2008年にスタートした寄付金税制の一つ「ふるさと納税」
自分が応援したい自治体(都道府県・市区町村)に寄付をすることで、寄付金額の2,000円を除いた全額を「住民税」や「所得税」から控除できる制度です。
それだけでなく、自治体によっては、その地域の特産品・名産品等を「返礼品」として受け取ることもできます。
節税対策ができて地方の特産品も楽しめる一石二鳥の”ふるさと納税”ですが、条件によっては確定申告が必要になるケースもあります。
この記事では、ふるさと納税で確定申告が必要なケースと税務署の確定申告書等作成コーナーで作成する方法・やり方を解説します。
目次
確定申告とは
まずは、確定申告について簡単におさらいしましょう。
確定申告とは、国に税金を納めるために自身で所得金額を計算して税務署に申告する制度です。
具体的には、
- 毎年1月1日から12月31日の期間に発生した所得や経費から所得税を計算して税務署に提出する一連の流れ
を言います。
ふるさと納税は「ワンストップ特定制度」で確定申告が不要
ふるさと納税では「ワンストップ特定制度」を利用することで確定申告なしで税額控除を受けられます。
手順は、
- 自治体に「ワンストップ特例制度の申請書(寄附金税額控除に係る申告特例申請書)」と「本人確認書類」を郵送するだけ
です。
ワンストップ特例制度の申請書は、ふるさと納税をポートルサイト(ふるさとチョイス、ふるなび、さとふる、楽天ふるさと納税など)から申し込むときに「申請書の要望」にチェックを入れれば、返礼品と一緒に届けられます。
ふるさと納税の「ワンストップ特定制度」を適用できないケース
ただし、ふるさと納税の「ワンストップ特定制度」は、
- 確定申告の必要がある
- 1月1日〜12月31日にふるさと納税を6自治体以上にした
- ふるさと納税をした全ての自治体に「ワンストップ特例制度の申請書」を提出できなかった
のいずれかに当てはまると適用できません。
確定申告の必要がある
ふるさと納税の「ワンストップ特定制度」は、確定申告をすると無効になります。
つまり、確定申告が必要となる個人事業主やフリーランスなどは「ワンストップ特定制度」は利用できません。
また、サラリーマンであっても次の条件に当てはまれば、確定申告が必要となることから、同じく「ワンストップ特定制度」の利用は不可です。
- 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
- 1ヵ所から給与の支払いを受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人(副業や株式売買など)
- 2ヵ所以上から給与の支払いを受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
- 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
- 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
- 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
- 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人
その他、
- 住宅ローン控除(住宅ローンを組んで新築住宅を購入した場合)
- 医療費控除(自分や家族の医療費を10万円以上支払った場合)
などを適用できる場合は、節税対策のために確定申告をするべきです。
1月1日〜12月31日にふるさと納税を6自治体以上にした
ワンストップ特例制度の適用条件の1つが”1年間の寄付先は5自治体以内に限る”です。
そのため、寄付先が6自治体以上になると「ワンストップ特例制度」が適用できず、確定申告が必要となります。
- 大阪府枚方市「ブールミッシュギフトセット」
- 大阪府河内長野市「マルチエアマット」
- 大阪府藤井寺市「国産黒部和牛サーロインステーキセット」
- 大阪府豊能町「有機栽培珈琲と焼き菓子セット」
- 大阪府茨木市「ティラプリ」
- 大阪府茨木市「特選和牛ハンバーグ」
にした場合、大阪府茨木市の2回分は1自治体としてカウント。
合計5自治体となるので、ワンストップ特例制度の適用で確定申告は不要となります。
ふるさと納税をした全ての自治体に「ワンストップ特例制度の申請書」を提出できなかった
ワンストップ特例制度の申請書は、ふるさと納税をした翌年の1月上旬までに提出しなければなりません。
※2019年度のふるさと納税では、2020年1月10日が必着となっていました。
国税庁の確定申告書等作成コーナーで「ふるさと納税」をする方法
ふるさと納税の「ワンストップ特定制度」を適用できない。
そんなとき確定申告書を作成するのに便利なのが確定申告書等作成コーナーです。
確定申告等作成コーナーとは、画面上の支持に従って項目を入力するだけで簡単に確定申告書等が作成できる国税庁運営のサービスです。
今回は、スマートフォンを利用して「確定申告等作成コーナー」で確定申告書を作成する方法を紹介します。
※スマホで確定申告の対象者は、サラリーマンや副業収入、年金収入がある方となります。個人事業主やフリーランスなど事業所得等を得ている方は、パソコンをご利用ください。
まずは、国税庁の『確定申告書等作成コーナー』に移動してから「作成開始」をタップします。
申告内容に関する質問
まずは、申告内容に関する質問に答えます。
今回は「書面」を選択した場合の流れを解説していきます。
※e-Tax(ID・パスワード方式)を選択した場合の流れは『確定申告をスマホで簡単作成!医療費控除やふるさと納税に対応』を参考にしてください。
▲質問内容は「提出方法(e-Tax、書面)」「申告する収入(給与、公的年金、雑、一時、それ以外の収入)」「源泉徴収は1枚のみか」「勤務先で年末調整が済んでいるか」「医療費控除または寄附金控除はあるか」「その他、確定申告で追加する控除や年末調整の内容に変更はあるか」「住宅に関する控除または外国税額控除はあるか」となります。
※回答内容によっては、収入・所得金額の入力時にPC版の画面に移動します。
申告書作成前の確認
本人情報の確認で「生年月日」を選択します。
「利用規約の確認」をしてから「同意して次へ」をタップします。
給与所得の入力
給与所得の入力では、お手持ちの「給与所得の源泉徴収票」を見ながら入力していきます。
▲年末調整済み源泉徴収票の場合は「支払金額」「所得控除の額の合計額」「源泉徴収税額」「(源泉)控除対象配偶者控除等、配偶者(特別)の額」「控除対象扶養親族の数」「社会保障料等の金額」「生命保険料の控除額の記載の有無」「地震保険料の控除額の記載の有無」「住宅借入金等特別控除の額の記載の有無」「本人が障害者、寡婦・寡夫、勤労学生の記載の有無」「支払者の住所または所在地」「支払者の氏名または名称」を入力・選択します。
控除の入力
控除の入力では、
- 医療費控除:一定額以上の医療費の支払いやセルフメディケーションの対象となる医薬品の領収書がある方
- 寄付金控除・政党等寄付金等特別控除:「ふるさと納税」「特定の政治献金」「認定NPO法人」「公益社団法人」などに寄付をした方、個人が政党または政治資金団体に政治活動に関する寄附を行った方
から選択して入力していきます。
ふるさと納税の確定申告をする場合は「寄付金控除・政党等寄付金等特別控除」を選択する必要があります。
医療費控除
適用する医療費控除は「医療費控除を適用」「セルフメディケーション税制を適用」から有利な方法を1つ選択できます。
「控除額を試算する」に移動してから必要事項を入力すれば、どちらが所得税額について有利になるか判定することも可能です。
寄付金控除・政党等寄付金等特別控除
寄付金の入力で「ふるさと納税」を追加するには「+」をタップします。
ふるさと納税の内容を記入していきます。
寄付年月日とは「寄附金受領証明書」に記載された納付日付です。
寄付金の種類は「市区町村に対する寄付金(ふるさと納税など)」または「都道府県に対する寄付金(ふるさと納税など)」を選択します。
その他、寄付先の都道府県・市区町村、支出した寄付金の金額を入力しましょう。※寄付先の所在地、寄付先の名称は自動入力されます。
令和1年5月1日、大阪府大阪市に「20,000円」、兵庫県神戸市に「20,000円」のふるさと納税をした場合は、次のようになります。
寄付金控除は、ふるさと納税による寄付金から2,000円を差し引いた金額となります。
今回の場合、大阪市と神戸市に合計40,000円の寄付をしたので2,000円を差し引いた”38,000円”が控除対象です。
住民税等に関する事項の入力
住民税等に関する事項とは、所得税と取り扱いが異なる市・県民税の算定をするために入力する事項です。
▲「16歳未満の扶養家族の有無」「別居の控除対象配偶者・扶養親族の有無」を選択します。
計算結果の確認
還付される金額が表示されます。
「還付金の受取方法(ゆうちょ銀行以外の銀行等への振込み、ゆうちょ銀行への振込み、ゆうちょ銀行の各店舗又は郵便局窓口での受取り)」を選択しましょう。
計算結果の確認で表示される「還付される金額」とは”所得税の還付”であり、銀行口座の振り込み等によって受け取ることが可能です。
※住民税の控除については、翌年の住民税から差し引かれます。
本人情報の入力
本人情報(氏名、性別、生年月日、電話番号、世帯主の氏名、整理番号、納税地など)を入力をします。
マイナンバーの入力
国民一人ひとりに割り当てられている数字12桁の「マイナンバー(個人番号)」をマイナンバーカードや通知カードを見ながら入力します。
申告書の印刷
これで「ふるさと納税等」の税額控除を受けるための確定申告が完成しました。
「帳票表示・印刷」をタップしましょう。
※スマホでマイナンバーカードを読み取ることでe-Taxによるオンライン申請も可能です。
PDF形式で「確定申告書B」「添付書類台紙」が表示されます。
iPhoneの場合は、下部に「シェアボタン」があるのでタップしましょう。
確定申告書をメールで送信したり、iPhone端末に保存することが可能です。
税務署に提出
確定申告書を印刷したら税務署に提出しましょう。
提出方法は、
- 郵送
- 管轄の税務署の窓口に持参(または時間外収受箱に投函)
のいずれかの方法で行なえます。
郵送する場合は、必要な書類(確定申告書、源泉徴収票、マイナンバーの写し、社会保険料控除証明書、医療費控除の明細書、返信用封筒など)を封筒(角形2号封筒など)に入れます。
宛先にはその地域を管轄する税務署の住所、宛名には「〇〇税務署 御中」と記入します。
郵送方法は、確定申告書が「信書」に当たるため、郵便または信書便で送るようにしましょう。
最後に
ふるさと納税は、自己負担2,000円で返礼品をもらえる”お得度の高い制度”で利用している方も多いのではないでしょうか?
ただ、
- 1月1日〜12月31日にふるさと納税を6自治体以上にした
- ふるさと納税をした全ての自治体に「ワンストップ特例制度の申請書」を提出できなかった
などにより確定申告が必要になるケースもあります。
そんなとき、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を作成すれば、質問内容に答えていくだけで確定申告書が完成します。
これからの確定申告に是非活用してください。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。
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