確定申告の方法の1つである「青色申告」は、
- 青色申告特別控除(最大65万円の特別控除)
- 青色申告者の専従者控除(家族・親族の給料を経費に算入)
- 欠損金の繰越控除(赤字を翌年以降の黒字と相殺)
- 少額減価償却資産の特例(30万円未満の資産の購入費を一括計上)
といった特典を受けることができるメリットの多い申告方法です。
しかし、青色申告は、国が定めた方法できっちり申告しないと取り消されることもあります。
この記事では、青色申告が取り消される具体的なケースをご紹介したいと思います。
目次
青色申告が取り消しとなる5つのケース
青色申告が取り消される代表的なケースは、次の5つです。
1、帳簿書類を提示しない場合
青色申告の特典を受ける条件として、帳簿書類の記録と保管が義務付けられています。
そのため、税務調査が来たとき、帳簿書類の提示を求められれば、それに応じなければなりません。
もし、
- 帳簿書類が存在していない
- 帳簿書類の提示を拒否した
といった場合は、青色申告の取り消し対象となります。
なお、青色申告の取り消し対象は、提示しなかった中で”最も古い事業年度以降”となります。
例えば、令和4年、令和5年の帳簿書類が提示できなかった場合は、令和4年以降の青色申告がすべて取り消されてしまいます。
青色申告では、原則としてより専門性の高い「複式簿記」という方法で帳簿を付けていく必要があります。
2、帳簿が法令に則った記載方法ではない場合
青色申告を受けるには、
- 帳簿(複式簿記)
- 貸借対照表、損益計算書、棚卸表など
- 領収証、小切手控、預金通帳、借用証など
といった書類を一定のルールに則って、作成・保存しなければなりません。
もし、提出した書類に不備があり、税務署からの改正指示に従わなかった場合は、青色申告の取り消し対象となります。
3、所得の隠蔽や仮装があった場合
税務調査などにより所得の隠蔽や仮装が見つかった場合は、青色申告の取り消し対象となる可能性があります。
条件
青色申告の取り消し対象となる条件は、不正所得金額(不正欠損金額)が
- 当初申告した所得金額の50%超
- 500万円以上
のすべてに該当するときです。
例外
ただ、上記の条件に該当していたとしても、その事業年度前の7年以内に
- 青色申告の取り消し処分を受けていない
- 過去の税務調査の不正所得金額(不正欠損金額)が500万円未満
のすべてに該当する場合は、“適正な申告”を行う旨を申し出をすることで青色申告の取り消しが見合わせとなります。
4、2期連続で申告書を期限内に提出しなかった場合
2期連続で申告書を期限内(2月16日~3月15日)に提出しなかった場合は、青色申告の取り消し対象となります。
5、帳簿書類に不備がある場合
帳簿書類に不備があるため、推計によらなければ正しい所得金額の計算ができない場合、青色申告の取り消し対象となります。
このような指摘を受けないために税理士に相談することをおすすめします。
青色申告が取り消されたらどうなる?
青色申告が取り消されたとしても、再申請することは可能です。
ただし、1年間は再申請ができなくなります。
2期連続で申告期限に遅れた場合
では、2期連続で申告期限に遅れたことにより、青色申告が取り消されてしまった場合を考えてみましょう。
例えば、
- 令和3年3月期
- 令和4年3月期
の2期連続で申告期限に遅れてしまったとします。
この場合、令和5年の2月に「青色申告の承認の取消通知書」が届き、令和4年の青色申告が取り消されてしまいます。
その後、1年間は青色確定の再申請ができず、令和6年3月に再申請が可能になります。
青色確定の適用は、再申請の翌期となるため、承認されれば、令和7年3月期から青色申告が適用されます。
分かりやすく表にまとめると、次のとおりです。
年度 | ||
---|---|---|
令和3年3月期 | 期限後申告 | 青色申告 |
令和4年3月期 | 期限後申告 ※令和5年2月に「青色申告の承認の取消通知書」が届く |
白色申告 |
令和5年3月期 | 期限内申告 | 白色申告 |
令和6年3月期 | 期限内申告 ※令和6年3月に「青色申告の再申請」をする |
白色申告 |
令和7年3月期 | 期限内申告 | 青色申告 |
※期限後申告とは、申告書を期限内(2月16日~3月15日)に提出しなかったことをいいます。
最後に
欠損金の繰越控除など、様々な特典が受けられる”青色申告”
しかし、一旦、青色申告が取り消されると、1年間は再申請することができなくなります。
これは、法人にとっても、個人事業主にとっても、大きな損失です。
だからこそ、青色申告が取り消されないように最大限の注意を払いたいことろ。
弊社では、青色申告が取り消されないように法人・個人の皆さまを全力でバックアップいたします。
- 帳簿のつけ方
- 申告内容
- 税務調査
など、税務に関して不安のある方は、お気軽にご相談ください。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。