退職金は、老後生活の原資になるという側面から非常に税金が優遇されている所得です。
例えば、10年間で「毎年の給与所得1,000万円(合計1億円)」と「毎年の給与所得600万円+退職金4,000万円(合計1億円)」のケースを比較してみます。
所得区分 | 所得金額 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|---|
給与所得 | 年収1,000万円 (10年間で1億円) |
76万8,500円 (10年で768万5,000円) |
60万5,500円 (10年で605万5,000円) |
合計:1,374万円
所得区分 | 所得金額 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|---|
給与所得 | 年収600万円 (10年間で6,000万円) |
20万4,100円 (10年で204万1,000円) |
30万9,000円 (10年で309万円) |
退職所得 | 4,000万円 | 374万4,000円 | 160万円 |
合計:1047万5,000円
※勤続年数は20年、基礎控除を適用しています。社会保険料は14.4%で計算しています。会社や地域によって違ってきますので目安として考えてください。
法人からの支給額は1億円と全く同じですが、退職金を活用することで税金が10年で326万5,000円も減りました。
これに加えて、退職金は、社会保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などを負担する必要がないため、この差はさらに大きいものになります。
さて、そんな大きな節税効果を期待できる退職金は、会社の経営を担う役員にも支給することも可能です。
この記事では、役員退職金の節税効果や共済制度を活用して毎年の税金を下げたり、キャッシュフローを安定させる方法を解説しています。
役員退職金とは
役員退職金とは、会社を退職した役員(取締役、会計参与、監査役)に支給される一時金のことを言います。
役員退職金は、大きく2種類に分けられます。
死亡退職金 | 役員(経営者)が在職中に死亡した際、遺族に支払われる退職金です。 |
---|---|
退職慰労金 | 役員(経営者)の会社への貢献や功労に対して支払われる退職金です。 |
今回は、一般的に役員退職金で支給される「役員慰労金」について解説します。
役員退職金の節税効果
冒頭でお伝えしたとおり、役員退職金は税金が優遇されている所得です。
大きく分けて
- 退職所得控除を差し引ける
- 退職所得を2分の1にできる
- 分離課税にできる
の3つの優遇を受けることができます。
1、退職所得控除を差し引ける
退職所得控除とは、勤続年数によって増加する退職金から差し引ける控除です。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円 × 勤続年数 ※80万円に満たない場合は80万円となる |
20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 – 20年) |
基礎控除、扶養控除、配偶者控除などと比較して、非常に大きな控除額であることが分かります。
2、退職所得控除後に2分の1にできる
退職金から退職所得控除を差し引いた後は、2分の1にすることが可能です。
退職所得 = (退職金 - 退職所得控除額)× 1/2
※勤続年数が5年以下である場合は、1/2の適用はありません。
例えば、退職金から退職所得控除を差し引き後が2,000万円だった場合は、さらに2分の1にして1,000万円にできるということです。
最終的には、この1,000万円に税率をかけて「所得税」と「住民税」を算出することになります。
3、分離課税にできる
退職所得は、他の所得と合算しない分離課税となります。
そのため、退職所得のみで税率をかけて計算することになり、累進課税による高い税率を避けることが可能です。
課税される所得金額 (課税所得) |
税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
それぞれの所得税は、
- 給与所得:600万円 × 20% - 42万7,500円 = 77万2,500円
- 退職所得:1,000万円 × 33% - 153万6,000円 = 176万4,000円
というように算出することが可能です。
仮に所得を合算した場合は、1600万円 × 33% - 153万6,000円 = 374万4,000円となり、累進課税により高額な所得税となってしまいます。
役員退職金は「共済制度」を活用して節税効果を高めよう
役員退職金は、個人の税金だけでなく、法人税の節税効果を生み出すことも可能です。
通常、役員退職金を支給するときは、多額のキャッシュが出ていくことになるため、それに向けて貯蓄をしていく必要があります。
しかし、役員退職金を銀行で積立預金する場合は、損金算入することが認められておらず、役員退職金の支給時に一括で損金算入しなければなりません。
そのため、毎年の税引き後の利益から預金することになり、支給時には多額の損金算入をして赤字を出すリスクもあります。
そこで活用したいのが
- 小規模企業共済
- 倒産防止共済(経営セーフティ共済)
です。
役員退職金と組わせて活用することで会社のキャッシュフローを安定させることが可能です。
小規模企業共済
小規模企業共済とは、昭和40年の小規模企業共済法に基づいて発足された国の共済制度です。
自営業者や経営者の現役引退や廃業後の生活を安定させたり、事業再建に備えたりすることを目的としています。
平成30年3月末時点で全国に約139万人の加入者がおり、資産運用残高が約9兆4,125億円にのぼることから注目度の高い制度と言えます。
加入資格
小規模企業共済の加入資格は「常時使用する従業員・組合員」の人数で決まります。
業種 | 常時使用する従業員・組合員数 | 対象者 |
---|---|---|
建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業など | 20人以下 | 個人事業主、会社等の役員、共同経営者 |
商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 | 個人事業主、会社等の役員、共同経営者 |
企業組合、協業組合 | 20人以下 | 役員 |
農事組合法人 | 20人以下 | 役員 |
弁護士法人、税理士法人等の士業法人 | 5人以下 | 社員 |
※2つ以上の事業を行っている場合は、主たる事業の業種で加入します。
※常時使用する従業員には、家族従業員、共同経営者(2人まで)を含みません。
※会社等の役員とは、株式会社・有限会社の取締役または監査役、合名会社・合資会社・合同会社の方を指します。
掛金
小規模企業共済の掛金は、毎月1,000円〜7万円まで自由に設定可能です。
掛金総額の上限はありません。
この掛金は、
- 小規模企業共済等掛金控除として全額を所得控除できる
といった税制面のメリットがあります。
節税効果
次は、中小機構が公表している小規模企業共済の節税効果表です。
課税される 所得金額 |
加入前の税額 | 掛金月額ごとの加入後の節税額 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
所得税 | 住民税 | 掛金月額 1万円 |
掛金月額 3万円 |
掛金月額 5万円 |
掛金月額 7万円 |
|
200万円 | 104,600円 | 205,000円 | 20,700円 | 56,900円 | 93,200円 | 129,400円 |
400万円 | 380,300円 | 405,000円 | 36,500円 | 109,500円 | 182,500円 | 241,300円 |
600万円 | 788,700円 | 605,000円 | 36,500円 | 109,500円 | 182,500円 | 255,600円 |
800万円 | 1,229,200円 | 805,000円 | 40,100円 | 120,500円 | 200,900円 | 281,200円 |
1,000万円 | 1,801,000円 | 1,005,000円 | 52,400円 | 157,300円 | 262,200円 | 367,000円 |
同様の所得水準と掛金で推移したとすると、10年間で367万円も税金を減らすことができる計算です。
解約手当金
小規模企業共済の解約手当金は、次の「共済金A」「共済金B」「準共済金」のいずれかに当てはまれば、税金が優遇されている退職所得として受け取ることが可能です。
共済金の種類は、次のとおりです。
個人事業主 | 法人の役員 | |
---|---|---|
共済金A | ・個人事業を廃止 ・個人事業主の死亡 |
・法人が解散 |
共済金B | ・老齢給付(65歳以上で180ヶ月以上掛金を払い込んだ方) | ・老齢給付(65歳以上で180ヶ月以上掛金を払い込んだ方) ・病気、怪我で役員を退任 ・65歳以上で役員を退任 ・契約者の死亡 |
準共済金 | ・個人事業の法人成りにより加入資格がなくなったので解約をした | ・法人の解散、病気、怪我以外で役員を退任 ・65歳未満で役員を退任 |
上記の共済金の種類(共済金A、共済金B、準共済金)ごとに受給額が変わってきます。
掛金の納付月数 | 共済金A | 共済金B | 準共済金 |
---|---|---|---|
5年 (掛金合計額60万円) |
62万1,400円 (+2万1,400円) |
61万4,600円 (+1万4,600円) |
60万円 (+0円) |
10年 (掛金合計額120万円) |
129万600円 (+9万600円) |
126万800円 (+6万800円) |
120万円 (+0円) |
15年 (掛金合計額180万円) |
201万1,100円 (+21万1,100円) |
194万400円 (+14万400円) |
180万円 (+0円) |
20年 (掛金合計額240万円) |
278万6,400円 (+38万6,400円) |
265万8,800円 (+25万8,800円) |
241万9,500円 (+1万9,500円) |
※掛金1万円ごとの受給額です。
※共済金A・共済金Bは6ヶ月未満、準共済金は12ヶ月未満の解約時の受給額は0円(掛け捨て)となります。
貸付制度
小規模企業共済には、掛金の納付期間に応じた”貸付限度額の範囲内“で事業資金等を借り入れることも可能です。
借入の限度額は、掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で5万円単位で借り入れ可能です。
貸付タイプ | 借入条件 | 借入の限度額 | 利率 |
---|---|---|---|
一般貸付制度 | 事業資金を迅速に借り入る場合 | 10〜2,000万円 | 年1.5% |
緊急経営安定貸付け | 経済環境の変化等により資金繰りが困難になった場合 | 50〜1,000万円 | 年0.9% |
傷病災害時貸付け(※) | 疾病・負傷による入院や災害等により被害を受けた場合 | ||
福祉対応貸付け | 共済契約者または同居する親族の福祉向上のため | ||
創業転業時・新規事業展開等貸付け | 新規開業・転業する際や事業多角化に必要な場合 | ||
事業承継貸付け | 事業承継(事業用資産または株式等の取得)に必要な場合 | ||
廃業準備貸付け | 個人事業の廃止または会社の解散を円滑に行うため |
小規模企業共済について詳しくは、次の記事でも解説しています。
倒産防止共済(経営セーフティ共済)
倒産防止共済(正式名称:中小企業倒産防止共済)とは、昭和53年の中小企業倒産防止共済法に基づいて発足された国の救済制度です。
取引先が倒産した際に中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぎ、中小企業の経営安定化を目的としています。
加入資格
継続して1年以上の事業実績があれば、法人または個人事業主は問われません。
基本、次の表の「資本金の額または出資の総額」「常時使用する従業員数」のいずれかを満たしていれば加入することができます。
業種 | 資本金の額または出資の総額 | 常時使用する従業員数 |
---|---|---|
製造業、建設業、運輸業その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業ならびに工業用ベルト製造業を除く。) | 3億円以下 | 900人以下 |
ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
※医療法人、農事組合法人、NPO法人、森林組合、農業協同組合、外国法人等は加入対象になりません。
※所得税や住民税を滞納している、事業にかかわる経理内容が不明などの場合は加入できません。
掛金
倒産防止共済の掛金は、毎月5,000円〜20万円まで自由に設定可能です。
掛金総額は、最大800万円まで積み立てることができます。
この掛金は、
- 法人の利益から全額を損金算入できる
といった税制面のメリットがあります。
節税効果
倒産防止共済の節税面でのメリットは、月20万円(年間240万円)を損金算入できる点です。
次は、倒産防止共済の加入の有無で法人税等がどのくらい変わるか?シミュレーションしたものです。
倒産防止共済に加入した場合 | 倒産防止共済に加入していない場合 | |
---|---|---|
売上 | 1,500万円 | 1,500万円 |
仕入れ | −1,000万円 | −1,000万円 |
倒産防止共済 | −240万円 | 0円 |
利益 | 260万円 | 500万円 |
法人税等 | 65万円 | 125万円 |
※法人税等を分かりやすく25%として計算した場合です。実際は、会社の規模などにより、大きく異なる可能性があります。
同様の業績で推移したとすると、10年間で600万円も法人税等を減らすことができる計算です。
解約返戻金
倒産防止共済の解約返戻金は、雑所得として全額課税対象になります。
特に資本金1億円以下の中小企業の場合、所得金額が800万円を超えると法人税率が一気に上がってしまうので注意しなければなりません。
資本金 | 所得金額 | 法人税率 |
---|---|---|
1億円以上 | ― | 23.2% |
1億円以下 (大企業の子会社は除く) |
800万円超 | 23.2% |
800万円以下 | 15% |
※上記の法人税率は、普通法人・人格のない社団法人等になります。
このような事態を防ぐために倒産防止共済の解約返戻金を受け取る年度に同等金額の役員退職金をぶつけることをオススメします。
例えば、倒産防止共済を毎年200万円ずつ4年間に渡って損金算入させた後、解約返戻金を退職金と相殺させた場合、どのくらい節税できるのか、見ていきましょう。
1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | |
---|---|---|---|---|---|
事業利益 | 300万円 | 300万円 | 300万円 | 300万円 | 300万円 |
掛金・返戻金 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 |
退職金 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | -1,000万円 |
利益 | 300万円 | 300万円 | 300万円 | 300万円 | -700万円 |
法人税 | 75万円 | 75万円 | 75万円 | 75万円 | 0万円 |
法人税等の合計:300万円
1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | |
---|---|---|---|---|---|
事業利益 | 300万円 | 300万円 | 300万円 | 300万円 | 300万円 |
掛金・返戻金 | -200万円 | -200万円 | -200万円 | -200万円 | +800万円 |
退職金 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | -1,000万円 |
利益 | 100万円 | 100万円 | 100万円 | 100万円 | 100万円 |
法人税等 | 25万円 | 25万円 | 25万円 | 25万円 | 25万円 |
法人税等の合計:125万円
※法人税等を分かりやすく25%として計算した場合です。実際は、会社の規模などにより、大きく異なる可能性があります。
倒産防止共済の掛金を損金算入することで、法人税等が5年間で175万円も減りました。
翌年以降の黒字と全額相殺することができれば、結果的に法人税の負担額は同じになります。
資金の借り入れ
倒産防止共済は、次の2つのケースで借り入れすることができます。
取引先が倒産した場合 | 取引先が倒産して売掛金が回収不能になり、運転資金が足りなくなった場合に借入可能です。借入限度額は「被害額」「掛金総額の10倍(最大8,000万円)」のいずれか少ない方となります。 |
---|---|
自社都合で急に資金が必要になった場合 | 自社都合で急に資金が必要になった場合では「一時貸付金」の借り入れが“無担保・保証人なし”で可能です。借入限度額は、掛金納付月数によって異なり、解約手当金の最大95%を借り入れることが可能です。 |
倒産防止共済について詳しくは、次の記事でも解説しています。
役員退職金の支給額は「功績倍率」の3倍が目安
役員退職金は、税金が優遇されていることから支給額を大きくするほど節税効果が高まります。
しかし、いくらでも支給してもいいわけではなく、税務調査で「不相当に高額」と判断された場合は、損金算入が否認される可能性もあります。
では、どのくらいの役員退職金にすれば良いのでしょうか?
税法上は、役員退職金の計算式について明確な基準があるわけではありませんが、判例より功績倍率は2〜3倍程度が目安とされています。
具体的には、次のように役員退職金を求めることが可能です。
役員退職金 = 役員報酬(月額) × 在任期間 × 功績倍率
例えば、役員報酬(月額)60万円、在任期間30年、功績倍率3倍の場合は、次のように求められます。
役員退職金 = 役員報酬(月額) × 在任期間 × 功績倍率 = 60万円 × 30年 × 3倍 = 5,400万円
ただし、一般的に功績倍率は、同業類似する法人の平均値が目安となるため、業種によっては適正な功績倍率が変わってきます。
過去には、個別の諸事情が考慮されたことで功績倍率7.5倍(昭和52年9月26日の東京高裁判決)が認められたケースもあり、役員退職金の損金算入限度額は一律ではないことが分かります。
相場より高額な役員退職金を支給する理由がある場合は、一度税理士に相談されることをオススメします。
役員報酬に注意
適正な役員退職金を算出するときは、役員報酬についても考慮する必要があります。
なぜなら、役員退職金の計算のもとになっている役員報酬が「不相当に高額」であれば、当然のことながら役員退職金も否認される可能性が高まるからです。
ただし、役員報酬についても税法上は、「利益の○%まで」「従業員の給料の○倍まで」「同業他社の役員報酬の○倍まで」といった具体的な数値の定められていません。
そのため、
- 役員の職務の内容
- 会社の収益
- 使用人に対する給与の支給状況
- 事業規模が類似する同業他社の役員報酬の支給状況
などを照らし合わせて役員報酬に妥当性を判断することになります。
過去には、裁判で役員報酬が「不相当に高額」と判決された例もあるので注意しましょう。
役員退職金を支給するときの注意点
販売管理費で処理すると印象が悪くなる
役員退職金を販売管理費などで会計処理した場合は、銀行からの印象が悪くなるケースがあります。
なぜなら、事業環境の変化により「今後も販売管理費の増大で赤字が続いてしまう」と判断される恐れがあるからです。
そうなれば、融資を受けられなかったり、適用金利が上がってしまう可能性もあります。
そのため、役員退職金のようにその年度だけ発生する滅多にない支出については、特別損失で処理するようにしましょう。
分掌変更による支給は否認されるケースがある
役員退職金を「分掌変更」により支給する場合は、損金算入を否認されるケースもあるので注意が必要です。
分掌変更とは、会社の代表取締役や常勤役員が退職した後、会長や監査役などの地位にとどまって会社に在職することを言います。
役員が分掌変更した際、役員退職金が認められるのは、次のケースです。
(1) 常勤役員が非常勤役員になったこと。
ただし、常勤していなくても代表権があったり、実質的にその法人の経営上主要な地位にある場合は除かれます。(2) 取締役が監査役になったこと。
ただし、監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めている場合や、使用人兼務役員として認められない大株主である場合は除かれます。(3) 分掌変更の後の役員の給与がおおむね50%以上減少したこと。
ただし、分掌変更の後においても、その法人の経営上主要な地位を占めていると認められる場合は除かれます。※いずれのケースでも未払金に計上したものについては原則役員退職金に含まれません。
出典:国税庁「使用人が役員へ昇格したとき又は役員が分掌変更したときの退職金」
ただし、先代の社長が息子に社長の地位を譲った後も「非常勤役員」や「相談役」として会社に在籍する場合、一定のルールに基づいて役員退職金を支給しなければならないので注意しましょう。
最後に
法人の役員退職金は、数ある節税対策の中でも大きな結果をもたらせる可能性があります。
ただ単に役員退職金を支給するのではなく、
- 小規模企業共済
- 倒産防止共済(経営セーフティ共済)
なども上手く活用すれば、さらなる効果も期待できます。
もちろん、ここでは紹介しきれなかったり、ホームページで公開できない節税対策は、まだまだ数多くあります。
税金の世界では「知らない人が損をして、知っている人が得をする」制度が数多くあり、税務署も積極的には教えてくれません。
この記事を読んでいる大多数の経営者は「一生懸命と知恵を絞って努力して稼いだお金を税金で失いたくない」というのが本音かと思います。
当事務所では、税金を安くしたいがあまり、虚偽や不正を働くことは長期的にマイナスにつながると考えていますが、意味のある節税対策は積極的に行うべきだと考えています。
大阪、京都、神戸限定にはなりますが、「認められた方法かつ最小限の手間で税金を安くするにはどうすればいいの?」などありましたら、私たちにお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。