法人税

法人税とは?税率や計算方法を解説

法人が負担する税金は、

  • 法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税

の3つに分類できます。

この中でも知っておきたいのが、皆さんも一度は耳にしたことがある”法人税“です。

法人税は、個人の所得に対して課税される”所得税”に相当する税金であり、法人の所得が増えるほど負担額が大きくなる特徴があります。

この記事では、法人税の税率や計算方法などについて詳しく解説します。

法人税とは

法人税とは、法人が事業活動によって収益(=所得)を得たときに課税される税金です。

国に収める国税であり、担税者(税を負担する人)と納税義務者(税金を納める人)が同じ直接税に分類されます。

法人税が課される法人

法人税の納税義務が発生するのは、普通法人と協同組合等になります。

法人税が課される法人一覧
普通法人 株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、医療法人、相互会社、企業組合、一般社団法人、一般財団法人など
協同組合等 農業協同組合(農協、JA)、漁業協同組合(漁協、JF)、森林組合、生活協同組合(生協)、事業協同組合、信用金庫、労働金庫など

一方、法人税の課税対象外となる法人としては、

  • 公共法人(地方公共団体、 地方住宅供給公社、土地開発公社、国民金融公庫、住宅金融公庫、国立大学法人、地方独立行政法人、日本年金機構、日本放送協会など)
  • 公益法人(社団法人、財団法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人、日本赤十字社、税理士会、弁護士会など)
  • 人格のない社団(学校のPTA、マンションの管理組合、研究会、労働組合など)

などが該当します。

※ただし、収益事業から生じた所得については、課税対象となる可能性があるので注意が必要です。

法人税の計算方法

先ほど解説したとおり、法人税とは、その年の法人の所得に対してかかる国税です。

次のように計算することができます。

法人所得税 = 課税所得 × 税率 – 所得税額控除

芦屋会計
所得税額控除には、利子等、配当等、給付補てん金、賞金などが該当します。

課税所得

法人税を算出するには「課税所得」を求めなければなりません。

次のように計算することができます。

課税所得 = 益金 – 損金

利益と所得は似て非なるもの

ここで細かい話になりますが、会社の「利益」と「所得」は全く同じではありません。

会社の儲けを知りたいとき

  • 財務会計では「収益 – 費用 = 利益」
  • 税務会計では「損益 – 損金 = 所得」

とそれぞれ計算しますが、目的が異なってくることから導き出される数値にもズレが生じてきます。

会計と税務の目的の違い
財務会計 外部の利害関係者(株主、金融機関、取引先など)に会社の経営成果や財務状況を報告することを目的に作成されます。
税務会計 国や地方自治体に税金の金額を報告することを目的に法人税法のルールに基づいて作成されます。

しかしながら、2つは重なる部分も多くあります。

そのため、財務会計で算出した「利益」に様々な調整を加えて、税務会計の「所得」を導き出していくのが一般的です。

具体的には、

  • 売上計上もれ
  • 減価償却費超過額
  • 交際費等の損金不算入額
  • 役員給与の損金不算入額
  • 受取配当等の益金不算入額
  • 貸倒損失認定損
  • 欠損金の繰越控除

といった項目に対して、利益に加算したり減産したりで調整していきます。

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財務会計の利益から所得を導き出すには、税務会計の知識が必要となってきます。

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税率

法人税の税率は、会社の種類と規模で決まります。

資本金の額が1億円以下の場合は、

  • 年間所得800万円以下
  • 年間所得800万円超

の2段階で税率が変わります。

税率は次のようになります。

法人税の税率一覧表
年間所得800万円以下の部分 年間所得800万円超の部分
中小法人 15%
※適用除外事業者は19%
23.2%
普通法人 23.2% 23.2%
協同組合等 15% 19%
公益法人等 15%
※一部の公益法人等は19%
23.2%
人格のない社団等 15% 23.2%
特定の医療法人 15%
※適用除外事業者は19%
19%

※記事執筆時点で令和4年4月1日以降の開始事業年度に適用される法人税率です。

中小法人

中小法人とは、出資金が1億円以下である法人等(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、一般社団法人、一般財団法人、医療法人など)を言います。

ただし、出資金が5億円以上ある法人等と完全支配関係がある法人等は除きます。

また、出資金が1億円以下であっても過去3年間の平均所得金額が15億円を超える事業者は、適用除外事業者としての扱いを受けて法人税率が上がります。

普通法人

普通法人とは、基本的には「中小法人」以外の法人等を言います。

協同組合等

協同組合等とは、組合員の相互補助を目的とする組合(農業協同組合、漁協共同組合、信用金庫など)を言います。

公益法人等

公益法人等とは、公益を目的とする法人(宗教法人、学校法人、公益社団法人、公益財団法人など)を言います。なお、公益法人等は、収益事業による所得のみ課税対象となります。

人格のない社団等

人格のない社団等とは、法人ではないが一定の目的を持った団体(マンションの管理組合、労働組合、町内会、学校のPTA、学術団体、研究会、政治団体など)を言います。

特定の医療法人

特定の医療法人とは、措法第67条の2第1項に規定する国税庁長官の認定を受けた公益性の高い医療行為を行う医療法人を言います。

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中小法人の税率については、個人の所得税の累進課税と同じく、超過部分に対して高い税率が課されます。

例えば、課税所得1,000万円(= 800万円 + 200万円)では、

  • 800万円(年間所得800万円以下の部分)× 19% = 152万円
  • 200万円(年間所得800万円超の部分)× 23.2% = 46万4,000円

とそれぞれ税率が違ってくることになります。

決して「1,000万円 × 23.2% = 232万円」と計算してはいけません。

所得税額控除

所得税額控除とは、法人税の税額をかけ合わせて算出された税額から直接差し引くことのできる控除です。

利子等 預貯金などの利子から源泉徴収された所得税等が控除の対象です。例えば、銀行から1万円の利子を受け取る場合は、所得税として15%の1,5000円が源泉徴収されます。所得税額控除では、この1,500円を法人税から控除できます。
配当金 合同運用信託の収益分配やみなし配当等から源泉徴収された所得税等が控除の対象です。
給付補てん金 銀行などの定期預金で預け入れた際に受け取れる給付補てん金(積立金と満期の日に受け取る給付金の差額)から源泉徴収された所得税等が控除の対象です。
賞金 賞金から源泉徴収された所得税等が控除の対象です。

※利子配当等に係る所得税等の額(公社債の利子、国外株式等の配当金等、利益の配当、剰余金の分配など)については、元本の所有期間に対応する部分の額のみが所得税額控除の対象となります。

法人税をシミュレーション

では、実際の数値に当てはめて法人税をシミュレーションしてみましょう。

条件は、

  • 資本金:3,000万円
  • 事業者の区分:中小法人
  • 事業開始年度:2021年3月31日まで
  • 益金:3,000万円
  • 損金:1,000万円
  • 配当金から源泉徴収された所得税等:1万円

とします。

1、課税所得を算出する

まずは、法人税の課税対象となる「課税対象」を算出します。

課税所得 = 益金 – 損金 = 3,000万円 – 1,000万円 = 2,000万円

2、法人税の税率を掛ける

続いて、課税対象に法人税の税率を掛けます。

中小法人の場合は「法人税の税率一覧表」から

  • 年間所得800万円以下の部分:15%
  • 年間所得800万円超の部分:23.2%

となります。

法人税 = 800万円 × 15% + 1200万円 + 23.2% = 120万円 + 278万4,000円 = 398万4,000円

3、所得税額控除を差し引く

最後に先ほど算出した法人税から「所得税額控除」を差し引きます。

今回のケースでは、配当金から源泉徴収された所得税等が該当します。

法人税 = 先ほど算出した法人税 – 所得税額控除 = 398万4,000万円 – 1万円 = 397万4,000円

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今回のケースでは、

  • 益金:3,000万円
  • 損金:1,000万円
  • 配当金から源泉徴収された所得税等:1万円

のときに397万4,000円の法人税がかかってくる結果になりました。

最後に

今回は、法人の儲けである所得にかかってくる法人税について詳しく解説しました。

資本金1億円以下の中小零細企業の場合、法人税の税率は2段階に設定されており、所得が800万円を超えると税率が上がってしまいます。

そのため、法人税の税率を低い水準に収めたいのであれば、

  • 役員報酬を適切に設定すること

が重要になります。

ただし、法人税を減らすために役員報酬を高く設定していくと、今度は、役員報酬の所得税や社会保険料などの負担が大きくなってしまうので注意が必要です。

役員報酬をいくらにすれば、「法人税と個人の税金・社会保険料の総支払金額が安くなるのか?」「節税対策でどのくらい税金が安くなるか?」をしっかりとシミュレーションするようにしましょう。

その他、年間240万円の掛金を全額損金算入できる倒産防止共済などを上手く活用すれば、大きな節税効果を発揮することも可能です。

倒産防止共済の節税効果は?年間240万円を全額損金できる

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