税金の知識

非常勤役員に定期同額給与を支給【報酬が否認されるケース】

同族会社(家族経営の会社)では、家族(親、妻、兄弟、子供)を非常勤役員としているケースが多くあります。

これは、家族を非常勤役員にすることで

  • 所得を分散して世帯単位で税金の負担を減らすことできる

というメリットがあるためです。

妻を社会保険の扶養範囲にするなら「非常勤役員」「年収130万円未満」にするべし

この記事では、非常勤役員に報酬を支給するときのルールについて分かりやすくまとめました。

非常勤役員には定期同額給与を支給する

先に行っておくと、非常勤役員には定期同額給与を支給しなければなりません。

定期同額給与とは、

  • 定期(=毎月)
  • 同額(=同じ)

給与を支給することを言います。

国税庁ホームページでは、定期同額給与について次のように定義されています。

(1) その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与(以下「定期給与」といいます。)で、その事業年度の各支給時期における支給額又は支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額であるもの

出典:国税庁「役員給与に関するQ&A」

芦屋会計
ただし、期の途中で「常勤から非常勤」「非常勤から常勤」など、役員の職務上の地位の変更があった場合は『臨時改定事由』により役員報酬を変更できるケースがあります。

非常勤役員は「役員」として扱われる

非常勤役員に定期同額給与を支給するのは、法律上「役員」として扱われるからです。

役員とは、会社経営の意思決定をする役職に就いている人のことを言い、労働基準法の対象外となります。

役員と従業員の違いを表にまとめると、次のとおりです。

従業員 役員
契約 雇用契約 委任契約
労働基準法 対象 対象外
報酬 給与 役員報酬
残業代 支給する義務がある 支給する義務はない

役員は、

  1. お手盛り(自己利益を追求すること)
  2. 利益調整(役員報酬を操作して過度に節税すること)

が従業員と比較して容易であることから”定期同額給与”という制限が設けられています。

役員報酬で知っておきたい「定期同額給与」の考え方を徹底解説

非常勤役員の報酬が否認されるケース

非常勤役員に報酬を支給する場合は、ルールに従わないと否認されるケースがあります。

非常勤役員に年俸で報酬を支給

非常勤役員に年俸(1年に1度支給)として報酬を支給する場合は、損金算入できない可能性があります。

なぜなら、

  • 定期同額給与は、支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与

と定義されているからです。

例え、60万円(= 月5万円 × 12ヶ月)と計算して年俸を支給していても、支給が1年単位である限りは定期同額給与として認められません。

このことは、国税庁ホームページでも明記されています。

例えば、非常勤役員に対し年俸又は事業年度の期間俸を年1回又は年2回所定の時期に支給するようなものは、たとえその支給額が各月ごとの一定の金額を基礎として算定されているものであっても、同号に規定する定期同額給与には該当しないことに留意する。

非常勤役員に月300万円を支給

非常勤役員の報酬が「不相当に高額」な場合は、損金算入できない可能性があります。

不相当に高額については「利益の○%まで」「従業員の給料の○倍まで」「同業他社の役員報酬の○倍まで」といった具体的な数値の定めはありません。

しかしながら、過去の判例から

  • 役員の職務の内容
  • 会社の収益
  • 使用人に対する給与の支給状況
  • 事業規模が類似する同業他社の役員報酬の支給状況

を照らし合わせて報酬の妥当性が判断されるものとされています。

役員報酬の上限・限度額とは?「不相当に高額」な場合は損金不算入

最後に

今回は、非常勤役員に報酬を支給するときのルールについてまとめてみました。

常勤役員と非常勤役員には、明確な基準はなく、勤務実態に基づいた複数の判断材料によって判断されます。

どちらにしても定期同額給与のルールに沿って、一定期間に同じ金額の報酬を支給しなければなりません。

このルールを無視した場合は、税務署から報酬の損金算入が否認される可能性もあるので注意しましょう。

※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
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