「非関税障壁って何?」
そんな疑問を持っている方は、多いのではないでしょうか。
最近、ニュースで国際貿易の交渉や対立の課題として”非関税障壁”が取り上げられることがあります。
日本を含めて多くの国では、国内産業の保護や政府の財源確保などを目的に”関税”と呼ばれる税金を課しているケースは多いです。
ただ、関税以外にも貿易を制限しているルールや基準も数多く存在します。
この記事では、非関税障壁についてわかりやすく具体例も交えて解説していきます。
目次
非関税障壁とは
非関税障壁とは、関税以外の方法で主に輸入を制限する措置のことを言います。
関税には、明確な税率が設定されています。
例えば、チーズを輸入するときは関税として22.4~40%を徴収するといった具合です。
これに対して非関税障壁は、ルールや基準、手続きの煩雑さによって輸入の障壁となるものを言います。
関税と非関税障壁の違い
関税と非関税障壁の違いは、次のとおりです。
関税 (Tariff) |
非関税障壁 (Non-Tariff Barrier) |
|
---|---|---|
定義 | 輸入品にかける税金 | 税金以外で輸入を制限する手段 |
目的 | 国内産業の保護、税収の確保など | 国内産業の保護、安全確保、環境保全、外交手段など |
分かりやすさ | 数値化されて分かりやすい | 規制・基準などが複雑で分かりにくい |
影響の範囲 | 価格に直接影響 | 手続き、流通、品質基準など広い分野に影響 |
例 | 輸入品に10%の関税をかける | 成分表記が日本語でないと販売不可 検疫に数週間必要 |

そのため、国際的な貿易の場でたびたび問題になるトピックと言えます。
非関税障壁の具体例
ここからは、非関税障壁の具体例をあげていきます。
1、輸入規制
非関税障壁における輸入規制とは、数量、許可制、輸入停止などの方法で外国製品の流入を制限することを言います。
数量規制 (クォータ制度) |
一定期間に輸入できる数量を制限する制度 例:外国産の米を年間○トンまでに制限 |
---|---|
許可制度 (ライセンス制) |
政府の許可がないと輸入できない制度 ※輸入手続きを複雑することで事実上制限することもあります。 |
一時的な停止措置 | 安全上の理由で特定の国・品目の輸入を一時停止する措置 例:安全基準、伝染病、放射能、異物混入など |

2、技術的障壁
非関税障壁における技術的障壁とは、安全性・品質・環境・表示などに関する国内のルールが外国製品にとって輸入・販売のハードルになることを言います。
製品規格・認証 | 日本の電気製品の「PSEマーク」、食品の「JAS規格」などを取得しないと販売できない |
---|---|
厳しい安全基準 | 食品や化粧品で厳しい添加物基準や残留農業基準を設定する |
表示義務 | 日本語で成分、原産国、製造日などを細かく表示する必要がある |
独自の技術仕様 | 国際基準と異なる技術仕様を求められる 例:自動車の排ガス基準や安全基準が国内基準と異なる |

3、衛生・植物検疫(SPS)措置
非関税障壁における衛生・植物検疫(SPS)措置とは、動植物や食品の安全を守るために設けられる検疫や衛生に関するルール・基準のことを言います。
残留農薬や添加物の基準 | 野菜や果物、穀物などに残っている農薬の量が基準値を超えていると輸入禁止 |
---|---|
厳しい安全基準 | 果物・肉類などに害虫や伝染病(口蹄疫、鳥インフルなど)が付着している可能性があるため、検疫を義務付ける |
BSE(狂牛病)対策 | 一部の国からの牛肉輸入を禁止したり、年齢制限を設ける |
水産物の放射性物質検査 | 放射線物質の基準を超えていると輸入停止 |

しかし、WHOのSPS協定により一連の規制は科学的根拠に基づく必要があり、規制が行き過ぎていると争われることもあります。
4、補助金政策
非関税障壁における補助金政策とは、政府が自国の産業や企業に対して金銭的な支援(補助金・助成金、税制優遇など)を行う政策です。
生産補助金 | 製品の生産量に応じて補助金を支給 |
---|---|
研究開発補助金 | 技術革新のために補助金を支給 |
雇用維持・税制優遇 | 特定の産業に税の減免などの優遇措置 |

5、為替管理・金融措置
非関税障壁における為替管理・金融措置とは、貿易決済通貨や外国との資金移動に関するルールを通じて輸入や輸出を制限する政策です。
為替レート操作 | 中央銀行が意図的に自国通貨を安く誘導 |
---|---|
外貨の使用制限 | 特定の製品・商品の輸入に使える外貨を制限 |
資本規制 | 外国企業への送金や支払いを制限 |

6、貿易手続きの複雑化
非関税障壁における貿易手続きの複雑化とは、輸入や輸出に必要な手続き(書類、審査、許可など)を過度に複雑にすることで外国製品の流通を防ぐ手法です。
過剰な書類の要求 | 輸入時に多数の書類を提出する必要がある 例:成分証明、製造履歴、原産地証明など |
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通関の遅延 | 税関の審査が不透明かつ効率的で通関に時間がかかる |
不透明な許可制度 | 輸入ライセンスの取得が難しく、判断基準も明確でない |
検査の繰り返し | 他国で安全確認済みの製品・商品でも同様の検査を義務付ける |

最後に
今回は、国際情勢で取り上げられることも多い非関税障壁について詳しく解説しました。
非関税障壁は、関税以外のルールや手続きを使って、外国の製品が自国に入りにくくなるようにする方法です。
見えにくいけど、輸入を難しくする“壁”になります。
この記事の監修者

尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。
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