社長や役員が受け取る給与の代わりとなる”役員報酬”
この役員報酬は、原則、毎月同じ金額を支給しなければならず、一度決めてしまうと後からは自由に変更はできません。
もし、このルールを破った場合は、変動額に応じて役員報酬の一部が損金算入できないペナルティがあります。
では、役員が病気や入院により、通常の業務ができなくなった場合も役員報酬の減額はできないのでしょうか?
病気や入院であれば役員報酬の減額は認められる
先に結論を言っておくと、病気や入院というやむを得ない(=仕方がない)事情であれば、役員報酬の減額は認められます。
また、退院後に通常の業務ができるようになれば、役員報酬を入院前の水準に戻すことも可能です。
国税庁ホームページでは、次のようなケースで役員報酬の変更があっても、同期定額給与に該当する(=損金算入できる)としています。
(臨時改定事由の範囲-病気のため職務が執行できない場合)
当社(年1回3月決算)の代表取締役甲は、病気のため2ヶ月間の入院が必要となり、当初予定されていた職務の執行が一部できない状態になったため、取締役会を開催し、甲の役員給与の額を減額することを決議しました。
また、退院後において、従前と同様の職務の執行が可能となったことから、取締役会の決議を経て、入院前の給与と同額の給与を支給することとする改定をしています。
この場合、当社が甲に支給する役員給与は定期同額給与に該当しますか。
なお、入院期間中、甲には別途、社会保険から傷病手当金が給付される予定です。
X1年8月まで 月額 60 万円
X1年9月~10 月(入院期間) 月額 20 万円
X1年 11 月(職務再開)以降 月額 60 万円国税庁:役員給与に関するQ&A
臨時改定事由に該当する
病気や入院のケースでは、臨時改定事由によって役員報酬を減額することができます。
国税庁ホームページでは、次のように「臨時改定事由」が定義されています。
役員の職制上の地位の変更、役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情
国税庁:役員給与に関するQ&A
利益調整などを目的とした場合は、役員報酬の変更および損金算入は認められません。
議事録の作成はしておこう
臨時改定事由によって役員報酬を変更する場合、税務署へ書類などを提出する必要はありません。
ただし、株主総会や取締役会で役員報酬の変更の経緯を記録した”議事録”を作成する必要はあります。
1人会社(役員が1人)でも株主総会や取締役会を開催して、議事録を作成・保存しましょう。
最後に
原則、役員報酬は1年に1回しか変更できません。
しかし、「どのような理由があっても役員報酬を変更できない」となると、会社にとっては大きな不利益となることもあります。
そのため、法人税法では、一定の条件下に限って役員報酬の変更を例外的に認めています。
この他にも、
- 役員が任期の途中で就任・退任した
- 組織再編成(合併、会社分割など)があった
- 会社や役員の不祥事等により行政処分を受けた
- 会社の経営状況が著しく悪化した
といった場合でも役員報酬の変更が認められる可能性があります。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。