「税務調査にお伺いしてもよろしいでしょうか?」
税務署から税務調査の連絡は、何の前触れもなくある日突然やってきます。
税務調査は、経営者なら誰だって経験する可能性のあるものであり、いくら申告をきっちりして税金も遅延なく納めていたとしても不安はつきものです。
そんなときに頼りになるのが税金の専門家である「税理士」となります。
この記事では、税務調査で税理士に立会いを依頼するメリットなどについて解説します。
税務調査とは
まずは、税務調査について簡単におさらいしましょう。
税務調査とは、徴税機関(国税庁、税務署)が納税者の申告内容に不正や誤りがないかを調査することを言います。
基本は任意調査
一般な納税者に対して行われる税務調査は、強制力のない任意調査です。
よくテレビドラマや映画などで「突然大人数でやってきて会社のあちこちを徹底的に調べるシーン」がありますが、悪質で脱税額1億円超を対象としています。
このような国税局査察部(マルサ)が裁判所の令状を得て行う強制調査は、割合として全体の1%にも満たない数です。
そのため、税務調査官は、納税者の”承諾”なく勝手に関係資料などを調べることはできません。
税務調査は拒否できない
先ほど税務調査は任意と説明しましたが、納税者は税務調査自体を拒否することはできません。
なぜなら、税務調査は法令で認められている行為であり、
- 税務調査に協力しない
- 偽りの答弁をする
- 正当な理由もなく拒否をする
といった場合には、国税通則法127条の受忍義務(調査に応じる義務)違反として、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があるからです。
そのため、税務調査が来たとき、納税者ができることは合理的な理由(病気や怪我、冠婚葬祭、仕事で重要な商談があるなど)に基づいて税務調査の日程を変更することになります。
通常、税務調査の対応をするときは、必要書類の準備や帳簿などの見直し作業を行うことが重要です。
もし、税務調査官が突然やってきたときは事務所に通さず、日程変更してもらうことをおすすめします。
通常、税務調査には事前連絡がある
一般的に税務調査を行う際は、税務署から事前連絡があります。
顧問税理士に決算申告・確定申告書などの作成を依頼している場合は、各種申告書に記載されている税理士に連絡が入ります。
税務調査の流れは、次のとおりです。
1、税務署から事前連絡 | 税務調査の事前連絡が入り、日程調整を行います。会社や税理士の都合に合わせることができ、おおよそ1〜3週間先に調査日を決めることになります。 |
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2、税務調査の準備 | 税務調査を無事に切り抜けるに事前準備を行うことが重要です。税務調査官から帳簿や領収書、請求書などの提出を過去3年分にわたって求められるので見直し作業をします。それに合わせて税務署から指摘される内容を想定して回答を準備しておくことも重要です。 |
3、税務調査 | 一般的な税務調査(実地踏査)は通常2日で終わります。税務調査官から質問があるので事前準備した内容で受け答えしましょう。 |
4、税務署から調査報告 | 税務署は税務調査(実地調査)で持ち帰った資料・情報をもとに分析をします。申告内容に問題がなければ申告是認(修正すべき点がない)の結果が通知。修正すべき点があれば問題があれば、指摘事項を伝えられます。もし、結果に納得がいかなければ、税務署と話し合いをして「不服申し立て」により処分の取り消しや変更、再調査を求めることも可能です。 |
税務調査の罰金は最大40%
税務調査で問題が見つかった場合、売上漏れが単純なミスや見解の違いであれば、過少申告加算税10〜15%で済みます。
しかし、税務調査官に「意図的に事実の隠蔽や仮装などをした」と判断されれば、最大40%の重加算税が科されることになります。
加算税の種類 | 内容 | 加算税率 |
---|---|---|
過少申告加算税 | 本来の税額より少ない金額で申告した場合 (ミスや見解の違いなど) |
0%(税務調査前に修正申告) 10%(50万円以下の部分) 15%(50万円を超える部分) |
無申告加算税 | 申告期限までに申告しなかった場合 | 5%(税務調査前に修正申告) 15%(50万円以下の部分) 20%(50万円を超える部分) |
重加算税 | 本来の税額より少ない金額で申告した場合 (意図的な事実の隠蔽や仮装など) |
35% 40%(無申告) |
延滞税 | 税金を法定納付期限までに納めていなかった場合 (修正申告等により遅れた場合にも発生します) |
最新の税率はこちら |
税務調査で申告内容に問題が発覚すれば、
- 本税:減らした分の税金
- 加算税:罰則的な税金
- 延滞税:税金の納付が遅れた日数に応じて発生する税金
を最大過去7年分に遡及して納めなければなりません。
また、帳簿書類がなかったり、重大な不備が見つかれば、青色申告の取り消し対象にもなり、経営の悪影響は避けられません。
しかしながら、一般の納税者が税金の知識を持ち合わせているわけがありません。
そのため、納税者自身が税務調査の対応すれば、税金を知り尽くした税務調査官の誤った指摘にも言いなりになってしまう恐れがあります。
そんな状況を避けるためには、税務調査時に税理士に立ち会ってもらうことをおすすめします。
納税者と税務調査官の”税金の知識の差”を埋めて、交渉を有利に進めることが可能です。
税務調査に入られやすい業種
税務調査に入られる確率(実調率)は「法人3.1%」「個人1.1%」と統計結果で出ています。
確率で言えば、
- 法人では約32年に1回
- 個人では約90年に1回
となるので税務調査が入る確率は低く、そこまで過剰に心配する必要はないと考えられます。
しかし、税務調査が入る確率は、業種によって大きく異なる点には、注意をしておきたいところです。
次に紹介する業種は、税務署から
- 不正がよく見つかる
- 追徴課税を取りやすい
と見なされやすく、税務調査に入られやすい傾向があります。
業種 | 不正発見割合 |
---|---|
バー・クラブ | 62.5% |
外国料理 | 45.3% |
大衆酒場、小料理 | 37.7% |
廃棄物処理 | 30.5% |
自動車修理 | 28,9% |
土木工事 (道路工事、下水道工事、宅地造成工事など) |
28.9% |
パチンコ | 28.6% |
貨物自動車運送 (運送業) |
27.1% |
職別土木建築工事 | 26.2% |
管工事 (冷暖房設備工事、冷凍冷蔵設備工事、空気調和設備工事、給排水・給湯設備工事など) |
26.2% |
業種 | 1件当たりの申告漏れ所得金額 | 1件当たりの追徴税額(含加算税) |
---|---|---|
風俗業 | 2,083万円 | 519万円 |
キャバレー | 1,667万円 | 318万円 |
プログラマー | 1,178万円 | 175万円 |
畜産農業(肉用牛) | 1,150万円 | 179万円 |
防水工事 | 1,109万円 | 191万円 |
ダンプ運送 | 1,097万円 | 132万円 |
型枠工事 | 1,015万円 | 160万円 |
特定貨物自動車運送 | 1,007万円 | 129万円 |
解体工事 | 998万円 | 144万円 |
とび工事 | 972万円 | 145万円 |
税務調査に入られやすい業種の傾向としては、
- 現金取引による売上が多い(バー、クラブ、風俗業など)
- 申告をしていない人が多い(管工事、解体工事、とび工事など)
- モノではなくサービスを売っている(貨物自動車運送、プログラマーなど)
などがあげられます。
例えば、不正発見割合が最も高い「バー、クラブ」などは、
- 売上は、個人のお客様から”現金”での支払い
- 従業員への給料は、”現金”での手渡し
と銀行振込と違ってお金の流れが把握しづらくなっています。
また、個人が相手の場合は、企業間の取引と違って、注文書や請求書を発行することはなく、支払調書にも残らないため、売上の操作も容易です。
このような環境から、税金から逃れようと考える人も多く、税務署もそれを分かっていて目をつけます。
税理士に税務調査を立ち会ってもらうメリット
あらためて税理士に税務調査に立ち会ってもらうメリットを見ていきましょう。
税金の負担を減らせる
税理士に税務調査に立ち会ってもらう最大のメリットは、税金の負担を減らせることです。
税務調査の目的は、
適切で公平な課税を実現するため
です。
しかしながら、税務調査官は、公務員でありながらサラリーマンと同じように”税務調査の実績”によって評価が決まります。
そのため、税務調査官は「より多くの不正行為を発見したい」という思いが実情であり、できるだけ最も悪質な「重加算税」に持っていこうという力が働きます。
ここで注意が必要なのは、意図的に脱税を図る悪質な納税者が少なからずいることから、税務調査官は「性悪説」に基づいて多少強引にでも不正を見つけようとせざるをえない事情がある点です。
例え、納税者側による単純なミスや認識の違いであっても税務調査官側は「意図的な不正である」と考えて認めさせようとします。
また、否認の対象となっている交際費などを経費として認める代わり、意図的な脱税行為である「重加算税」にしようと交換条件を提示してくるケースもあります。
そんなとき、税金の知識に乏しい経営者は、適切な反論をすることができなかったり、どのような結果になるか分からずに一見魅力的な交換条件を受け入れてしまいます。
税務調査時に経験豊富な税理士に立ち会ってもらうことで税金の知識差を埋めることが可能です。
これにより税務調査官の発言に妥当性があるかが検証され、言い分が明らかにおかしければ適切に反論してもらうことができます。
税務調査に安心して臨める
税務調査は、事実確認をすることを目的としており、取り締まりではありません。
税務調査官も基本的には丁寧な言葉づかいで話しやすい雰囲気作りをしてくれるため、過度に怖がる必要もありません。
しかしながら、税務調査は、人生で何回も経験するものではなく、不安な気持ちになることは当然です。
確実に帳簿付けをしたつもりでも「間違いがあるのではないか?」「税務処理の方法を指摘されるのではないか?」といった心配事がのしかかり、税務調査が終わるまで仕事のパフォーマンスに影響を及ぼすことになります。
また、税金のプロである税務調査官から投げかけられる質問には、世間話と思っていても”重要な意味”が込められていることもあります。
あらかじめ注意すべき点を抑えていなければ、下手な返答により余計な税金を支払ってしまうことにも繋がります。
このような不安・心配事を取り除くには、税務調査を得意とする税理士と協力をして、事前準備やシミュレーションをしておくことが大切です。
あらかじめ帳簿書類などに問題がないかを税理士にチェックしてもらえるので、記載内容に問題があったとしても調査時に想定外の事態が起こりにくくなります。
【大阪府】税務調査時の税理士立ち会い費用相場
税務調査では、よっぽどの理由がない限り、税理士に立ち会ってもらうことが賢明です。
しかしながら、税理士に立ち会い依頼をするときにネックとなるのが、税理士に支払う報酬・費用となります。
税理士の税務調査立ち会い報酬・費用相場は、
- スポットで依頼する
- 顧問税理士に依頼する
で違ってくるケースがあります。
ここでは、大阪府で顧問税理士に税務調査の立ち会い依頼をした場合の報酬・費用相場を紹介します。
税務調査立ち会い料の相場は1日3〜5万円
大阪府における税務調査立ち会い料の相場は1日あたり3〜5万円です。
税務調査立ち会い料に含まれるサービス内容は、
- 事前の必要書類の確認
- 税務調査官の質疑応答のサポートや交渉
といったケースが多くなっています。
さらに税務調査の結果、修正申告の必要が生じた場合は、別途料金が発生することになります。
通常、税務調査は2日で終わりますが、万が一、長引いてしまえば、その分だけ報酬・費用の負担も増えることになります。
基本的には、法人や個人事業主の年間売上高が大きくなるほど事前調査・打ち合わせや税務調査で時間がかかることから立ち会い料が高くなる傾向があります。
税務調査は税理士以外に依頼できるの?
税務調査の立ち会いは、税理士以外に依頼することはできません。
なぜなら、
- 税務調査の立ち会いは、税理士だけに認められた独占業務
に該当するからです。
税理士には、大きく分けて3つの独占業務があります。
税務の代理 | 本来納税者がすべき「税務の申告・申請」を税理士が代理で行います。具体的には「確定申告・青色申告の承認申請」「税務調査の立ち会い」「税務署の更生・決定に不服がある場合に主張や陳述をする」が該当します。 |
---|---|
税務書類の作成 | 本来納税者がすべき「税務署類の作成」を税理士が代理で行います。具体的には「確定申告書の作成」「法人税申告書の作成」「償却資産税申告書の作成」「源泉所得税納付書の作成」「法定調書の作成」「源泉徴収票の作成」などが該当します。 |
税務相談 | 納税者の税金に関する相談を受けることです。具体的には「納税額の計算方法」「税金の還付請求の方法」「節税対策」が該当します。 |
これらの税理士業務に関しては、税理士法第51条により
税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行ってはならない。
と規定されています。
そのため、原則、税理士または税理士法人でない者が税理士業務を行うことはできません。
税務調査に強い「顧問税理士」をつけておこう
税務調査は、顧問税理士がいない場合でもその都度スポットで対応してもらうことも可能です。
しかし、あらかじめ税務調査に強い「顧問税理士」をつけておくことでスポット対応ではないメリットがあります。
- 税務調査の連絡が入ったとき顧問税理士に依頼できる
- 顧問税理士が税務申告の内容をチェックしてるので追徴課税される可能性が低い
税務調査の連絡が入ったとき顧問税理士に依頼できる
税務調査の連絡は、ある日突然きます。
そんなとき顧問税理士に税務申告をしていれば、まずは税務署から税理士に連絡が入ります。
また、税務調査官が直接事務所にアポなし(無予告調査)で訪れた場合でも「顧問税理士に連絡するので待ってください。」と言うこともできます。
税務調査の立ち会いは、スポット対応で依頼することもできますが、税理士事務所によっては対応していないケースも数多くあります。
例え、スポット対応していても繁忙期であれば「この時期は、忙しくて対応できない。」という断られることもあり、税務調査の連絡が入ってから信頼できる税理士を探すのはリスクがあります。
顧問税理士をつけていれば、顔見知りの税理士が税務調査に対応してくれるので慌てることなく、安心して税務調査に臨むことが可能です。
2、顧問税理士が税務申告の内容をチェックしてるので追徴課税される可能性が低い
税務調査で一番良い結果は、申告内容に誤りのない申告是認で終わることです。
申告是認を勝ち取るには、法令に則った”正しい税務申告”をすることが重要となります。
そのためには、
- 毎年行わえる税制改正を把握しておく
- 日々の取引に対して一定のルールで仕訳・記帳をしておく
- 税務申告の申告漏れや控除の計算間違いに気をつける
といったことが大切になります。
ただし、これらを自分で行う場合は、最低限の専門知識が必要であり、取引件数が増えれば時間もかかるので本業に支障をきたします。
また、経費の判断がつかない取引(グレーゾーン取引)が出てきたときに「分からないから」と何でも経費にしていると、あとで大変なことになる可能性があります。
顧問税理士がいれば、税務署から指摘されやすい内容を教えてくれたり、節税対策のアドバイスを受けることも可能です。
また、記帳代行を依頼することもでき、
- 証票書類(レシート、領収書など)を分類・整理する
- 会計ソフトに証票書類の内容を「勘定科目」に分類しながら仕訳・入力する
といった煩わしい作業も全て丸投げすることができます。
最後に
税務調査は、最大で過去7年間にわたって資料を調べられます。
そのため、税務調査の対応が上手くできず、最大40%の重加算税(意図的な事実の隠蔽や仮装による罰金)を科されると経営に与えるダメージは甚大です。
税金のプロである税務調査官の意図を汲み取って適切に対応していくには、同じく税金のプロである税理士に立ち会って交渉してもらう必要があります。
もし、税務調査が不安であれば、お任せください。
当事務所は、税務調査を優位に進めるノウハウと交渉力を持っています。
「正しく申告しているか不安・・・」
「税務調査の連絡が入った・・・」
「事前対策はどうすればいいだろう・・・」
「追徴課税を受けそうだけどどうすれば・・・」
など、お気軽にご相談ください。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。