起業をするとき数ある法人形態から選ぶことになりますが、その1つが”NPO法人”となります。
NPO法人とは、社会的利益の追求を目的として設立される特定非営利活動法人です。
一方、私たちにとって身近な株式会社は、経済的利益の追求を目的として設立されるので、成り立ちが大きく違うことが分かります。
とは言え、どちらも法人税率は同じであり、税制上の違いもほとんどありません。
もちろん、NPO法人であっても、株式会社と同じように役員報酬の支給は認められています。
ただし、大きな違いもあるので、今回は、NPO法人における役員報酬の決め方について解説していきます。
役員報酬は役員総数の3分の1まで
先に言っておくと、NPO法人では役員報酬は役員総数の3分の1までと定められています。
具体的には、
- 役員が4~5名:役員報酬の支給は1名まで
- 役員が6~8名:役員報酬の支給は2名まで
- 役員が9~11名:役員報酬の支給は3名まで
となります。
なお、ここで言う役員とは「理事」「監事」のことを言います。
理事 | 社員から業務遂行を委任された役員です。内部的には業務遂行の権限、対外的には法人代表として取引先と契約などができる代表権を持っています。 |
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監事 | 理事の業務遂行の監督をすることを委任された役員です。法人の財務状況および理事の業務遂行を監督し検査する権限を持ちます。 |
NPO法人では、社会的な使命の達成を目的としていることから、一定数の無報酬役員を置く仕組みを取ることで高額な報酬による動機づけの阻止を図っています。
なお、内閣府による「特定非営利活動法人に関する実態調査」によれば、NPO法人の役員報酬の平均は年間106万円となっています。
法律
先ほど解説したNPO法人における役員報酬を受ける者の人数制限については、特定非営利活動促進法で定められています。
(定義)
第二条 この法律において「特定非営利活動」とは、別表に掲げる活動に該当する活動であって、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするものをいう。
2 この法律において「特定非営利活動法人」とは、特定非営利活動を行うことを主たる目的とし、次の各号のいずれにも該当する団体であって、この法律の定めるところにより設立された法人をいう。
一 次のいずれにも該当する団体であって、営利を目的としないものであること。
イ 社員の資格の得喪に関して、不当な条件を付さないこと。
ロ 役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の三分の一以下であること。出典:特定非営利活動促進法第2条第2項1号
NPO法人の役員は給与を受け取れる
ここまで読むと、役員報酬を受け取れなかった残りの役員は、無賃金で活動をしなければならないの?と考えるかもしれません。
しかし、役員報酬なしで働かせるといったことはありません。
実際には、NPO法人の理事は、職員と兼務(例:理事兼経理担当)することが可能。
労働の対価である役員給与として報酬を受け取ることができます。
つまり、
- 役員報酬:0円
- 役員給与:支給する
にするということです。
極端なことを言えば、何も仕事をしなくても役員であるだけで報酬を受け取ることが可能です。
役員給与は定期同額給与が原則
ここで知っておいてほしいことが、NPO法人の役員に支払われる「役員給与」は、定期同額給与が原則ということです。
定期同額給与とは、
- 定期(=毎月)
- 同額(=同じ)
給与を支給することを言います。
例えば、役員報酬を月30万円と設定すれば、毎月30万円を支給し続けなければなりません。
役員報酬の変更は期首から3ヶ月以内
NPO法人の役員に支給する「役員報酬」および「役員給与」は、
- 原則、期首(事業年度の開始日)から3ヶ月以内
のみ変更が認められています。
例えば、3月決算の法人の場合、役員報酬を変更できる時期は”4~6月”の3ヶ月間だけとなります。
最後に
今回は、NPO法人における役員報酬のルールについて解説してみました。
役員報酬および役員給与には、職員・スタッフへの給与と違って、原則、役員報酬は1年に1回しか変更できないなど一定のルールが設けられています。
これは、
- お手盛りの弊害を防ぐ
- 利益調整(=節税対策)を防ぐ
といった理由からです。
もし、役員報酬を事業年度の途中で勝手に変更してしまうと、一部が損金算入として認められず、無駄に税金を多く支払うことにも繋がります。
この他にも税金の世界では、多くのルールが存在します。
だからこそ、税金の心配事をすることなく安心してNPO法人の活動に集中したい場合は、税務の専門家である私たちにご相談いただければと思います。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。