小規模企業共済

小規模企業共済の老齢給付とは?条件や受取方法(一括・分割)まとめ

個人事業主やフリーランス、小さな会社のための退職金制度である”小規模企業共済

確定申告により掛金の全額(最大で年間84万円)を所得控除できるだけでなく、掛金以上のお金を受け取ることもできるお得な制度です。

例えば、掛金1万円を20年間にわたって積み立てた場合、掛金合計額240万円に対して最大278万6,400円(+36万6,400円)を受け取れます。

つまり、”節税対策”と”高い運用益”を享受できる一石二鳥の制度なのです。

しかしながら、小規模企業共済は良いことばかりではなく、解約理由によって受給額が大きく変わる点に気をつけなければなりません。

この記事では、小規模企業共済の解約理由の一つである”老齢給付”について詳しく解説します。

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小規模企業共済の老齢給付では、掛金240万円、納付月数20年で+25万2,800円も多く受け取ることが可能です。

小規模企業共済の老齢給付とは

小規模企業共済の”老齢給付”とは、

  • 65歳以上
  • 180ヶ月以上掛金を払い込んだ

という条件を満たしたときに受け取れる共済金(解約手当金)を言います。

次は、解約理由ごとに受け取れる共済金(解約手当金)を表にまとめたものです。

個人事業主 法人の役員
共済金A ・個人事業を廃止
・個人事業主の死亡
・法人が解散
共済金B ・老齢給付(65歳以上で180ヶ月以上掛金を払い込んだ方) ・老齢給付(65歳以上で180ヶ月以上掛金を払い込んだ方)
・病気、怪我で役員を退任
・65歳以上で役員を退任
・契約者の死亡
準共済金 ・個人事業の法人成りにより加入資格がなくなったので解約をした ・法人の解散、病気、怪我以外で役員を退任
・65歳未満で役員を退任

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老齢給付は、共済金Bに該当することが分かります。

続いて、共済金(解約手当金)ごとの受給額を見てみましょう。

共済金の種類ごとの受給額
掛金の納付月数 共済金A 共済金B 準共済金
5年
(掛金合計額60万円)
62万1,400円
(+2万1,400円)
61万4,600円
(+1万4,600円)
60万円
(+0円)
10年
(掛金合計額120万円)
129万600円
(+9万600円)
126万800円
(+6万800円)
120万円
(+0円)
15年
(掛金合計額180万円)
201万1,100円
(+21万1,100円)
194万400円
(+14万400円)
180万円
(+0円)
20年
(掛金合計額240万円)
278万6,400円
(+38万6,400円)
265万8,800円
(+25万8,800円)
241万9,500円
(+1万9,500円)
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共済金の種類を受給額は、共済金A > 共済金B > 準共済金になることが分かります。

老齢給付は計画が立てやすい

解約理由ごとに受け取れる共済金(解約手当金)の中でも一番計画が立てやすいのが”老齢給付(共済金B)“です。

共済金Aは、受給額が大きくメリットがありますが、個人事業の廃止や法人の解散など、事業の終了が条件になっています。

事業の終了は、事業が好調であっても事業不振に陥っていてもタイミングが難しく、例え「20年後に法人を解散する」と計画していても延長せざるを得ない状況に陥るケースは多々あります。

その点、老齢給付は、180ヶ月以上(15年以上)掛け金を払い込みさえいれば、確実に65歳以上で共済金を受け取ることが可能です。

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例えば、小規模企業共済を65歳のとき退職金の代わりに受け取りたいとすれば、40歳から掛け金の払い込みを始めれば良い計算になります。

任意解約は元本割れの可能性が高い

小規模企業共済は、20年(240ヶ月)未満で任意解約をした場合、解約手当金が掛金合計額を下回る”元本割れ”の状態になります。

※掛金を12ヶ月以上滞納した場合は任意解約と同様の条件です。

次は、小規模企業共済の任意解約による返戻率となります。

掛金の納付月数 支給割合(返戻率)
12ヶ月未満 0%(掛け捨て)
12ヶ月以上 84ヶ月未満 80.00%
84ヶ月以上 90ヶ月未満 80.50%
90ヶ月以上 96ヶ月未満 81.25%
以下6ヶ月ごとに0.75%ずつ増加
240ヶ月以上 246ヶ月未満 100.00%
246ヶ月以上 252ヶ月未満 100.25%
252ヶ月以上 258ヶ月未満 100.50%
以下6ヶ月ごとに0.25%ずつ増加
468ヶ月以上 474ヶ月未満 109.50%
474ヶ月以上 480ヶ月未満 109.75%
480ヶ月以上

※480ヶ月以降は、110%に480ヶ月を超える6ヶ月ごとに0.25%ずつ加えた支給割合となります。(ただし120%を上限とします。)

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小規模企業共済を自己都合で解約する場合は、元本割れとなる可能性が高くなります。

そのため、老齢給付を利用するなどの出口戦略が重要となっています。

小規模企業共済の受け取り方法(一括・分割)

小規模企業共済の老齢給付は、

  1. 一括受取り
  2. 分割受取り
  3. 一括受取りと分割受取りの併用

の3種類から受け取り方法を選択することができます。

1、一括受取り

小規模企業共済の老齢給付(共済金B)を一括で受け取る方法です。

例えば、共済金が500万円であれば、手続き後に500万円が一括で口座に振り込まれます。

2、分割受取り

小規模企業共済の老齢給付(共済金B)を分割で受け取る方法です。

老齢給付(共済金B)が300万円以上のときに選択することができます。

具体的な分割受取りの方法は、次のとおりです。

受取時期 年6回(毎年1月、3月、5月、7月、9月、11 月)
受取期間 10年または15年
1回あたりの額 老齢給付(共済金B)に分割支給率を乗じて得た額
10年の分割支給率:0.0175 +経済産業大臣の定める率
15年の分割支給率:0.0120 +経済産業大臣の定める率
※分割支給率は金利水準等の変動により変更されることがあります。

一括受取りと分割受取りの併用

小規模企業共済の老齢給付(共済金B)を一括と分割を併用して受け取る方法です。

老齢給付(共済金B)が330万円以上のときに選択することが可能。

基本的には、分割受取りと同じ方法で受け取ることになります。

小規模企業共済の老齢給付を請求する方法

小規模企業共済の老齢給付を受け取るには、手続きが必要になります。

手順としては、

  1. 必要書類の入手と記入をする
  2. 金融機関の窓口に提出・提示
  3. 中小機構へ送付する
  4. 老齢給付と書類の受け取りをする

の3ステップとなります。

1、必要書類の入手と記入をする

小規模企業共済の老齢給付(共済金B)を受け取るための書類は、

  • 印鑑登録証明書
  • マイナンバー(個人番号)確認書類
  • 共済金等請求書(様式 小 701)
  • 退職所得申告書
  • 預金口座振替解約申出書兼委託団体払解約申出書(様式 小 202・321)
  • 共済契約締結証書

の6種類です。

上記2つは簡単に入手できるでしょう。

その他は、小規模企業共済を運営する『中小機構のホームページ』からダウンロードや電話・FAXで入手することができます。

2、金融機関の窓口に提出・提示

小規模企業共済の掛金の引き落としがある金融機関に「預金口座振替解約申出書兼委託団体払解約申出書」を提出します。

また、老齢給付(共済金B)の受取りを希望する口座のある金融機関で「共済金等請求書」を提示し、口座の確認印を押してもらいます。

3、中小機構へ送付する

小規模企業共済の運営元の「中小機構」に必要書類を郵送します。

※先ほど金融機関に提出した「預金口座振替解約申出書兼委託団体払解約申出書」は除きます。

〒105-8453 東京都港区虎ノ門3-5-1 虎ノ門37森ビル
中小機構 小規模共済給付課

4、老齢給付と書類の受け取りをする

老齢給付(共済金B)は、審査完了後に指定の口座に振り込まれます。

また、中小機構から「支払決定通知書兼振込通知書」が送られてくるので受け取りましょう。

最後に

小規模企業共済は、途中で掛け金を減額してしまうと、

  1. 減額した掛金分は運用されない
  2. 減額した掛金分は納付月数にカウントされない

というデメリットが生じます。

小規模企業共済の掛金を減額するデメリット

そのため、小規模企業共済を契約するときは掛金を慎重に設定するとともに、最低でも何ヶ月払い込みをする必要があるのか把握しなければなりません。

老齢給付は、法人の解散や法人成りなど不確定要素に左右されず、180ヶ月以上の払込期間と65歳以上で確実に受け取れる解約手当金です。

小規模企業共済で退職金制度を整える場合は、老齢給付を基準に計画を練ることをおすすめします。

※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。

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