【副業の節税対策】事業所得の赤字と給与所得を損益通算できる?

ここ数年、政府の働き方改革の影響などにより副業を解禁する企業が徐々に増えています。

これに伴ってサラリーマンの働き方にも変化がおき、平日日中は本業として働きながら、就業後や週末などの空き時間を活用して”副業”する人が増えました。

副業といってもアルバイト・パートではなく、企業に属さない個人事業として始める方もいます。

例えば、

  • Webライター・アフィリエイト・You Tuber
  • せどり・転売・ネットショッピング
  • 不動産投資・アパート経営・民泊

などです。

個人事業の場合は、必ず稼げるわけではなく、いくら投資をして時間をつぎ込んでも赤字に陥るケースはよくあることです。

そんなときは、本業であるサラリーマンの給与所得から事業所得の赤字を差し引ける可能性があります。

この記事では、事業所得の赤字と給与所得の損益通算について解説していきます。

給与所得と事業所得の損益通算による節税効果

まずは、給与所得と事業所得の損益通算により「どのくらいの節税効果があるのか?」を見ていきましょう。

今回は、

  • 給与所得600万円
  • 給与所得600万円から事業所得の赤字120万円を差し引く

ときの「税金」と「社会保険料」の合計金額をそれぞれ比較してみます。

給与所得のみ 給与所得と事業所得を損益通算
給与所得 600万円 600万円
事業所得 0円 −120万円
課税所得 600万円 480万円
所得税 16万9,800円 9万4,300円
住民税 27万6,000円 19万4,700円
合計 49万9,800円 28万9,000円

※基礎控除および配偶者特別控除を適用しています。会社や地域によって違ってきますので目安として考えてください。

給与所得から事業所得を差し引いたことにより、所得税および住民税を算出する元になる「課税所得」が大幅に減りました。

これにより税金の負担が大幅に減り、20万9,000円の節税効果を得ることができました。

給与所得と損益通算できる所得区分

ここで注意が必要となるのは、給与所得と損益通算できるのは、

  • 事業所得の損失
  • 不動産所得の損失
  • 譲渡所得の損失(総合課税に限る)
  • 山林所得の損失

の4種類に限らる点です。

次は、サラリーマンが副業した場合に区分される所得一覧となります。

所得区分の一覧表
事業所得 商業、工業、漁業、農業、自由職業などの事業によって生じる所得
不動産所得 土地や建物、船舶や航空機などの貸付けによって生じる所得
利子所得 公社債や預貯金の利子などの所得
配当所得 株式の配当、証券投資信託の分配金、法人から受ける剰余金の配当などの所得
給与所得 給与、賃金、賞与、歳費などの所得
譲渡所得 土地、建物、借地権、株式、ゴルフ会員権、機会などを譲渡したことによる所得
一時所得 生命保険の一時金、賞金、懸賞当選金などの一時的に生じた所得
山林所得 所有期間が5年を超える山林を伐採して譲渡して生じた所得
退職所得 退職金、一時恩給、老齢給付金などの所得
雑所得 公的年金(国民年金、厚生年金、企業年金、恩給など)、原稿料、生命保険の年金など、他の9種類に分類できない所得

副業で企業に属してアルバイト・パートをする場合は「給与所得」に区分。

個人事業の場合は、原則として「雑所得」「事業所得」「不動産所得」のいずれかに区分されることになります。

不動産所得については、次の記事で詳しく解説しています。

確定申告は家賃収入でも必要?不動産所得の計算方法を解説

2020.01.14

サラリーマンの副業は「雑所得」になるケースが多い

給与所得と個人事業の赤字を損益通するには

  • 事業所得
  • 不動産所得

として所得区分されなければなりません。

しかし、主な所得が給与所得となっているサラリーマンの場合、副業による所得は、税務署側から雑所得として扱われる可能性が高くなっています。

雑所得とは

雑所得とは、他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得をいいます。

国税庁ホームページでは、次のようなケースは雑所得に該当するとされています。

給与所得者の副収入としては、様々なものが考えられますが、例えば次のような所得については、一般的には、それぞれ雑所得に該当します。

  1. インターネットのオークションサイトやフリーマーケットアプリなどを利用した個人取引による所得
    (具体例)
    ・衣服・雑貨・家電などの資産の売却による所得
    ※生活の用に供している資産(古着や家財など)の売却による所得は非課税(この所得については確定申告が不要)で損失は生じてないものとみなされます。
    ・自家用車などの資産の貸付けによる所得
    ・ベビーシッターや家庭教師などの人的役務の提供による所得
  2. ビットコインをはじめとする仮想通貨の売却等による所得
  3. 民泊による所得
    ※個人が空き部屋などを有料で旅行者に宿泊させるいわゆる「民泊」は、一般的に、利用者の安全管理や衛生管理、また、一定程度の観光サービスの提供等を伴うものですので、単なる不動産賃貸とは異なり、その所得は、不動産所得ではなく、雑所得に該当します。
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その他、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などは、継続性がないと判断されるため雑所得になります。

雑所得と判定された場合は、給与所得と損益通算できないので注意しましょう。

サラリーマンの副業が事業所得に判定される条件

サラリーマンの副業で事業所得として判定されるには、どうすれば良いでしょうか?

結論を言っておくと、事業所得の要件となる”事業性”については、所得税法施行令では「相当の対価を得て継続的に行う」と定義されているだけで明確な線引はありません。

しかしながら、過去の裁判の判決の実例から事業所得として認められるための基準を読み取ることは可能です。

次は、大学の准教授が執筆及び講演等の業務から生じる所得を「事業所得」として申告したところ認められずに「雑所得」として判定されたケースです。

所得税法第27条第1項及び所得税法施行令第63条に規定する「事業」については、その意義自体について一般的な定義規定を置いていないところ、その意味するところは、自己の危険と計算において独立して行う業務であり、営利性・有償性を有し、かつ、反復継続して業務を遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められるものであると解される。

そして、ある所得が事業所得に当たるか否かを判断するに当たっては、当該所得が社会通念上「事業」といえる程度の規模・態様においてなされる営利性、有償性、反復継続性をもった活動によって生じる所得か否かによって判断すべきであり、この場合において「事業」といえる程度の規模・態様においてなされる活動といえるかどうかは、自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無、その者の精神的肉体的労務の投入の有無、人的・物的設備の有無、その者の職業・経験及び社会的地位等を総合的に勘案して判断すべきである。

出典:国税不服審判所「平成26年9月1日裁決」

上記の判例では、

  • 営利性・有償性
  • 継続性・反復性
  • 自己の危険と計算における事業遂行性

が基準となっていました。

営利性・有償性

事業所得として認められるには、営利活動で収益を上げていなければなりません。

商品やサービスを無償や著しく安い対価で提供している場合は、事業性が否認される可能性があります。

継続性・反復性

事業所得として認められるには、その事業で継続的に利益を得ていなければなりません。

単発による依頼で一時的な所得に過ぎない場合は、事業所得として認められない可能性があります。

自己の危険と計算における事業遂行性

事業所得として認められるには、事業主が責任・リスクを負って事業を遂行していなければなりません。

例えば、アパート・駐車場経営を行っているが利用者は親戚だけだったり、事業の運転資金を親族・友人から無期限・無利子で借りていたりすると事業所得として認められない可能性があります。

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本ケースでは、業務に必要な取材活動や営業活動を裏付ける証拠等がなかったり、原稿を執筆したことを裏付ける書面およびデータが残っていないなども「事業所得」として認められない理由となりました。

サラリーマンの副業が「事業所得」として認められるメリット

サラリーマンの副業が「事業所得」として認められた場合、給与所得から損益通算できる以外にもメリットがあります。

次は、税務署に「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」を提出したときに受けられる税制優遇です。

青色申告の特典一覧
青色申告特別控除 不動産所得または事業所得で事業を営んでいる青色申告者は、最高65万円の控除ができます。※不動産所得は事業的規模(アパートやマンションを10室以上貸しているなど)である必要があります。
青色事業専従者給与 青色申告者と生計を一にしている配偶者や親族(15歳以上)に支払っている給与を必要経費に算入することができます。
貸倒引当金 事業所得で事業を営んでいる青色申告者は、その事業で生じた貸金(売掛金、貸付金など)の貸倒れによる損失の見込額として、年末における貸金の帳簿価額の合計額の5.5%以下(金融業は3.3%)を必要経費にできます。
純損失の繰越しと繰戻し 事業所得などで赤字になった場合は、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年の所得金額から控除できます。

特に青色申告特別控除はメリットが大きく、所得(売上 - 必要経費)が65万円以下であれば、青色申告特別控除の最高65万円の適用により所得税が発生しなくなります。

その他にも個人事業により大幅な赤字が発生して給与所得から赤字分を差し引いて申告した。

しかし、それでも尚、赤字が残っていた場合は、翌年以後3年間にわたって給与所得から赤字分を差し引くことができます。

サラリーマンの副業が「雑所得」の場合は、確定申告が必要ないケースもある

サラリーマンの副業で「雑所得」と判定される場合、年間の所得が20万以下であれば確定申告は不要です。

所得とは、収入から必要経費を差し引いた金額となります。

所得 = 収入 - 必要経費

例えば、ライターで副業収入を得ている場合は、執筆にあたって必要となる資料の書籍代や調査のための旅費は必要経費として認められる可能性があります。

仮に

  • ライターの収入:21万円
  • 書籍代:2万円

であれば、所得は20万円を下回るので確定申告の必要はありません。

住民税の申告は必要

副業は所得金額が20万円以下であれば、確定申告の必要はありません。

しかし、副業の所得が20万円以下であっても住民税は金額にかかわらず課税されるため申告は必要です。

住民税の申告は、市区町村の市民税課などで住民税申告書を提出することで行うことができます。

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住民税が無申告だった場合は、追徴課税や延滞金を課せられる可能性があるので注意しましょう。

最後に

通常、サラリーマンは、給与から税金が天引き(源泉徴収)され、年末に納税額の過不足を調整する「年末調整」を行ってくれるので確定申告の必要はありません。

しかし、サラリーマンで個人事業として「副業」をした場合は、年間20万円超の所得により確定申告が必要になります。

ご自身で確定申告をする場合は、当然のことながら最低限の税金の仕組みは知っておくべきです。

特に副業収入が順調に伸びてきた場合は、節税の余地も大きくなることから税金のことをよりよく知っておくことをオススメします。

税金の世界では「知らない人が損をして、知っている人が得をする」制度が数多くあり、税務署も積極的には教えてくれません。

弊社では、税金を安くしたいがあまり、虚偽や不正を働くことは長期的にマイナスにつながると考えていますが、意味のある節税対策は積極的に行うべきだと考えています。

大阪、京都、神戸限定にはなりますが、副業収入が大きくなったことで税金の負担が大きくなって困った場合は、私たちにお気軽にご相談ください。

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