仮想通貨取引で利益を得ることができた。
そんなときに気になるのが、税金の扱いについてです。
通常、会社員が給与をもらったり事業者が営業活動によって利益を得るなど、何かしらの形で”もうけ”を出した場合は税金がかかってきます。
仮想通貨による取引も例外ではなく、儲けたお金については国が定めた計算方法で税金を算出して納めなければなりません。
この記事では、仮想通貨取引の税金の扱いについて詳しく解説していきます。
目次
仮想通貨とは
まずは、仮想通貨について簡単におさらいしましょう。
仮想通貨(暗号通貨)とは、インターネットを通じてやり取りできる通貨であり、主にブロックチェーンという仕組みで管理。
代表的な仮想通貨としては、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、バイナンスコイン(BNB)、テザー(USDT)、リップル(XRP)などがあります。
定義
仮想通貨は、資金決済に関する法律で次のように定義されています。
- 不特定の者に対して代金の支払い等に使用でき、かつ法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
- 電子的に記録され移転できる
- 法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない
使える店
日本国内において仮想通貨は法定通貨として認められていません。
国による価値の保証がなく、価値の変動も激しいことから代金の支払いが可能な店舗が限られています。
そのため、仮想通貨を投資目的(=値上がりにより利益をえるため)として購入する方が大半を占めているのが現状です。
仮想通貨取引で発生した利益には税金がかかる
ビットコインをはじめとする仮想通貨の価値は、円ドル相場のように刻一刻と変動しています。
そのため、仮想通貨を購入してから値上がりすることがあれば、売却により利益を得ることが可能です。
もちろん、予想と逆の値動きをするケースもありますが、過去には1年間で20倍以上に跳ね上がったことで”億り人(仮想通貨取引により資産1億円を稼いだ投資家)”と呼ばれる人たちが数多く誕生しました。
さて、仮想通貨取引により利益を得たときに注意していただきたいのが、売買損益に対して発生する税金です。
売買損益の計算方法
仮想通貨取引は、利益(売買損益)に対して税金が発生します。
計算方法は、次のとおりです。
利益 = 売却価格 - 取得価額
取得価額は「平均価格 × 売却数量」で算出することができ、平均単価ついては次のいずれかの方法で求めることが可能です。
移動平均法 | 仮想通貨を購入する都度、平均価格を求める方法 |
---|---|
総平均法 | 1年間に購入した仮想通貨の合計金額を購入数量で割って平均価格を求める方法 |
※一度選択したら翌年以降も継続する必要があるため、慎重に選択しなければなりません。
総合課税制度の対象
仮想通貨取引によって得た利益は、総合課税制度の対象となります。
総合課税制度とは、
- 利子所得(源泉分離課税とされるものなどは除く)
- 配当所得(源泉分離課税とされるものなどは除く)
- 不動産所得
- 事業所得(株式等の譲渡による事業所得を除く)
- 給与所得
- 譲渡所得(土地・建物等および株式等の譲渡による譲渡所得を除く)
- 一時所得(源泉分離課税とされるものを除く)
- 雑所得(株式等の譲渡による雑所得、源泉分離課税とされるものを除く)
の所得金額を合算して税金を計算する制度であり、累進課税により所得が多ければ多いほど税率が高くなる仕組みです。
仮想通貨取引は、上記のうちの雑所得に分類されます。
このことは国税庁が公表する「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」でも案内されています。
ビットコインをはじめとする仮想通貨を売却又は使用することにより生じる利益については、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に分類され、所得税の確定申告が必要となります。
出典:国税庁
なお、仮想通貨取引が赤字だった場合は、雑所得内で損益通算が可能です。
ただし、給与所得や個人事業主の事業所得とは損益通算でいないので注意しましょう。
仮想通貨取引の最高税率は55%
仮想通貨取引により多額の利益を得た場合は、最高税率55%が適用されます。
内訳は、
- 所得税:5~45%
- 住民税:10%
です。
所得税
所得税とは、その年の個人の所得に対してかかる国税です。
仮想通貨取引では、サラリーマンの給与所得や事業所得などを合算した所得が課税対象となります。
課税される所得金額 (課税所得) |
税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
参考:国税庁ホームページ
このとき先ほどの所得税の速算表では「900万円を超え 1,800万円以下」に該当。
所得税の計算方法は、次のようになります。
所得税 = 課税所得 × 税率 – 控除額 = 1,000万円 × 33% – 153万6,000円 = 176万4,000円
住民税
住民税とは、前年の個人の所得に対してかかる地方税です。
お住まいの地域によって税率は違ってきますが、課税所得のおおよそ10%がかかってきます。
仮想通貨取引で確定申告が必要な人
仮想通貨取引をしている場合、年間の利益額によっては確定申告が必要になるケースがあります。
確定申告とは、国に税金を納めるために自身で所得金額を計算して税務署に申告する制度であり、仮想通貨取引では次のような方が該当します。
会社員なら年間20万円以上
サラリーマンなど1ヵ所から給与の支払いを受けている場合は、年間20万円以上の利益が発生したら確定申告が必要です。
個人事業主なら年間48万円超
個人事業主、フリーランス、学生、専業主婦、無職などの場合は、年間48万円超の利益が発生したら確定申告が必要です。
なお、住民税の申告は、市区町村の市民税課などで住民税申告書を提出することで行うことが可能です。
仮想通貨取引と株式やFXは税金の計算方法が違う
仮想通貨取引と違って株式やFXは分離課税が適用されます。
分離課税とは、他の所得とは合算せず、決まった税率で税額が計算される方法です。
株式やFXの取引では、売却益に対して所得税と住民税を合わせて20%の税率が適用されることになります。
仮想通貨と株式やFXの税率を比較すると次のとおりです。
仮想通貨 | 株式・FX | |
---|---|---|
課税方法 | 総合課税 | 分離課税 |
3年間の繰越控除 | 対象外 | 対象 |
確定申告 | 年間20万円以上の利益で必要 (自営業などは年間48万円以上の利益で必要) |
特定口座の「源泉徴収あり」なら必要なし |
所得税 | 5~45% | 15% |
住民税 | 10% | 5% |
合計 | 15~55% | 20% |
※上記に加えて2037年12月31日までは、東日本大震災の復興のために所得税額の2.1%が復興特別税として徴収されます。
ご覧いただければ分かるとおり、大きな儲けを出したときは仮想通貨の税率のほうが高くなります。
3年間の繰越控除の対象外
仮想通貨取引は、3年間の繰越控除を適用できない点もデメリットです。
3年間の繰越控除とは、その1年間に発生した損失を翌年以降3年間にわたって繰越控除できる制度です。
このようなケースでは通常100万円の利益に対して税金が発生しますが、3年間の繰越控除により前年度の損失100万円を損益通算することが可能。
これにより2年間のトータルで利益が0円(= 100万円 - 100万円)となるため、税金はかかってきません。
※仮想通貨取引では、3年間の繰越控除が適用されないため、利益100万円に対して税金がかかってきます。
最後に
今回は、仮想通貨取引によって利益が発生したときの税金の扱いについて解説しました。
これまで株式やFX・CFDなどの投資経験がある方も仮想通貨取引をはじめるにあたっては税金の仕組みを見直したほうが良いでしょう。
特に仮想通貨取引で大きな儲けを出した場合は、
- 給与や不動産などの所得と合算される
- 累進課税により最大55%の税率が課される
ことによって非常に高い税負担がのしかかってくる可能性があります。
また、その年に損失が発生しても翌年以降の繰越控除が認められないため、利益確定のタイミングを見極める必要があります。
海外口座・取引所を用いても雑所得としての申告は必要であり、明確な抜け道はありません。
仮想通貨取引によって利益が発生したにも関わらず申告をしていなかった場合は、本来納めるべき税金に加えてペナルティを科せられる可能性があるので注意しましょう。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。