうか?見ていきましょう。

非収益事業

NPO法人における非収益事業とは、特定非営利活動促進法第2条で定義される「不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするもの」が該当します。

具体的には、次の20分野の活動となります。

  1. 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
  2. 社会教育の推進を図る活動
  3. まちづくりの推進を図る活動
  4. 観光の振興を図る活動
  5. 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
  6. 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
  7. 環境の保全を図る活動
  8. 災害救援活動
  9. 地域安全活動
  10. 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
  11. 国際協力の活動
  12. 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
  13. 子どもの健全育成を図る活動
  14. 情報化社会の発展を図る活動
  15. 科学技術の振興を図る活動
  16. 経済活動の活性化を図る活動
  17. 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
  18. 消費者の保護を図る活動
  19. 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
  20. 前各号で掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

収益事業

NPO法人における収益事業とは、法人税法第2条十三で定義される「販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるもの」が該当します。

具体的には、

  • 政令で定める事業
  • 継続して行われる規模であること
  • 事業場を設けて行われる規模であること

の3つの要件に当てはまれば、原則収益事業として扱われることから法人税申告が必要です。

政令で定める事業とは、法人税法施行令第5条で定められる34の事業となります。

政令で定める34の収益事業
物品販売 不動産販売 金銭貸付業 物品貸付業 不動産貸付業
製造業 通信業 運送業 倉庫業 請負業
印刷業 出版業 写真業 席貸業 旅館業
飲食店業その他の飲食店業 周旋業 代理業 仲立業 問屋業
鉱業 土石採取業 浴場業 理容業 美容業
興行業 遊技所業 人材派遣業 遊覧所業 医療保健業
一定の技芸教授業等 駐車場業 信用保証業 無体財産権の提供等を行う事業

上記のうち「一定の技芸教授業等」については、

  1. 技芸の教授
  2. 学力の教授
  3. 公開模擬学力試験

が該当します。

(1)枝芸の教授の「枝芸」については、次のものが当てはまります。

枝芸の分野一覧
洋裁 和裁 着物着付け 編物 手芸
料理 理容 美容 茶道 生花
演劇 演芸 舞踊 舞踏 音楽
絵画 書道 写真 工芸 デザイン
自動車操縦 小型船舶操縦
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NPO法人の収益事業における法人税率は、普通法人と同じ15%(年間所得800万円超の部分は23.2%)です。

また、法人住民税均等割分については、収益事業の有無にかからわず原則として年間7~9万円かかります。

ただし、自治体によっては、減免・免除するケースも多いことから確認してみましょう。

例外措置

ただし、上記であげた収益事業に該当していても例外的に非課税となるケースもあります。

それは、法人税法施行令第5条第2項で定義される「その事業に従事する次に掲げる者がその事業に従事する者の総数の半数以上を占め、かつ、その事業がこれらの者の生活の保護に寄与しているもの」に該当したときです。

適用対象となる者は、

  • 身体障害者福祉法 第四条 (身体障害者の意義)に規定する身体障害者
  • 生活保護法 の規定により生活扶助を受ける者
  • 児童相談所、知的障害者福祉法 第九条第五項 (更生援護の実施者)に規定する知的障害者更生相談所、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 第六条第一項 (精神保健福祉センター)に規定する精神保健福祉センター又は精神保健指定医により知的障害者として判定された者
  • 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第四十五条第二項 (精神障害者保健福祉手帳の交付)の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者
  • 年齢六十五歳以上の者
  • 母子及び寡婦福祉法 第六条第一項 (定義)に規定する配偶者のない女子であつて民法 第八百七十七条 (扶養義務者)の規定により現に母子及び寡婦福祉法第六条第二項 に規定する児童を扶養しているもの又は同条第三項 に規定する寡婦

となります。

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つまり、その事業に従事する者の半数以上が「身体障害者」「生活保護者」「65歳以上のもの」「寡婦」などであれば、法人税法上の収益事業には該当しないということです。

最後に

今回は、NPO法人(特定非営利活動法人)の法人税について解説しました。

NPO法人の法人税については、

  • 非収益事業 → 非課税
  • 収益事業 → 課税

となっています。

そのため、NPO法人として事業を行うときは「収益事業の対象となる34業種に該当するのか?」をしっかりと判断しなければなりません。

しかしながら、NPO法人は一般企業とは違う特殊なルールがあることから一つ一つ判断するのは難しいものがあります。

もし、法人税のかからない非収益事業として扱えるにも関わらず、収益事業と判断していれば無駄に税金を支払うことにも繋がりかねません。

NPO法人の優遇制度をフル活用するためにも専門家に相談されることをおすすめします。

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