「役員報酬を受け取ってるけど、確定申告は必要なの?」
法人成りなどにより、今年度から役員報酬を受け取る方には、そんな疑問を持っている方も多いと思います。
確定申告とは、自身で所得金額を計算して、税金を支払う(または還付を受ける)ための手続きを言います。
役員報酬の確定申告を中心に源泉徴収や年末調整周りについても解説しています。
目次
役員報酬の区分・種別は”給与所得”となる
まず、知っていただきたいことは、
- 役員が受け取る”役員報酬”
- 従業員が受け取る”給与”
のどちらも税法上は給与所得として扱う点です。

ただし、個人事業主・フリーランスの「事業所得」と違って、事業に関わるもの全てを経費にすることはできません。
役員報酬を受け取ってるけど、確定申告は必要?
役員報酬で「確定申告が必要かどうか」は、
- 1ヶ所から給与所得を得ている
- 2ヶ所以上から給与所得を得ている
が1つの大きな基準となります。

1か所から給与所得を得ている
こちらは、基本的に確定申告が不要となります。
源泉徴収と年末調整で税金関連の手続きが完了
先ほどお伝えしたとおり、役員報酬は、あくまでも”給与所得”に分類されます。
そのため、サラリーマンの給与と同様、毎月の役員報酬から源泉徴収により”概算”の所得税等の税金が天引きされます。
そして、年末調整により
- 家族構成
- 生命保険の加入
- 住宅ローン
などによる各種控除(配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除、住宅借入金等特別控除など)を考慮して正確な税額を計算。
納付済みの税金との差額の返金や不足分の徴収を行い、ここで税金関連の手続きが完了します。

そのため、基本は、会社側で税金関係の申告をすべてやってくれるため、個人での確定申告は不要となります。
確定申告が必要となるケース
ただし、次の1〜6の条件に一つでも該当する場合は、会社で源泉徴収および年末調整を行っている場合であっても、例外的に確定申告が必要となります。
- 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
- 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
- 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
- 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
- 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
- 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人
出典:国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」

また、
- 医療費が年間10万円を超えた(医療費控除)
- 今年、住宅ローンを組んで自宅を購入した(2年目以降は年末調整の対象)
- 寄付やふるさと納税(ワンストップ特例を使用した場合は不要)をした
- 株式等の売買で損失が発生した
- 自宅等の不動産を売却して損失が発生した
- 空き巣などの盗難被害を受けた
といった場合は、義務こそありませんが、確定申告をすることで税金が還付される可能性があるので、是非とも活用しましょう。
2ヶ所以上から給与所得を得ている
こちらは、基本的に確定申告が必要になります。
例えば、
- サラリーマンの給与:年500万円(主たる給与)
- 会社役員の役員報酬:年120万円(従たる給与)
をそれぞれ得ている場合です。

従たる給与とは、それ以外の給与を言います。
確定申告が必要な理由
なぜ、2ヶ所以上から給与所得を得ている場合、確定申告が必要になってくるのでしょうか?
それは
- 給与の合計金額で源泉徴収されていない
- 年末調整は、1ヶ所の職場でしか受けられない
からです。
例えば、次の2ヶ所から給与(社会保険料等控除後)
- 給与:月額30万円(主たる給与)
- 役員報酬:月額10万円(従たる給与)
を得ているケースを考えてみましょう。
このとき、それぞれの給与(月30万円と月10万円)に応じた税率で源泉徴収が行われます。
月額 | 源泉徴収税額 |
---|---|
30万円 | 8,420円 |
10万円 | 4,770円 |
合計:13,190円
しかし、本来であれば、給与の総額である月額40万円に応じた税率で源泉徴収が行われるはずです。
月額 | 源泉徴収税額 |
---|---|
40万円 | 16,510円 |
合計:16,510円
これでは、1ヶ所から月額40万円の給与と得ている方と比べて、所得税が低くなってしまいます。
このような不公平をなくすために、2ヶ所以上から給与を得ている方は、確定申告により複数の会社で受け取っている”給与の総額”で納税金額を正しく算出する必要があるのです。
確定申告が不要となるケース
2ヶ所以上から給与所得を得ている場合でも、給与が一定額を下回った場合は、確定申告が不要になります。
具体的には、
- 「従たる給与」と「その他の所得(給与と退職金を除く)」の合計額が20万円以下
- 「給与から各所得控除(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外)を差し引いた金額が150万円以下」かつ「その他の所得(給与と退職金を除く)の合計額が20万円以下」
の場合は、例外的に確定申告が不要となります。
- 2か所以上から給与の支払を受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
(注) 給与所得の収入金額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下の人は、申告の必要はありません。出典:出典:国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」

- 役員報酬:年200万円(主たる給与)
- 給与:年20万円(従たる給与)
- 雑所得:年15万円
- 各所得控除(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外):80万円
のケースを考えてみます。
「従たる給与」と「その他の所得(雑所得)」の合計額は35万円(>20万円)となるので、原則、確定申告は必要になります。
しかし、給与220万円(=200万円 + 20万円)から各種控除80万円を差し引くと140万円(≦150万円)
なおかつ、その他の所得(雑所得)が15万円(≦20万円)のため、確定申告が不要という判断になります。
※ただし、この例外規定は、主たる給与が年末調整されていることが前提となります。
最後に
税法上は、
- 役員が受け取る”役員報酬”
- 従業員が受け取る”給与”
のどちらも同じ給与所得に分類され、役員報酬であっても”源泉徴収”や”年末調整”は必要になってきます。
原則、役員報酬を受け取っている方は、会社で税金関係の処理をするため、個人での確定申告は必要ありません。
ただし、2ヶ所から給与をもらっている場合は、基本的に確定申告が必要となるので注意しましょう。
この記事の監修者

尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。