スマートフォンの画面を提示して支払いができるQRコード決済サービス”PayPay(ペイペイ)”
昨年12月4日から10日間にわたって実施された”100億円あげちゃうキャンペーン”では、購入金額の20%が還元されるという太っ腹な企画で大きな社会現象を巻き起こしました。
筆者もキャンペーン期間中に「ミラーレス一眼カメラ」を10万円で購入して、”2万円の還元”を受けることができました。
当記事執筆時点にも”100億円キャンペーン”の第2弾が実施されて注目をあびています。
購入金額の20%の還元(1回あたり上限1,000円)を受けることが可能。
例えば、家電量販店で5,000円でインクカートリッジを購入すれば、1,000円(= 5,000円 × 20%)の還元を受けることができ、事業者にとってはお得に事務用品や消耗品を手に入れることができます。
さて、ここで気になってくるのが、PayPayで高額な還元を受けた場合の”税金の扱いについて”です。
この記事では、PayPayのポイント還元で儲けたら確定申告する必要があるのでしょうか?分かりやすく解説していきます。
目次
PayPayのポイント還元は「収入」として処理する
先に結論を言っておくと、原則、PayPayのポイント還元は「収入」として処理をします。
その根拠となるのが、国税庁の教育機関である税務大学校が公表する研究文書です。
ポイントの法律関係は、少なくともポイント付与の元になった取引とは別の何らかの給付を、対価を支払うことなく請求できる権利が付与されたものであると捉えることが適当であり、課税されるべき経済的利益にあたる。
また、国税庁の公式回答として「グリーン家電エコポイント」ではありますが、次のように言及されています。
Q、グリーン家電エコポイントや省エネ住宅ポイント(住宅エコポイント)を商品に交換した場合には、所得税の課税対象になりますか。
個人が、グリーン家電エコポイント対象製品の購入により付与されたポイントをエコポイント交換商品と交換した場合には、その交換商品の価額が経済的利益となり、その交換した日の属する年分の一時所得として所得税の課税対象になります。
出典:国税庁「No.1490 一時所得 Q&A」
しかし、実際のところは、近年急速に発達した民間企業によるポイント還元制度に法整備が追いついていないのが実情です。
そのため、PayPayのポイント還元やクレジットカードのポイント還元の扱いついては、お住まいの地域の税務署や税理士で意見が食い違ってくる可能性があります。
10万円以上の備品の購入に気をつけよう
PayPayのポイント還元が「値引き」ではなく、「収入」として扱われることで問題となるのが、10万円以上の備品を購入したときです。
PayPayの”100億円あげちゃうキャンペーン”第1弾では、家電量販店で12万円のノートパソコンを購入したとき、2万4,000円分のポイント還元を得ることができました。
このときポイント還元の扱いについて「収入」で処理したケースと「値引き」で処理したケースでそれぞれ比較してみます。
「収入」で処理 | 「値引き」で処理 | |
---|---|---|
取得価額 | 12万円 | 9万6,000円 |
収入 | 2万4,000円 | 0円 |
ここで注目すべきは、ポイント還元を「収入」で処理したとき、取得価額が10万円以上になる点です。
会計のルールでは、備品などの取得価額が”10万円以上”になると「固定資産」として計上しなければなりません。
固定資産は「長期に渡って使用されるもの」という扱いのため、取得した日(月)に一括経費にできず、減価償却として数年にわたって少しずつ経費に計上していく必要があります。
つまり、PayPayのポイント還元を「収入」で処理をした。
その結果、ノートパソコンの所得価額が10万円以上になってしまった場合は、次のいずれかの方法で減価償却しなければなりません。
減価償却資産 | 法律で資産の種類や構造によって規定される法定耐用年数で減価償却をする方法です。
例えば、12万円のノートパソコンの場合は、法定耐用年数は4年と規定されているので「1年目に3万円」「2年目に3万円」「3年目に3万円」「4年目に3万円」と経理処理をしていくことになります。 |
---|---|
一括償却資産 | 取得価額が10万円以上〜20万円未満の場合は、法定耐用年数に関わらず3年間で均等償却できます。
例えば、12万円のノートパソコンの場合は「1年目に4万円」「2年目に4万円」「3年目に4万円」と経理処理をしていくことになります。 |
少額減価償却資産の特例 | 取得価額が10万円以上〜30万円未満(年間300万円まで)で青色申告書を提出している「個人事業主」「中小企業者」「農業協同組合等」の場合は、取得した年度に一括で経理処理が可能です。
例えば、12万円のノートパソコンの場合は「1年目に12万円」の経理処理をしていくことになります。 |
所得区分は「一時所得」「事業所得」「雑所得」のいずれか
ここまでPayPayのポイント還元は「収入」となると解説しましたが、所得区分はどうなるのでしょうか?見ていきましょう。
原則、PayPayのポイント還元の所得区分については、商品購入の目的によって次のように変わってきます。
一時所得 | プライベートで商品を購入して還元された場合 |
---|---|
事業所得 | 事業に関連する商品を購入した還元された場合 |
雑所得 | 役務の提供(サービスの提供)の対価として還元された場合 |
確定申告が必要になるケース
先に言っておくと、PayPayを個人で利用する場合、確定申告はほぼ必要ありませんです。
なぜなら、
- 一時所得には50万円の特別控除額が設けられているから
です。
つまり、PayPayのポイント還元などによる一時所得が50万円以下であれば、確定申告は必要ないということです。
これまで実施された”100億円キャンペーン”をフル活用したとしてもポイント還元は、
- 第1弾 → 最大10万円
- 第2弾 → 最大5万円
の合計15万円にしかなりません。
PayPayだけでは年間50万円のポイント還元を得るのは到底不可能であり、ほとんどの方にとって確定申告は関係ないと言ってもいいでしょう。
公共競技で大きく儲けたら要注意
PayPayでのポイント還元が50万円を超えていない場合であっても、公営競技(競馬、競輪、競艇,オートレース)で大きな利益を上げると確定申告が必要となるケースがあります。
なぜなら、
- 公営競技による利益は一時所得に分類されてるから
です。
例えば、
- PayPayのポイント還元:5万円分
- 競馬の利益:33万円
- 競輪の利益:15万円
の場合は、一時所得が年間53万円となります。
この場合は、一時所得の合計が50万円を超えてしまったので確定申告が必要です。
例えば、ふるさと納税を4万円して返礼品をもらうと、1万2,000円程度が一時所得として扱われます。
最後に
今回は、PayPayで高額な還元を受けた場合の”税金の扱いについて解説しました。
基本的には、PayPayやクレジットカードのポイント還元は、値引きではなく「収入」になります。
しかし、実際のところ、国税庁による正式な見解は出されておらず、経済産業省や金融庁でも議論が重ねられているのが実情のようです。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。
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