役員報酬と事業所得の違い(比較)

これから会社を設立(法人成り)しようと思っている。

それなら事業者が得る報酬である「役員報酬」と「事業所得」の違いを理解しておく必要があります。

まず、個人事業主は、事業収入から経費を差し引いた”事業所得”が自分の所得です。

一方、会社を設立した場合は、経営者も従業員と同じように給与として”役員報酬”を得ることになります。

この記事では、会社経営者の「役員報酬」と個人事業主の「事業所得」の違いについて解説します。

役員報酬と事業所得の比較表

まずは、役員報酬と事業所得の比較表を見ていきましょう。

役員報酬と事業所得の比較表
役員報酬 事業所得
事業形態 法人 個人事業主
所得区分 給与所得 事業所得
毎月の報酬額 一定額 自由
確定申告 不要 必要
報酬の経費算入
給与所得控除
青色申告特別控除
芦屋会計
いかがでしょうか?

役員報酬と事業所得では、様々な違いがあることが分かります。

毎月の報酬額

まず、大きな違いが毎月の報酬額です。

個人事業主は、自分自身から報酬をもらうことになるため、給与という概念はありません。

そのため、事業収入から経費などを差し引いた残りを「事業の蓄え」「生活費」として使うことになります。

生活費として支出した金額は「事業主貸」として計上することになりますが、毎月○○万円などの定めはないため、必要に応じて生活費に充てることができます。

役員報酬は定期同額給与

一方、経営者の報酬である役員報酬には、定期同額給与という考え方があります。

これは、

  • 定期(=毎月)
  • 同額(=同じ)

給与を支給することを言い、役員報酬を変更できるのは期首(事業年度の開始日)から3ヶ月以内だけです。

例えば、3月決算の法人の場合、役員報酬を変更できる時期は”4~6月”の3ヶ月間だけとなります。

この時期を逃すと、基本的には、次の決算月の翌月まで役員報酬を同じ水準で維持しなければなりません。

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もし、役員報酬を「期首から3ヶ月以外」に変更した場合は、損金算入できないデメリットがあるので注意しましょう。

役員報酬の変更時期に注意!原則、期首から3ヶ月以内のみ可能

2018.11.12

確定申告

続いて、確定申告の有無が違ってきます。

個人事業主の報酬に当たる事業所得は、自分自身で計算しなければなりません。

具体的には、

  • 証票書類(レシート、領収書など)の分類・整理
  • 会計ソフトなどに証票書類の内容を「勘定科目」に分類しながら仕訳・入力

により日々の取引を記録した帳簿を作成。

そのデータを元にして確定申告書を作成していくことになります。

役員報酬は源泉徴収・年末調整の対象

経営者が受け取る”役員報酬”は、従業員が受け取る給与と同じく”給与所得”に位置づけられます。

そのため、一般的な会社員と同じように毎月の役員報酬から源泉徴収により税金が天引きされ、年末調整により税金の過不足を精算することになります。

法人で役員報酬の税務処理が行われるため、原則、役員が確定申告をする必要ありません。

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ただし、法人として役員報酬の税務処理をする手間が発生することになります。

役員報酬は確定申告が必要?源泉徴収や年末調整周りの疑問を解決

2018.12.12

報酬の経費算入

個人事業主が生活費として「事業主貸」を計上する場合は、必要経費にはできません。

経費として認められるのは、収入を得るために直接必要な売上原価や販売費、管理費その他費用のみとなります。

具体的には、

  • 売上原価
  • 給与、賃金
  • 地代、家賃
  • 減価償却費

などが該当します。

役員報酬は必要経費にできる

一方、役員報酬は「定期同額給与」のルールを守ることで必要経費にできます。

これにより法人の利益を下げることができ、法人税の負担を下げることが可能です。

給与所得控除、青色申告特別控除

個人事業主では、確定申告で「青色申告」を選択することで青色申告特別控除65万円を受けることができます。

要件は、

  1. 事業開始時に「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」を提出する
  2. 日々の取引内容を「複式簿記」で記帳する
  3. 確定申告書に「貸借対照表」と「損益計算書」を添付する

です。

役員報酬は給与所得控除を適用できる

一方、役員報酬は、給与所得扱いであることから給与所得控除を適用できます。

給与所得控除は、次のとおりです。

給与等の収入金額(年収) 給与所得控除額
2019年度分
(改正前)
2020年度分以降
(改正後)
162.5万円以下 65万円 55万円
162.5万円超 180万円以下 収入金額 × 40% 収入金額 × 40% − 10万円
180万円超 360万円以下 収入金額 × 30% + 18万円 収入金額 × 30% + 8万円
360万円超 660万円以下 収入金額 × 20% + 54万円 収入金額 × 20% + 44万円
660万円超 850万円以下 収入金額 × 10% + 120万円 収入金額 × 10% + 110万円
850万円超 1,000万円以下 195万円(上限額)
1,000万円超 220万円(上限額)

※税制改正により2020年(令和2年)分以降は、給与所得控除が10万円引き下げられています。

例えば、役員報酬400万円の場合は、給与所得控除124万円(= 400万円 × 20% × 44万円)を受けることが可能です。

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一定の年収がある場合、個人事業主の青色申告特別控除65万円と比較しても控除額が高くなることが分かります。

個人事業主は法人化すると節税できる?

実際、個人事業主は、法人化(法人成り)することで節税できるのでしょうか?解説していきます。

まずは、法人と個人事業主にかかる税金をそれぞれ見ていきましょう。

個人事業主と法人にかかる税金一覧表
個人事業主 法人
所得税 5~45% 5~45%
個人住民税 約10% 約10%
個人事業税 3~5%
法人税 15~23.2%
法人住民税 均等割:7万円~
法人税割:法人所得税 × 約7%
法人事業税 3.5~7%
※特別法人事業税37%

※上記の税金の負担額は目安となります。お住まいの地域や事業形態・規模などによって異なります。

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ここで注目してほしいのが、

  • 法人の役員報酬
  • 個人事業主の事業所得

に対してかかる最大45%の所得税です。

法人になることで所得税の高い税率を抑えることができます。

法人は所得の分散ができる

法人にするメリットは、所得を「個人」と「法人」に分散できる点です。

日本では、所得が高ければ高いほど税率も上がっていく累進課税が採用されています。

所得税の速算表
課税される所得金額
(課税所得)
税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 9万7,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 42万7,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 63万6,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 153万6,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円

参考:国税庁ホームページ

個人事業主の場合、収入が多くなるほど課税所得は増えていき、累進課税により税率は上がってしまいます。

課税所得が1,000万円であれば、所得税額は176万4,000円(= 1,000万円 × 33% − 153万6,000円)といった具合です。

一方、法人であれば、

  • 個人:400万円
  • 法人:600万円

などに所得を分散をすることで税率を抑えることができます。

節税効果のシミュレーション

では、実際に法人化することでどれほどの節税効果があるのでしょうか?

売上1,500万円、経費500万円のケースでシミュレーションしてみましょう。

※法人の役員報酬は500万円とします。

個人事業主 法人
法人 個人
(役員報酬500万円)
売上 1,500万円 1,500万円
経費 経費:500万円 経費:500万円
役員報酬:500万円
給与所得控除 144万円
青色申告特別控除 65万円
課税所得 935万円 500万円 356万円
所得税(法人税) 154万9,000円 75万円 30万2,000円
住民税(法人住民税) 93万5,000円 12万2,000円 35万6,000円
事業税(法人事業税) 28万円 26万7,000円
税金の合計金額 276万4,000円 179万7,000円

※上記の税金の負担額は目安となります。お住まいの地域や事業形態・規模などによって異なります。

個人事業主から法人化(法人成り)することで税金の負担が96万7,000円も減りました。

その他、法人化により「役員社宅」や「倒産防止共済」などを活用でき、より積極的な節税対策をすることも可能です。

役員報酬の手取りを増やす5つの節税対策

2019.05.14

最後に

今回は、会社経営者の「役員報酬」と個人事業主の「事業所得」の違いについて解説しました。

個人事業主の場合は、毎月の生活費の変動に合わせて自由にお金を使えることがメリットです。

一方、会社経営者の「役員報酬」は、法人の経費にできることから事業所得が一定水準になった場合には、大きな節税効果を得られることが分かります。

それだけでなく、

  • 赤字の繰越期間が最大9年になる
  • 社会的信用力が上がって雇用や融資などで有利になる
  • 会社設立後の2年間は消費税が免税される

といったメリットがあります。

ただし、法人化することで社会保険の加入義務が発生したり、赤字でも住民税の均等割の支払いなどのデメリットが発生します。

そのため、事前に税理士と相談をしながら「個人事業主」と「法人」でどのくらいの税金や費用が違ってくるのかをトータルでシミュレーションすることをオススメします。

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