社長や役員が受け取る給与の代わりとなる”役員報酬”
この役員報酬は、原則、毎月同じ金額を支給しなければならず、一度決めてしまうと後から自由に変更はできません。
だからこそ、役員報酬は慎重に決めていきたいところ。
この記事では、社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入できる最低額の役員報酬について解説しています。
役員報酬が少なすぎると社会保険に加入できない
会社の役員になっても社会保険に加入をしたい。
それなら、役員報酬を一定水準以上にする必要があります。
なぜなら、役員報酬が少なすぎると年金事務所から社会保険の加入を断られるケースがあるからです。
社会保険料以上の役員報酬を支給しよう
どのくらい役員報酬を支給すれば社会保険に加入できるか?は、お住まいの地域の年金事務所によって判断が変わってきます。
そのため、一概に「○○万円以上なら大丈夫」ということは言えませんが、最低限、実際にかかってくる社会保険料以上の役員報酬の支給をおすすめします。
具体的には、月額1万2,000円以上の役員報酬を設定しましょう。
大阪府で最低限かかる社会保険料
次は、大阪府の社会保険料(健康保険、厚生年金保険)の保険料額表です。
出典:全国健康保険協会「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の度保険料額表」
上記の表を見ると、標準報酬月額の最低額は、
- 健康保険料 → 63,000円以下で月額2,949.3円
- 厚生年金保険料 → 101,000円以下で月額8,052.00円
と設定されているのが分かります。
つまり、社会保険料に加入すると合計11,001.3円は毎月支払う必要があるということです。
役員報酬が社会保険料を下回っていると、会社としては役員から社会保険料を徴収しなければなりません。
だから、社会保険料の最低額である1万2,000円程度は確保しなければ、年金事務所から断られることになります。
ただ、この役員報酬は、最低限必要な金額であり、年金事務所から渋られる可能性は高いです。
所得税や住民税なども考慮すると、月額5万円以上の役員報酬が理想的となります。
家族なら「非常勤役員」にして扶養にしよう
家族を役員にするのであれば、非常勤役員にして年収130万円以下にすれば、扶養にすることができます。
社会保険ではなく、扶養になることで
- 将来受け取る年金が減ってしまう
- 「傷病手当金」や「出産手当金」などの給付を受けられなくなる
といったデメリットはありますが、扶養にすることで社会保険料の支払いを免れ、世帯単位で手取りを増やすことができます。
最後に
原則、役員報酬は1年に1回しか変更できません。
そのため、役員報酬を適当に決めてしまうと「社会保険に加入できなかった・・・」という他に
- 役員報酬が高すぎて、赤字になってしまった
- 役員報酬が低くすぎて、法人税が高くなってしまった
という事態にも陥ってしまいます。
法人税を安くするには、役員報酬を調整して、利益を0円に近づける必要があります。
ただし、役員報酬が高すぎれば、個人の税率が高くなると同時に社会保険料も上がってしまうデメリットがあります。
だからこそ、役員報酬をいくらにすれば、「法人税と個人の税金・社会保険料の総支払金額が安くなるのか?」「節税対策でどのくらい税金が安くなるか?」をしっかりとシミュレーションする必要があります。
その場合は、税務の専門家である私たちに『役員報酬の手取りを増やす節税方法』と合わせてご相談いただければと思います。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。