法人税

法人が青色申告するメリットは?要件や特典を解説

法人が青色申告するメリットは何だろう?

青色申告といえば、個人事業主(フリーランス)が活用するイメージがありますが、法人でも青色申告することは可能です。

国税庁ホームページでも法人税における青色申告の普及率は98%に及ぶと解説されているとおり、法人にとって青色申告は一般的なものと言えます。

個人事業主では、青色申告の特典は次のようになります。

個人事業主の青色申告の特典一覧
青色申告特別控除 不動産所得または事業所得で事業を営んでいる青色申告者は、最高65万円の控除ができます。※不動産所得は事業的規模(アパートやマンションを10室以上貸しているなど)である必要があります。
青色事業専従者給与 青色申告者と生計を一にしている配偶者や親族(15歳以上)に支払っている給与を必要経費に算入することができます。
赤字の繰越損失 事業所得などで赤字になった場合は、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年の所得金額から控除できます。
少額減価償却資産 取得価額30万円未満の減価償却資産を購入した場合は、一定の要件のもとに年間300万円まで一括で経費に計上できる特例を利用できます。
貸倒引当金 事業所得で事業を営んでいる青色申告者は、その事業で生じた貸金(売掛金、貸付金など)の貸倒れによる損失の見込額として、年末における貸金の帳簿価額の合計額の5.5%以下(金融業は3.3%)を必要経費にできます。

一方、法人の青色申告では、個人事業主とは違った特典内容となっています。

この記事では、法人が青色申告するメリットや特典内容などを解説していきます。

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基本的に法人の青色申告は、大きなメリットがあることから積極的に活用することをオススメします。

法人の青色申告とは

まずは、法人の青色申告についておさらいしましょう。

法人の青色申告とは、税金の申告方法の一つであり、法人税の申告時に用いられます。

青色申告は、様々な特典を受けられることから「承認制」となっており、事前に青色申告の承認申請書を所轄の警察署に提出しなければなりません。

提出時期

会社を設立した第1期目(初年度)は、

  • 設立から3ヶ月を経過した日
  • 第1期の事業年度終了の日

のいずれか早い日の前日までに提出しなければなりません。

また、すでに会社を設立している場合は、青色申告の承認を受けようとする事業年度開始日の前日までに提出する必要があります。

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例えば、3月決算の会社を4月1日に設立した場合、青色申告の承認申請書の提出期限は、6月30日までとなります。

書き方

法人の青色申告に必要となる「青色申告の承認申請書」は、次のとおりです。

基本情報

上部の欄には、日付、税務署名、納税地、法人名等、法人番号、代表者氏名、代表者住所、事業種目、資本金または出資金額などの基本的な情報を記入します。

“◯◯事業年度から法人税の申告を青色申告によって提出したいので申請します。”には、青色申告を適用する年月日を記入します。

例えば、会社を2020年5月10日に設立して3月決算の場合は、2020年5月10日から2021年3月31日と記入しましょう。

青色申告の承認申請書の提出について

続いて、青色申告書を提出した理由にチェックします。

会社設立初年度を理由にして「青色申告の承認申請書」を提出する場合は、上から2番目にチェックを入れて、会社設立の年月日を記入しましょう。

(1)帳簿組織

参考事項(1)帳簿組織の状況には、

  • 伝票または帳簿名:仕訳帳、総勘定元帳など
  • 帳簿の形態:会計ソフトなど
  • 帳簿の時期:毎日、毎月、毎年など

を記入します。

(2)特別な記帳方法の採用の有無

会計ソフトを利用している場合は「電子計算機利用」の”ロ”に◯を付けます。

(3)税理士が慣用している場合におけるその関与度合

青色申告の承認申請書の提出時に顧問税理士がいる場合は、その税理士に依頼している内容を記入します。

税理士署名押印

税理士が青色申告の承認申請書を作成した場合は、税理士が自筆で署名してから押印します。

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法人の青色申告の特典・メリット

ここからは、法人の青色申告の特典・メリットを紹介していきます。

主な特典は、

  1. 欠損金の繰越控除
  2. 欠損金の繰戻還付
  3. 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
  4. 特別償却または税額控除

となります。

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法人における青色申告と白色申告の大きな違いとしては、上記の特典が受けられるかどうかになってきます。

1、欠損金の繰越控除

ある事業年度に「欠損金」が生じた場合、翌年以後の最長10年にわたって”将来の黒字”と相殺できる制度です。

欠損金とは、法人税を計算する基礎となる所得金額がマイナス(=益金-損金)の状態であり、税務上の赤字のことを言います。

適用要件は、

  • 欠損金が生じた事業年度に「確定申告書(青色申告)」を提出している
  • その後の各事業年度に連続して「確定申告書(青色申告または白色申告)」を提出している

です。

例えば、ある事業年度に1,000万円の繰越欠損金が発生したとします。

そして、翌年に600万円の黒字が発生した場合は、1,000万円のうち600万円を相殺して所得金額をゼロにできます。

利益 所得 法人税
1年目 -1,000万円 0円 0円
2年目 600万円 0円
(繰越欠損金残高400万円)
0円
3年目 500万円 100万円
(繰越欠損金残高0円)
30万円
4年目 500万円 500万円
(繰越欠損金残高0円)
150万円

※実効税率30%として法人税を計算しています。

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欠損金の繰越控除を活用すれば、大きな赤字が発生した場合でも翌年以降の黒字と相殺して税金の負担を下げることが可能です。

大企業は繰越控除に制限がある

中小企業であれば、欠損金は翌年以降に全額控除できます。

しかし、資本金1億円以上の大企業については、欠損金の繰越控除に制限が設けられているので注意しましょう。

次は、資本金と事業年度ごとの欠損金の繰越控除の条件となります。

平成28年 平成29年 平成30年
大企業
(資本金1億円超)
控除限度額 60% 55% 50%
控除期間 9年 10年
中小企業
(資本金1億円以下)
控除限度額 100%
控除期間 9年 10年
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大企業の場合は、欠損金が生じた場合であっても50%までしか翌年以上に繰り越せないということですね。

2、欠損金の繰戻還付

ある事業年度に「欠損金」が生じた場合、前期に支払った税金を還付できる制度です。

翌年以降も業績の赤字が見込める場合は、先ほど解説した「欠損金の繰越控除」より「欠損金の繰戻還付」を活用するほうが良いでしょう。

適用要件は、

  • 資本金1億円以下の法人(資本金1億円以下でも資本金5億円以上の法人の100%子会社である場合は適用不可です。)
  • 還付を受ける事業年度から欠損金が生じた事業年度まで連続して「確定申告書(青色申告)」を提出している
  • 確定申告書と同時に「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を提出している

です。

還付金額の計算方法は、次のとおりです。

還付金額 = 還付所得事業年度の法人税額 ×(欠損事業年度の欠損金額(※)÷ 還付所得事業年度の所得金額)

※法人が還付金額の計算の基礎として還付請求書に記載した金額が限度となります。また、分母の金額が限度になります。

例えば、今期に500万円の欠損金が発生。

前期は、所得金額800万円、法人税額120万円だった場合、還付金額は次のようになります。

還付金額 = 120万円 ×(500万円 ÷ 800万円)= 75万円

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欠損金の繰戻還付の活用により前期に支払った法人税の一部である75万円が戻ってきました。

大きな赤字で資金繰りが悪化した場合、すぐに還付を現金で受けられるのは大きなメリットですね。

使い切れない場合は「欠損金の繰越控除」が可能

欠損金の繰越還付では、前期の所得金額が上限となっています。

例えば、前期の所得金額500万円、今期の欠損金額800万円だった場合、繰越控除の還付として500万円を活用可能です。

残り300万円(= 800万円 - 500万円)については、欠損金の繰越控除として翌年以降10年間にわたって所得金額から相殺できます。

3、少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例とは、取得価額30万円未満の減価償却資産を購入した場合、一定の要件のもとに一括で経費に計上できる特例です。

通常、取得価額10万円未満で一括償却できますが、特例を利用すれば高額な減価償却資産もその年に経費として全額を計上できるようになります。

適用要件は、

  • 中小規模の法人または個人事業主・フリーランス
  • 事業用に取得すること
  • 青色申告書を提出していること
  • 法人の場合は連結法人には該当せず「資本金額または出資金額が1億円以下の法人」かつ「常時雇用人数が500人以下の法人」であること
  • 年間300万円以内であること

です。

注意が必要となるのは、この特例を適用できるのは年間300万円以内という点です。

例えば、パソコン(1台20万円)を20台を購入する場合、一括で経費計上できるのは15台まで(20万円 × 15台 = 300万円)となります。

残りの5台については、減価償却資産として法定耐用年数の4年に分けて分割して経費に計上しなければなりません。

30万円未満なら一括償却「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を解説

4、特別償却または税額控除

2024年7月時点で実施されている青色申告による特別償却または税額控除は、次のとおりです。

青色申告の特別償却または税額控除
中小企業経営強化税制 中小企業の生産性の向上を後押しすることを目的に設備投資の税制優遇を行う制度です。資本金1億円以下・常時使用従業員が1,000人以下の法人であれば「生産性工場設備」または「収益力強化設備」の購入により「全額を即時償却」または「取得価額10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除※法人税額の20%が上限」を受けることができます。
地域未来投資促進税制 地域経済を牽引する事業を促進することを目的に人材支援や設備投資の減税措置などを行う制度です。先進的な事業に必要な設備投資に対して「最大50%の特別償却」または「最大5%の税額控除」を受けることができます。
地方拠点強化税制 地方創生を応援することを目的として法人税の減税措置を行う制度です。本社機能を東京23区から地方に移転、地方に本社機能の強化・拡充する企業が対象です。建物等の取得に対して「最大25%の特別償却」または「最大7%の税額控除」、新たな従業員の雇用に対して「1人あたり最大90万円の税額控除」を受けることができます。
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この他にも法人の青色申告により「No.5435 商業・サービス業・農林水産業活性化税制」「研究開発税制」「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」「企業主導型保育施設用資産の割増償却」などの税制優遇を受けることが可能です。

法人には青色申告特別控除がない

個人事業主(フリーランス)の青色申告には、青色申告特別控除65万円の税制優遇があります。

これは、事業活動で得た所得を減らして、税金の負担を減らせる特典です。

※2020年(令和2年)分の確定申告から青色申告特別控除65万円を適用するには「e-Taxによる申告(電子申告)」「電子帳簿保存」のいずれかの要件を満たさなければなりません。

電子帳簿保存とは?青色申告特別控除65万円の要件【確定申告】

実際、青色申告特別控除65万円を「なし」「あり」で税金の比較すると、次のとおりです。

青色申告特別控除65万円の比較
青色申告特別控除なし 青色申告特別控除あり
事業所得 500万円 500万円
基礎控除 −48万円 −48万円
青色申告特別控除 0円 −65万円
課税所得 462万円 397万円
所得税 25万2,100円 18万3,500円
住民税 34万9,800円 29万1,000円
合計 60万1,900円 48万4,500円

※青色申告特別控除なしでは、国民年金199,320円、国民健康保険料442,186円として計算しています。
※青色申告特別控除ありでは、国民年金199,320円、国民健康保険料380,176円として計算しています。

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事業所得は500万円と全く同じですが、青色申告特別控除65万円を適用することで「税金」の合計負担額が12万7,400円も減りました。

青色申告特別控除があるかどうかで税金の負担額が大きく変わってくることが分かります。

しかし、法人の青色申告は、青色申告特別控除が適用できません。

その代わりに法人の税率が低く抑えられていたり、経費として認められる範囲が大きくなっています。

法人の青色申告が取り消されるケース

法人の青色申告を適用により「税制優遇」を受けることが可能です。

しかし、一旦は、青色申告の承認を受けた場合でも、

  • 税務調査時に帳簿書類を提示しない
  • 税務署長の支持に従わない
  • 帳簿書類について隠蔽、仮装等の事実が確認された
  • 2事業度年連続して期限内に申告書の提出がない

などに該当する場合は、青色申告が取り消される可能性があるので注意しましょう。

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法人で青色申告が取り消しとなった場合でも再申請可能です。

ただし、青色申告の取り消し通知日から1年間は「青色申告の承認申請書」の再申請ができないので注意しましょう。

税務調査で青色申告取り消しとなる5つのケース

最後に

会社設立(法人成り)をしたのであれば、確定申告は「青色申告」を選択をしましょう。

本記事で紹介したとおり、赤字を最大10年にわたって翌年以降に繰り越せる「欠損金の繰越控除」をはじめとして、税金の負担を減らすための各種税制優遇を受けることが可能です。

ただし、青色申告にした場合は「複式簿記」で記帳をしなければなりません。

複式簿記は、青色申告の承認申請書を提出しなかった場合に適用される「白色申告」の単式簿記と比べれば、専門的な知識と”手間”がかかります。

しかしながら、最近は、便利な会計ソフトが登場したり、法人であれば経理担当者や顧問税理士がいる可能性が高いことから、そこまで大きなデメリットにはならなくなりました。

実際、法人の青色申告の普及率が98%を超えていることから、よほどの理由がない限りは、青色申告で確定申告すると良いでしょう。

※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。

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