法人税

法人税の中間申告・中間納付とは?予定申告と仮決算の違いなど

会社経営をしている方にとって馴染み深い税金の一つである”法人税”

法人税とは、株式会社や合同会社などの法人が事業活動によって収益(=所得)を得たときに課税される税金です。

通常、法人税の納税期限は、

  • 事業年度終了の日の翌日から2か月以内(例:3月決算であれば5月31日まで)

となります。

しかし、前年の法人税の納付税額が一定金額以上になると、中間申告・中間納税の義務が生じてきます。

この記事では、法人税の中間申告・中間納税がいくらから義務になるのか?など、分かりやすく解説します。

法人税の中間申告とは

法人税の中間申告とは、簡単に言うと法人税の一部を前払いすることです。

通常、法人税の支払いは、確定申告により税額を計算して行いますが、中間申告では前年の実績や仮決算から”法人税の概算”を計算して、年の途中で一部の法人税を前払いすることになります。

そして、その期の法人税が確定したら不足分を支払って精算をします。

もし、中間申告のときに法人税を払いすぎていた場合は、還付を受けることも可能です。

対象法人

法人税の中間申告は、前事業年度の法人税額が20万円を超える法人が対象になります。

言い換えれば、前事業年度が赤字だったり、法人税額が20万円以下であれば、法人税の中間申告は必要ありません。

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一方、法人税の課税対象外の法人(公共法人、公益法人、人格のない社団など)は、法人税の納税義務がないことから中間申告の対象外です。

会社設立初年度は対象外

会社設立初年度については、前事業年度が存在しないことから法人税の中間申告の対象外です。

ただし、会社を合併した場合であれば、1期目の事業年度であっても法人税の中間申告の義務が発生することになります。

中間申告の回数

法人税の中間申告の回数は、前事業年度の法人税額に関係なく年1回です。

中間納付の期間

法人税の中間納付には、納付期間が定められています。

納付期間は、

  • 事業年度開始の日以後6ヶ月を経過した日から2ヶ月以内

です。

例えば、3月決算であれば、9月1日から11月月末が中間申告の提出および納付期限となります。

還付金

中間申告で払いすぎた法人税は、確定申告時に精算されて”還付金”として戻ってきます。

還付金の計算式は、次のようになります。

還付金 = 確定申告において納付する法人税額 − 中間納付税額の合計

例えば、中間納付額の合計が100万円であったが、確定申告時に法人税の納付額が90万円となった場合は、次のようになります。

還付金 = 確定申告において納付する法人税額 − 中間納付税額の合計 = 90万円 − 100万円 = − 10万円

芦屋会計
確定申告により払い過ぎていた10万円が還付されます。

法人税の中間申告による納付額の計算方法は2種類

法人税の中間申告による納付額の計算方法は「予定申告方式」と「仮決算方式」の2種類があります。

どちらの計算方法を選択するかは、納税者が決めることができるので有利な方を選択しましょう。

予定申告方式

予定申告方式とは、前事業年度の法人税額をもとに中間納付額を計算する方法です。

基本的には、前事業年度の法人税額のおおよそ2分の1を納付することになり、法人税の納付額の具体的な計算方法は次のように規定されています。

前事業年度の確定申告書に記載すべき法人税額を当該前事業年度の月数で除し、これに6を乗じた金額

出典:国税庁

計算式は、次のとおりです。

法人税の中間納付額 = 前事業年度の確定法人税額 ÷ 前事業年度の月数 × 6

例えば、前事業年度の法人税額が100万円の場合は、法人税の中間納付額は次のように計算できます。

法人税の中間納付額 = 100万円 ÷ 12ヶ月 × 6 = 499,998円 → 499,900円(百円未満切り捨て)

仮決算申告方式

仮決算方式とは、事業年度開始から6ヶ月間の仮決算をして法人税の中間納付額を計算する方法です。

資金繰りが改善できる

仮決算方式は、仮決算をする分だけ手間がかかる方法です。

具体的には、上期6ヵ月分の

  • 法人税の申告書
  • 財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)
  • 勘定科目内訳明細書
  • 株主資本等変動計算書または社員資本等変動計算書

を作成しなければなりません。

ただ、前事業年度と比べて「売上高が下がった」「仕入高が増えた」といった場合は、中間納付税額を抑えることができる可能性があります。

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業績悪化に伴って資金繰りをシビアにしなければならない場合は、仮決算方式がおすすめです。

法人税の中間納付のよくある質問(Q&A)

ここからは、法人税の中間納付のよくある質問(Q&A)をご紹介していきます。

Q. 法人税の中間申告をしなかった場合、罰則はありますか?

A. 特に罰則(ペナルティ)は設けられていませんが、法人税法第73条が適用されることになります。

(中間申告書の提出がない場合の特例)

第73条 中間申告書を提出すべき内国法人である普通法人がその中間申告書をその提出期限までに提出しなかつた場合には、その普通法人については、その提出期限において、税務署長に対し第71条第1項各号(前期の実績による中間申告書の記載事項)に掲げる事項を記載した中間申告書の提出があつたものとみなして、この法律の規定を適用する。

つまり、期限までに法人税の中間申告をしなかった場合は、予定申告方式で中間申告するものとみなされます。

そして、税務署から中間納付税額が記載された「法人税予定申告のお知らせ」と「納付書」が送られてきます。

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法人税の中間申告をしない場合は、確定申告を提出しなかったような「無申告加算税」というペナルティは発生しません。

しかし、あとから仮決算方式の中間申告に変更することはできないので注意が必要となります。

Q. 法人税の中間納付が遅れた場合、罰則はありますか?

A. 延滞税を支払う義務が発生します。

延滞税とは、税金の納付遅れに対してかかる罰金のようなものです。

延滞税の税率は、毎年見直しがあります。

例えば、平成30年1月1日から令和元年12月31日は

  • 2ヶ月以内:2.6%
  • 2ヶ月超過:8.9%

となります。

延滞税について詳しくは、次の記事で解説しています。

税務調査の延滞税とは?計算方法と具体例・シュミレーション

Q、法人税の中間申告・中間納付の仕訳方法は?

法人税の中間申告・中間納付の仕訳方法は「予定申告方式」と「仮決算申告方式」のどちらを選択しても同じです。

例えば、中間申告の納税額が50万円、決算の納税額が120万円だった場合の仕訳は、次のとおりです。

1、中間申告

中間申告により納税額50万円を支払ったときの仕訳です。

中間申告の仕訳
借方勘定科目 借方 勘定科目 貸方
役員貸付金 500,000円 普通預金 498,000円

2、決算日

決算により法人税額が確定して、実際の納税は後日に行うときの仕訳です。

決算日の仕訳
借方勘定科目 借方 勘定科目 貸方
法人税等 1,200,000円 仮払法人税等
未払法人税等
500,000円
700,000円

3、差額の納税

未払いだった法人税等(決算で確定した納税額から中間申告で支払った納税額を差し引いた金額)を納税したときの仕訳です。

差額の納税の仕訳
借方勘定科目 借方 勘定科目 貸方
未払法人税等 700,000円 普通預金 700,000円

最後に

今回は、法人税の中間申告・中間納付について解説しました。

法人税の中間申告は、前事業年度の法人税額が20万円を超えると発生するため、どのような規模の法人でも対象となる可能性があります。

中間申告の計算方法には「予定申告方式」と「仮決算方式」の2種類があり、それぞれのメリットとデメリットを考慮して選択しなければなりません。

メリット デメリット
予定申告方式 ・中間申告の提出や手続きが簡単にできる。 ・その年の事業年度の上半期が赤字であっても前事業年度の法人税額の2分の1ほどの法人税を納める必要がある。
仮決算方式 ・仮決算が赤字であれば中間納付が大幅に安くなる。 ・確定申告と同様に各種書類を作成しなければならない。

基本的には、法人税の中間申告の手間がかからない予定申告方式がおすすめです。

しかし、前事業年度は黒字であったが、その年に大きな赤字が発生して資金繰りが苦しいのであれば、多少手間やコストが発生しても仮決算方式を選んだほうが良いでしょう。

※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。

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