消費税

【消費税】課税売上割合とは?95%以上で全額仕入税額控除

消費税は、日本国内でモノやサービスを消費したときに発生する税金です。

この消費税については、法人、個人事業主に関係なく、課税売上高が1,000万円を超えると納税義務が発生します。

事業者における消費税の納税は、

  • 標準税率10%
  • 軽減税率8%

として商品やサービスに上乗せして”お客様から預かった消費税”を国に納付する仕組みです。

例えば、売上高1,500万円(税抜)であれば、顧客から150万円の消費税を預かることになります。

しかし、この消費税150万円を丸々国に納めるのではなく、仕入や経費で支払った消費税を仕入税額控除として差し引くことが可能です。

つまり、顧客から預かった消費税が同じ場合は、仕入税額控除が多いほど消費税の納税額を減らせます。

そして、仕入税額控除の計算において重要となってくるのが課税売上割合です。

この記事では、消費税の納税額の計算において重要となる課税売上割合について分かりやすく解説してきます。

消費税の納税額の計算方法

まずは、課税売上割合を理解する上で知っておきたい「消費税の納税額の計算方法」を簡単におさらいしましょう。

消費税の計算式は、次のとおりです。

消費税の納税額 = 預かった消費税 - 支払った消費税

預かった消費税とは、商品の販売などをしたとき消費者から預かったお金です。

支払った消費税とは、事業者が仕入れなどをしたときに支払った消費税であり、仕入税額控除(課税仕入にかかる消費税額を控除)が当てはまります。

国税庁ホームページでは、仕入税額控除の対象となるものとして次の取引があげられています。

  1. 商品などの棚卸資産の購入
  2. 原材料等の購入
  3. 機械や建物等のほか、車両や器具備品等の事業用資産の購入又は賃借
  4. 広告宣伝費、厚生費、接待交際費、通信費、水道光熱費などの支払
  5. 事務用品、消耗品、新聞図書などの購入
  6. 修繕費
  7. 外注費

なお、給与等の支払は課税仕入れとなりませんが、加工賃や人材派遣料のように事業者が行う労働やサービスの提供の対価には消費税が課税されます。

出典:国税庁「仕入税額控除の対象となるもの」

消費税が課税されない取引

しかしながら、消費税は、全ての取引で課税されるわけではありません。

次の表で示した”消費税の取引一覧”のうち「不課税取引」「非課税取引」「免税取引」については、消費税が課税されない取引となります。

消費税の取引一覧
課税取引 消費税が課税される取引です。
不課税取引 消費税が課税される4つの要件(1 国内において行われる取引、2 事業者が事業として行う取引、3 対価を得て行う取引、4 資産の譲渡、資産の貸付け又は役務の提供)を満たさない取引をいいます。国外取引、従業員への給与、保険金、租税公課などが該当します。
非課税取引 消費税が課税される4つの要件に当てはまっていても「消費税という税の性格になじまない」「社会政策的配慮」から消費税を課税しない取引を言います。土地の譲渡または貸付、商品券、プリペイドカードの譲渡、社会保険医療の給付などが該当します。
免税取引 課税取引に該当するが税率が「0%」になる取引をいいます。商品の輸出や輸出類似取引、国際輸送などが該当します。

消費税の「不課税」「非課税」「免税」の違いを分かりやすく解説

芦屋会計
消費税が課税されない取引については「預かった消費税」「支払った消費税」には含めません。

そのため、消費税の納税額を計算するためにあらかじめ区分しておく必要があります。

消費税の課税売上割合の計算方法

課税売上割合とは、総売上に占める課税売上高の割合を言います。

課税売上高を計算する場合は、

  • 課税される売上:課税取引
  • 課税されない売上:不課税取引、非課税取引、免税取引

を区分します。

それから次の計算式に数値を当てはめていきます。

出典:国税庁

  • 課税期間中の課税売上高(税抜)は「課税売上高」「免税売上高」の合計額です。
  • 課税期間中の総売上高(税抜)には「課税売上高」「非課税売上高」「免税売上高」の合計額が入ります。

具体的には、次のような計算式となります。

課税売上割合 課税売上高+免税売上高
課税売上高+非課税売上高+免税売上高

例えば、課税売上高5,000万円、非課税売上高100万円、免税売上高100万円の場合は、約98.1%と求めることが可能です。

課税売上割合 =(課税売上高 + 免税売上高)÷ ( 課税売上高 + 非課税売上高 + 免税売上高)= 5,100万円 ÷ 5,200万円 = 0.9807… = 約98.1%

課税売上割合の95%ルール

先ほど計算した課税売上割合は「95%以上」「95%未満」で仕入税額控除の金額が大きく変わることになります。

なお、課税売上割合を判定する場合は、四捨五入は行わないものとします。

芦屋会計
例えば、課税売上割合が94.99999%であれば「95%未満」と判定されるので注意しましょう。

課税売上割合が95%以上

「課税売上割合が95%以上」かつ「課税売上高が5億円以下」であれば、全額を仕入税額控除できることが認められています。

課税売上割合ごとの仕入税額控除の有無
課税売上割合 課税売上高 仕入税額控除
95%以上 5億円以下 全額
5億円超 個別対応方式
または
一括比例配分方式
95%未満

通常、非課税売上高を得るための「仕入れ等に係る消費税」は控除できません。

なぜなら、

  • 非課税売上高の場合、消費者は消費税を負担しないから

です。

そのため、仮に事業者が非課税売上高を得るための「仕入れ等に係る消費税」も控除対象となった場合は、消費税を負担する者がいないのに事業者は仕入税額控除により消費税を減額できてしまいます。

このような不都合を防ぐために課税売上高に対応する仕入れだけを控除できることを原則としています。

芦屋会計
ただ「課税売上高」と「非課税売上高」を区分して計算していくと事務処理の負担が大きくなります。

そこで「課税売上割合が95%以上」かつ「課税売上高が5億円以下」であれば、非課税売上高を得るための「仕入れ等に係る消費税」についても仕入税額控除として扱うことが認められています。

課税売上割合が95%未満

「課税売上割合が95%未満」または「課税売上高が5億円超」の場合は、

  • 個別対応方式
  • 一括比例配分方式

のどちらか有利な方法で仕入税額控除の金額を求めることになります。

芦屋会計
一般的には個別対応方式を選択したほうが有利になるケースが多くなっています。

個別対応方式

個別対応方式とは、その課税期間中に行った課税仕入に係る消費税額を区分してから計算する方法を言います。

具体的には、

  • (1)課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの(課税売上に繋がる仕入)
  • (2)非課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの(非課税売上に繋がる経費)
  • (3)課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れ等に係るもの

の3つのいずれかに区分をします。

続いて、次の計算式に(1)(2)の数値を代入して仕入税額控除を求めます。

仕入税額控除 = (1)+ ((2)× 課税売上割合)

一括比例配分方式

一括比例配分方式とは、その期間中に行った課税仕入に係る消費税額に課税売上割合を掛けて計算する方法を言います。

次の計算式で求めることができます。

仕入税額控除 = 課税仕入れ等に係る消費税額 × 課税売上割合

ただし、一括比例配分方式を選択した場合は、2年以上継続して適用する必要があるので注意が必要です。

課税売上割合に準ずる割合

課税売上割合が95%以上かつ課税売上高5億円以下であれば、全額を仕入税額控除できることから税制面で有利です。

ただ、非課税取引である土地の譲渡などで一時的に課税売上割合が低くなってしまうことがあります。

このときは、所轄の税務署長に「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」を提出して承認を受けることができれば、

  • 前期の課税売上割合
  • 前年以前3年間における通算課税売上割合

のいずれか低い割合を”課税売上割合に準ずる割合”として計算に用いることができます。

芦屋会計
本来の事業実態で課税売上割合の計算ができるということですね。

そのため、この課税売上割合に準ずる割合を適用するには、課税売上割合の低下が一時的であることが要件となっています。

課税売上高5,000万円以下なら「簡易課税」を選択できる

課税売上割合が95%未満になった場合は「個別対応方式」または「一括比例配分方式」により若干複雑な処理が発生します。

そんなときは、簡易課税を選択することも可能です。

課税売上高5,000万円以下であれば選択することができ、課税売上割合を考慮する必要がありません。

簡易課税とは、消費税の計算方法の一つであり「支払った消費税」の計算が不要なのが特徴です。

計算式は、次のようになります。

消費税の納付額 = 「預かった消費税 - 預かった消費税 × みなし仕入率」 = 「預かった消費税 - 仕入控除税額」

みなし仕入率は、業種ごとに次のように定められています。

みなし仕入率 該当する事業
90% 卸売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業)をいいます。
80% 小売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で第一種事業以外のもの)をいいます。
70% 農業、林業、漁業、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含みます。)、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業をいい、第一種事業、第二種事業に該当するもの及び加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除きます。
※2019年10月1日よりみなし仕入率は80%となります。
60% 第一種事業、第二種事業、第三種事業、第五種事業及び第六種事業以外の事業をいい、具体的には、飲食店業などです。
なお、第三種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業も第四種事業となります。
50% 運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業に該当する事業を除きます。)をいい、第一種事業から第三種事業までの事業に該当する事業を除きます
40% 不動産業

参考:国税庁「簡易課税制度の事業区分」

例えば、小売業(みなし仕入率80%)、売上高2,200万円(内消費税200万円)、仕入高1,100万円(内消費税100万円)の会社があった場合、次のように計算できます。

消費税の納付額 = 200万円 - 200万円 × 80% = 200万円 - 160万円 = 40万円

簡易課税について詳しくは、次の記事で解説してます。

簡易課税とは?売上5000万円以下なら消費税を節税できる可能性あり

最後に

課税売上高とは、総売上に占める消費税が課税される売上高の割合です。

通常、課税売上高と非課税取引に対する仕入れなどについては、それぞれ区分をして計算しなければなりません。

しかし、

  • 課税売上高割合が95%以上
  • 課税売上高が5億円以下

の条件を満たしていれば、全てを仕入税額控除として事務処理することが可能です。

これにより事務処理の手間が軽減されるだけでなく、通常は認められない「仕入税額控除」を適用できることで節税効果もあります。

※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。

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