今年も確定申告の時期がやってきました。
確定申告は、個人事業主やフリーランスだけでなく、一定の要件に当てはまるサラリーマンや年の途中で会社を退職した方も提出義務があります。
これまで給与所得、退職所得、公的年金等を受け取っていた人が確定申告をする場合、確定申告書に源泉徴収票を添付する必要がありました。
しかし、令和元年(2020年度)の確定申告からは、国税庁が実施した国税関係手続の簡素化により、源泉徴収票の添付が不要になっています。
確定申告への添付が不要になった書類一覧
平成31年に税制改正等が行われた結果、国税関係手続の簡素化が図られました。
これに伴って2019年4月1日以降に提出する所得税申告(確定申告書および修正申告書)では、各種書類の添付が不要になっています。
次は、確定申告書で添付が不要になった書類一覧です。
- 給与所得、退職所得及び公的年金等の源泉徴収票
- オープン型の証券投資信託の収益の分配の支払通知書
- 配当等とみなされる金額の支払通知書
- 上場株式配当等の支払通知書
- 特定口座年間取引報告書
- 未成年者口座等につき契約不履行等事由が生じた場合の報告書
- 特定割引債の償還金の支払通知書
- 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例における相続税額等を記載した書類
これまでも電子申告「e-Tax」においても源泉徴収票の提出は必要ありませんでしたが、書面による確定申告の提出においても源泉徴収票の添付・提出が不要になりました。
また、これまで必要であった源泉徴収票の5年間の保存・保管義務もなくなっています。
確定申告に源泉徴収票の添付が不要になった理由
確定申告に源泉徴収票の添付が不要になった理由としては、マイナンバー制度の導入が大きく影響しています。
皆さん、ご存知のとおり、マイナンバーとは、2015年10月から全国民一人一人に付与された12桁の個人番号です。
従来は「名前」「住所」などで行われていた個人の特定が”マイナンバー制度”によって容易になり、ペーパレス化とも相まって確定申告に源泉徴収票を添付する必要がなくなりました。
また、令和2年10月以降(予定)は、マイポータルを活用して控除証明書等の必要書類のデータを一括所得して、各種申請書への自動入力も可能となります。
出典:国税庁
マイナポータルでは、
- 情報提供等表示(やりとり履歴)
- 自己情報表示(あなたの情報)
- お知らせ
- 民間伝送サービスとの連携
- 子育てワンストップサービス
- 公金決済サービス
- もっとつながる(外部サイト連携)
といったサービスが提供されています。
確定申告書の作成には「源泉徴収票」の情報が必要
国税関係手続の簡素化により確定申告書の添付書類台紙に「源泉徴収票(原本)」を”のりづけ”する必要はなくなりました。
しかし、源泉徴収票には、確定申告書の作成に必要な情報が詰まっています。
そのため、会社から源泉徴収票を受け取ったあとは、念のためにスマホで撮影するなどして記載内容を残しておきましょう。
また、国税庁のリーフレットには、
税務署等で確定申告書を作成する場合には、源泉徴収票等が必要ですので、忘れずにお持ちください。
と案内されています。
もし、税務署で確定申告書の相談を受ける場合などは、源泉徴収票を持参する必要があるので破棄せずに保管しておきましょう。
所得控除の内訳の記載を省略できる
確定申告書の源泉徴収票の添付の省略と合わせて、所得控除の内訳の記載項目の省略も可能となっています。
具体的には、
- 年末調整で適用を受けた各所得控除の額
- 確定申告で適用を受ける各所得控除の額
が同額である場合は、所得控除の内訳(社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除など)の項目を記載する必要がなくなりました。
これに伴って確定申告書Bの「所得から差し引かれる金額」の様式が次のように変更されています。
最後に
2019年4月1日以降、これまで必要とされていた確定申告書への「源泉徴収票」の添付が不要になりました。
また、所得税における確定申告書の添付省略の他にも、以下の手続きで各種書類の添付が不要となっています。
手続名 | 添付不要とする書類 |
---|---|
相続時精算課税の贈与税申告 | 住民票の写し |
障害者非課税信託申告 | |
税理士試験受験資格認定申請 | |
税理士試験免除申請 | |
内国普通法人等の設立届出 | 定款等の写し以外の書類 なお、「法人課税信託の受託者となった旨の届出書」提出の際は信託行為の写し以外の書類 |
外国普通法人となった旨の届出 | 定款等の和訳以外の書類 |
収益事業の開始等の届出 | 定款等の写し・貸借対照表以外の書類 |
手続委託型輸出物品販売場許可申請 | 承認免税手続事業者の承認通知書の写し |
※「相続時精算課税の贈与税申告」については、平成32(2020)年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税に適用されます。
これまで一般的なサラリーマンは、源泉徴収と年末調整により税務関係の手続きが済んでいたため、確定申告は不要でした。
しかし、ここ数年、働き方改革により「副業解禁」の動きが促進されており、確定申告が必要となる方も多くなっています。
今回の国税庁による「国税関係手続が簡素化」により確定申告の負担が軽減される方向に進んだことは喜ばしいことと言えるでしょう。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。
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