2021年4月1日から消費税の総額表示の義務化がスタートします。
これまで商品の表示価格は「税抜」「税込」のどちらでも問題ありませんでした。
しかし、今後は、消費者に対して行われる価格表示であれば、
- 値札、商品陳列棚、店内表示、商品カタログ
- 商品のパッケージなどの印字や貼付
- 新聞折込広告、ダイレクトメールなどにより配布するチラシ
- 新聞、雑誌、テレビ、インターネットホームページ、電子メール等の媒体を利用した広告
など、媒体を問わず、消費税総額表示の義務が課せられます。
この記事では、4月1日から始まる消費税総額表示の義務化について分かりやすく解説します。
目次
消費税総額表示義務化とは
まずは、消費税総額表示義務化についておさらいしましょう。
消費税総額表示義務とは、事業者が不特定多数かつ多数の者に商品を販売する際、税込価格を表示することを義務付けることを言います。
具体的には、
- 11,000円
- 11,000円(税込)
- 11,000円(税抜価格10,000円)
- 11,000円(うち消費税額等1,000円)
- 11,000円(税抜価格10,000円、消費税額等1,000円)
- 10,000円(税込11,000円)
が”消費税の総額表示”に該当します。
そのため、税込価格に加えて”税抜価格”も同時に表示されていても問題ありません。
ただし、文字の大きさや色合いを変えて「税抜価格」を強調して消費者の誤認を与えた場合は、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)に抵触する可能性があるので注意しましょう。
対象の取引
消費税総額表示義務は、不特定かつ多数のものに行う取引が対象です。
そのため、事業者間の請求書、見積書、契約書などの価格表記については、消費税総額表示義務の対象にはなりません。
事業者と消費者の取引 | あり |
---|---|
事業者間の取引 | なし |
消費税総額表示義務の具体例としては、
- ホームページに見積例を記載する → 対象
- 会員制のディスカウントストアの価格表示 → 対象
- 製造業者が小売店向けに商品カタログを作成する → 対象外
- 事務用品を法人向けに販売している → 対象外
- 商品カタログに記載するメーカー希望小売価格 → 対象外
となります。
罰則規定
記事執筆時点で消費税総額表示義務に違反した場合の罰則(罰金または懲役刑)はありません。
しかしながら、違法行為であることには変わりないのでコンプライアンスの観点から2021年4月1日までに対応しておくことをおすすめします。
また、消費者から価格表示について苦情があった場合は、税務署による行政指導を行われる可能性もあるのでしっかりと対応していきましょう。
消費税総額表示義務化の経緯と特例措置
実は、消費税総額表示は、2004年4月(平成16年)から義務付けが始まりました。
それまで主流であった税抜価格表示は、レジで会計するまで最終的にいくら請求されるか分かりにくい。
また、同一の商品やサービスであるにも関わらず、お店ごとに「税抜価格表示」と「税込価格表記」が混在していることから比較検討がしにくい状況でした。
消費税総額表示に伴って消費者の誤認防止が図られましたが、その後、2度の消費税増税が行われることになります。
1989年(平成元年)4月1日 | 3% |
---|---|
1997年(平成9年)4月1日 | 5%(国4%+地方1%) |
2004年(平成16年)4月1日 | 消費税総額表示 |
2014年(平成26年)4月1日 | 8%(国6.3%+地方1.7%) |
2019年(令和元年)10月1日 | 標準税率10%(国7.8%+地方2.2%) 軽減税率8%(国6.24%+地方1.76%) |
上記の表を見れば分かる通り、2014年、2019年の短期間に消費税増税が繰り返されています。
特に2019年10月1日の消費税増税の際には、日本初となる軽減税率の導入も行われたことから、事業者による値札の貼り替え等の事務負担が大きくなることが予想されました。
そこで2013年(平成25年)10月1日から2021年(令和3年)3月31日までの間、消費税の総額表示義務の特例措置(消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法)が設けられました。
これにより表示価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じていれば「税込価格」を表示しなくてもよいとされました。
ただし、店内の目に付きやすい場所に「当店の価格は全て税抜価格となっています。」など、消費者が税込表示と誤認しないようにする配慮は必要となってきます。
消費税総額表示義務のよくある質問(Q&A)
ここからは、消費税総額表示義務化のよくある質問(Q&A)をまとめていきます。
Q. 商品パッケージに税抜価格のみが表示されている場合、変更する必要はありますか?
A. いいえ。変更する必要はありません。
消費税総額表示は、消費者が商品購入時に「税込価格」がひと目で分かれば良いものとされています。
そのため、商品の棚に表示されている値札やPOPに「税込価格」が分かりやすく表示されていれば、問題ありません。
Q. 商品を税抜価格から税込価格に変更する際に「小数点以下の端数」が出ましたが、どのように処理すればいいですか?
A. 消費税の端数処理については、各々の事業者の判断に委ねられています。
そのため、
- 四捨五入
- 切り捨て
- 切り上げ
のどれで処理しても問題ありません。
このことは、国税庁ホームページでも明記されています。
総額表示に伴い税込価格の設定を行う場合において、1円未満の端数が生じるときには、その端数を四捨五入、切捨て又は切上げのいずれの方法により処理しても差し支えありません。
出典:国税庁
Q. 時価の商品も消費税総額表示義務の対象ですか?
A. 寿司屋などで時価と表示されている商品については、消費税総額表示義務の対象となりません。
国税庁のホームページでも次のように案内されています。
総額表示の義務付けは、事業者が消費者に対してあらかじめ表示する価格が対象となります。したがって、価格を表示していない場合にまで、税込価格の表示を義務付けるものではありません。また、口頭で伝えるような価格は、総額表示義務の対象とはなりません。
Q. 消費税総額表示義務によりレジシステムを変更する必要はありますか?
A. 消費税総額表示義務は、レジシステムの変更を義務付けるものではありません。
商品の値札やPOPなどで消費税の総額が表示されていれば、問題ないものとなっています。
最後に
今回は、消費税総額表示義務の表示について詳しく解説しました。
2021年4月1日以降は、一般消費者を相手とした小売店や飲食店などでは、税込表示が原則となります。
記事執筆時点で罰金や懲役刑などの罰則こそありませんが、今後の法改正によりいつ何時罰則が科されるようになるか分かりません。
また、消費者の不信感にも繋がる恐れもあることから、できるだけ早めに税込表記に切り替えるべきでしょう。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。
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