皆さん、確定申告について正しく理解していますか?
確定申告といえば、個人事業主や高所得者だけがするもので「自分には関係ない話」と思っている方も多いのではないでしょうか?
確かにサラリーマンや公務員などは、給与から税金が天引き(源泉徴収)され、年末に納税額の過不足を調整する「年末調整」を行ってくれるので、基本的には確定申告は必要ありません。
しかし、一定の条件を満たすことで確定申告の必要が生じたり、確定申告の義務はなくても、申告をした方が得になるケースもあります。
この記事では、確定申告の対象者・必要な人と還付金を受け取ることができるケースを紹介していきます。
目次
確定申告とは
まずは、確定申告について簡単におさらいします。
確定申告とは、国に税金を納めるために自身で所得金額を計算して税務署に申告する制度です。
具体的には、
- 毎年1月1日から12月31日の期間に発生した所得や経費から所得税を計算して税務署に提出する一連の流れ
を言います。
確定申告が必要な人
確定申告が必要な人については、国税庁ホームページで次のように記載されています。
給与所得がある人
役員、正社員・会社員・サラリーマン、公務員、パート・アルバイト、学生で次に当てはまる場合
- 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
- 1ヵ所から給与の支払いを受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
- 2ヵ所以上から給与の支払いを受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
- 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
- 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
- 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
- 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人
※役員が受け取る”役員報酬”も税法上は給与所得として扱われます。
また、新卒社員でアルバイト時代の収入がある場合は、2ヵ所以上から給与の支払いを受けていることから確定申告が必要です。
公的年金等に係る雑所得のみの方
国民年金、厚生年金、共済年金、個人年金を受給している高齢者で次に当てはまる場合
- 公的年金等に係る雑所得の金額から所得控除を差し引くと、残額がある
※公的年金等の収入金額が400万円以下であり、その全部が源泉徴収の対象となっている場合は、確定申告の必要はありません。
しかしながら、平均として400万円を超えることは少なく、ほとんどの年金受給者は確定申告の必要はありません。
退職所得がある方
外国企業から退職金を受け取った人で次に当てはまる場合
- 外国企業から受け取った退職金など、源泉徴収されないものがある
その他
例:個人事業主、フリーランス
- 各種の所得(収入から経費を差し引いた額)の合計額が48万円を超える
サラリーマンで確定申告が必要なケース
通常、サラリーマンは、会社側が給与や賞与から所得税を「源泉徴収」されて、年末に1年間の所得税の過不足を計算する「年末調整」が行われるため確定申告の必要はありません。
しかし、次の条件に当てはまる場合は確定申告が必要となります。
年収2,000万円を超える人
年収2,000万円を超える給与を受け取っている場合は、会社側で年末調整ができません。
給与から源泉徴収はされていますが、社会保険料控除、配偶者控除、扶養控除などは考慮されていないので正確な金額ではありません。
そのため、確定申告をすることで払いすぎた税金の還付金として返金されるケースが多くなっています。
2ヶ所以上から給与をもらっている人
2ヶ所以上から給与をもらっている人は、確定申告が必要になってきます。
具体的には、
- 主たる給与以外の「従たる給与」と「その他の所得(給与と退職金を除く)」の合計額が20万円超
の場合は、確定申告が必要となります。
※主たる給与とは、年末調整をしている(=給与所得者の扶養控除等申告書を提出している)企業から受け取っている給与。従たる給与とは、それ以外の給与を言います。
例えば、
- サラリーマンの給与:年400万円(主たる給与)
- アルバイト:年30万円(従たる給与)
をそれぞれ得ている場合は、確定申告が必要です。
【例外】確定申告が必要ないケース
2ヶ所以上から給与をもらっている人で
- 給与から各所得控除(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外)を差し引いた金額が150万円以下
- その他の所得(給与と退職金を除く)の合計額が20万円以下
の両方に当てはまる場合は、確定申告の必要はありません。
- 給与:年200万円(主たる給与)
- 役員報酬:年20万円(従たる給与)
- 雑所得:年15万円
- 各所得控除(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外):80万円
のケースを考えてみます。
「従たる給与」と「その他の所得(雑所得)」の合計額は35万円(>20万円)となるので、原則、確定申告は必要になります。
しかし、給与220万円(=200万円 + 20万円)から各種控除80万円を差し引くと140万円(≦150万円)
なおかつ、その他の所得(雑所得)が15万円(≦20万円)のため、確定申告が不要という判断になります。
※この例外規定は、主たる給与が年末調整されていることが前提となります。
副業の所得が20万円を超えている人
サラリーマンが本業とは別に「副業」をしている場合、年間の所得が20万円を超えると確定申告が必要です。
例えば、
- コラム執筆やセミナー講師などで得た原稿料、講演料
- クラウドソーシングを利用したWeb制作、デザイン、データ入力、写真、翻訳などの収入
- ブログ、You Tubeの動画配信などで得たアフィリエイト・広告収入
- フリマアプリ(メルカリ、ラクマなど)やネットオークション(ヤフオク!、eBayなど)で得た収入(洋服や生活用品などの”不用品”を売却した場合は、確定申告の必要がありません。)
- 自分で撮影した写真や動画などの販売で得た収入
- 個人の飲食宅配サービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」で得た収入
- FX、商品先物取引、仮想通貨(ビットコイン、リップルなど)で得た収入
- 土地、建物、部屋、駐車場などの貸し出しによる家賃収入(関連記事:確定申告は家賃収入でも必要?不動産所得の計算方法を解説)
などが該当します。
所得とは、収入から必要経費を差し引いた金額となります。
所得 = 収入 - 必要経費
仮に
- ライターの収入:20万円
- 書籍代:1万円
であれば、所得は20万円を下回るので確定申告の必要はありません。
住民税の申告は必要
副業は所得金額が20万円以下であれば、確定申告の必要はありません。
しかし、副業の所得が20万円以下であっても住民税は金額にかかわらず課税されるため申告は必要です。
住民税の申告は、市区町村の市民税課などで住民税申告書を提出することで行うことができます。
年の途中で退職をしてから再就職していない人
年の途中で退職をしてから12月31日時点で再就職をしていない(無職の状態が続いている)場合は、年末調整が行われないため確定申告が必要です。
確定申告をすることで
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
などの各種控除を受けることができます。
ほとんどのケースで税金の還付金を受けとることができるので、多少手続きが面倒でも確定申告をしておいた方がお得です。
年内に再就職したら確定申告は必要ない
会社を年の途中で退職した後、他の会社に再就職した場合は、再就職先が前の会社の分も含めて確定申告を行ってくれます。
そのため、再就職をしてから12月31日まで働いているのであれば、確定申告が必要なくなります。
失業保険は非課税
失業保険による収入は、確定申告をする際に申告する必要はありません。
失業保険(求職者給付)とは、雇用保険の加入者が会社を退職した後に国から支給される手当のことを言います。
個人事業主で確定申告が必要なケース
専業で個人事業主、フリーランス、トレーダーとして収入を得ている場合は、所得が48万円を超えると確定申告が必要となります。
これは「確定申告をする必要のある人の要件」として、次のように明記されているからです。
その年分の所得金額の合計額が所得控除の合計額を超える場合
出典:国税庁
所得控除とは、一定の要件にあてはまった場合に所得金額の合計額から差し引ける控除です。
基礎控除、給与所得控除、社会保険料控除、扶養控除、配偶者控除、医療費控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除などが該当します。
この中でも基礎控除は、すべての納税義務者が一律で48万円を差し引くことが可能です。
そのため、所得金額の合計額が48万円以下であれば、課税所得は0円となり、確定申告はしなくても良いとされています。
なお、基礎控除以外の控除については、確定申告をすることではじめて控除を認められます。
青色申告で最大65万円の控除を受けられる
個人事業主は、確定申告で「青色申告」を選択することにより最大65万円の特別控除を受けることが可能です。
これにより
- 基礎控除:48万円
- 青色申告特別控除:65万円
の合計113万円の控除額が発生することになります。
※2020年(令和2年)分の確定申告から青色申告特別控除65万円を適用するには「e-Taxによる申告(電子申告)」「電子帳簿保存」のいずれかの要件を満たさなければなりません。
また、青色申告をすれば、次の特典も付いてきます。
青色申告特別控除 | 不動産所得または事業所得で事業を営んでいる青色申告者は、最高65万円の控除ができます。※不動産所得は事業的規模(アパートやマンションを10室以上貸しているなど)である必要があります。 |
---|---|
青色事業専従者給与 | 青色申告者と生計を一にしている配偶者や親族(15歳以上)に支払っている給与を必要経費に算入することができます。 |
貸倒引当金 | 事業所得で事業を営んでいる青色申告者は、その事業で生じた貸金(売掛金、貸付金など)の貸倒れによる損失の見込額として、年末における貸金の帳簿価額の合計額の5.5%以下(金融業は3.3%)を必要経費にできます。 |
純損失の繰越しと繰戻し | 事業所得などで赤字になった場合は、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年の所得金額から控除できます。 |
株式投資で確定申告が必要なケース
株式投資で口座の種類を「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」にしている場合、譲渡益と配当金の合計が20万円を超えると確定申告が必要となります。
株式の取引に利用される証券口座は、次の3種類です。
特定口座(源泉徴収あり) | 投資家が株式を売却するたびに売却代金から税金が自動的に差し引かれる口座です。株式の売却により損失が発生した場合は、すでに徴収した税金の差額分が還付金として証券口座に返金されます。 |
---|---|
特定口座(源泉徴収なし) | 証券会社が株式の売買によって発生した損益を計算して、1年間の取引内容をまとめた「年間取引報告書」が作成される口座です。源泉徴収は行われないため、投資家は報告書に記載されている金額を基に確定申告を行います。 |
一般口座 | こちらを選択すると証券口座は何もしてくれません。自分で取引を記録して確定申告をする必要があります。 |
確定申告をした方が得になるケース
ここまでは、確定申告が必要な人のケースについて解説しました。
しかし、確定申告の義務がない場合であっても確定申告をすることで税金の還付を受けられるなど得になるケースもあります。
医療費が年間10万円を超えた人
医療費が年間10万円を超えた場合は、確定申告をすることで医療費控除を適用することができます。
※総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%が医療費控除の対象となります。
医療費は、生計を一にする家族全体が対象となっており、健康保険組合から送られる「医療費通知」「医療費のお知らせ」などの書類で確認が可能です。
通院にかかった公共交通機関の交通費なども医療費控除の対象となりますが、
- インフルエンザ予防接種
- 人間ドック
など、治療することが目的でなかったり、医療上必要のないものは対象外となります。
医療費控除の計算方法
医療費控除は、実際に支払った医療費から「保険金などで補てんされた金額」と「10万円」を差し引いた金額となります。
計算式は、次のとおりです。
医療費控除額(最高200万円)= 医療費総額 - 保険金など補てんされる金額 - 10万円(所得の合計額が200万円未満は所得の合計額の5%)
特定の医薬品購入額が1万2,000円を超えた人
特定の医薬品購入額が1万2,000円を超えた場合は、確定申告をすることでセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)を適用することが可能です。
具体的には、
- 保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施する健康診査(人間ドック、各種健(検)診など)
- 市区町村が健康増進事業として行う健康診査(生活保護受給者等を対象とする健康診査)
- 予防接種(定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種)
- 勤務先で実施する定期健康診断(事業主検診)
- 特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導
- 市町村が健康増進事業として実施するがん検診
のいずれかを受けており、ドラッグストア等で販売されている「スイッチOTC医薬品」を1万2,000円以上購入したケースが該当します。
セルフメディケーション税制の対象商品の一部には、次のマークが付いているので購入後はレシートを保管しておくと良いでしょう。
セルフメディケーション税制の計算方法
セルフメディケーション税制による医療費控除額は、実際に支払ったスイッチOTC医薬品の購入金額から「保険金などで補てんされた金額」と「1万2,000万円」を差し引いた金額となります。
計算式は、次のとおりです。
セルフメディケーション税制による医療費控除額(最高8万8,000円)= 実際に支払ったスイッチOTC医薬品の購入金額 - 保険金など補てんされる金額 - 1万2,000万円
医療費控除とセルフメディケーション税制の併用はできない
ここで注意していただきたいことは「医療費控除」と「セルフメディケーション税制」は併用できないという点です。
そのため、どちらが有利かを計算して一方を選択する必要があります。
マイホームを住宅ローンを10年以上組んで取得した人
「新築住宅」「中古住宅」「増築・リフォーム」で住宅ローンを組んだ場合は、確定申告をすることで住宅ローン控除を適用できます。
基本的な条件は、
- 床面積が50平米(戸建住宅の場合は壁心、共同住宅の場合は内法)
- 住宅ローンの返済期間が10年以上
- 合計所得金額が3,000万円以下
- 住宅の引渡しまたは工事の完了から6ヶ月以内に自ら居住する
- 耐震性能を有していること(中古住宅)
- 工事費が100万円以上(増築・リフォーム)
- 増築や一定規模以上の修繕・模様替え、省エネ・バリアフリー改修など(増築・リフォーム)
です。
仮に住宅ローンを10年で組んでいて、どうしても住宅ローン控除を継続したい。
そのときは
- 繰り上げ返済の金額を毎月の返済額に充当する「返済額軽減型」
という方法を選択しましょう。
住宅ローン控除額
住宅ローン控除は、年末の住宅ローン残高によって控除額が変わってきます。
住宅ローン控除額は、次のとおりです。
控除期間 | 13年間 |
---|---|
控除率 | 1% |
最大控除額 (一般住宅) |
【1〜10年目】 年間40万円 ※借入金年末残高4,000万円 × 1% = 40万円 【11〜13年目】 ・借入金年末残高(上限4,000万円) ・建物の取得価格(上限4,000万円)× 2% ÷ 3 |
最大控除額 (長期優良住宅、低炭素住宅) |
【1〜10年目】 年間50万円 ※借入金年末残高5,000万円 × 1% = 50万円 【11〜13年目】 次のいずれか小さい方の金額 ・借入金年末残高(上限5,000万円) ・建物の取得価格(上限5,000万円)× 2% ÷ 3 |
住民税からの控除額上限額 | 年間13万6,500円 ※前年度課税所得 × 7% |
※2019年10月1日以降の消費税増税8%→10%をきっかけに控除期間は10年 → 13年に拡大されました。(関連記事:消費税10%増税後「住宅ローン控除(減税)」が13年に延長)
なお、住宅ローン控除は「所得控除」ではなく「税額控除」となっており、その年にかかってくるはずの税金(所得税、住民税)から直接差し引くことが可能です。
サラリーマンは初年度のみ確定申告が必要
住宅ローン控除を受けるには、初年度に確定申告をする必要があります。
サラリーマンなど給与所得者の場合は、初年度のみ確定申告が必要となり、2年目以降は年末調整により申請が行なうことが可能です。
また、個人事業主は、2年目以降も確定申告が必要となります。
災害や盗難などにより損害を受けた人
災害や盗難、横領によって資産について損害を受けた場合は、確定申告をすることで雑損控除を適用できます。
対象となる資産は、
- 住宅や家財、現金などの生活に通常必要な資産
です。
別荘など趣味、娯楽、保養などの目的で保有する不動産、ゴルフ会員権、1点の価値が30万円を超える貴金属、書画、骨董など、生活で通常必要でない資産は対象外となるので注意しましょう。
なお、詐欺や恐喝の場合は、雑損控除を受けられないので注意しましょう。
雑損控除の計算方法
雑損控除の金額は、次の2つのうちいずれか多い方の金額となります。
・差引損失額 - 総所得金額等 × 10%
・差引損失額のうち災害関連支出の金額 - 5万円
※差引損失額は「損害金額(損害を受けたときの時価)」と「災害等に関連したやむを得ない支出の金額(資産の現状回復のために支出した金額等)」の合計額から「保険金などにより補てんされる金額」を差し引いた金額を言います。
雑損控除の計算は、
- 差引損失額 - 総所得金額等 × 10% = 100万円 + 30万円 - 30万円 - 200万円 × 10% = 80万円
- 差引損失額のうち災害関連支出の金額 - 5万円 = 30万円 - 5万円 = 25万円
となります。
結果として(2)の方が金額が大きくなるので、雑損控除の金額は80万円となります。
国や地方公共団体等に寄付をした人
国や地方公共団体等に「特定寄付金」を支出した場合は、確定申告をすることで寄付金控除を適用できます。
特定寄附金の対象は、
- 国、地方公共団体に対する寄付(ふるさと納税など)
- 公益社団、公益財団法人、その他公益を目的とする事業を行う法人・団体などに対する寄附金のうち法人財務大臣が指定したもの
- 特定公益増進法人に対する寄附金(独立行政法人、日本司法支援センター、自動車安全運転センター、日本赤十字社など)
- 特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭
- 認定NPO法人等に対する寄附金
- 政治活動に関する寄附金
などです。
寄付金控除の金額
寄付金控除の金額は、次の計算によって求められます。
寄付金控除額 = 次のいずれか低い金額 - 2,000円
(1)その年に支出した特定寄附金の額の合計額
(2)その年の総所得金額等の40%相当額
その年に支出した特定寄附金の額の合計額は、
- その年に支出した特定寄附金の額の合計額 = 10万円
- その年の総所得金額等の40%相当額 = 300万円 × 40% = 120万円
となります。
(1)の方が金額が小さくなるので、寄附金控除の金額は9万8,000円(= 10万円 - 2,000円)となります。
ふるさと納税は「ワンストップ特定制度」で確定申告が不要
ふるさと納税では「ワンストップ特定制度」を利用することで確定申告なしで税額控除を受けられます。
手順は、
- 自治体に「ワンストップ特例制度の申請書(寄附金税額控除に係る申告特例申請書)」と「本人確認書類」を郵送するだけ
です。
ワンストップ特例制度の申請書は、ふるさと納税をポートルサイト(ふるさとチョイス、ふるなび、さとふる、楽天ふるさと納税など)から申し込むときに「申請書の要望」にチェックを入れれば、返礼品と一緒に届けられます。
ただし、ふるさと納税の「ワンストップ特定制度」は、6自治体に寄付した場合などは適用できません。
詳しくは、次の記事をご覧ください。
株式取引で損をした人
株式取引で損をした場合は、確定申告をすることで上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除を適用可能です。
これは、株式を譲渡して損失が発生した場合、1年間で損失通算しても控除しきれない損失金額については、翌年以後3年間にわたって「譲渡所得」および「配当所得」から繰り越せる仕組みを言います。
例えば、2020年に年間500万円の損失が発生したケースを見てみましょう。
2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|---|
年間の譲渡損益 | -500万円 | +200万円 | +200万円 | +200万円 |
前年からの繰越譲渡控除 | なし | -500万円 | -300万円 | -100万円 |
課税対象の譲渡所得 | -500万円 | -300万円 | -100万円 | +100万円 |
納税額 | 0円 | 0円 | 0円 | 20万3,150円 |
※2037年12月31日までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。
また、2023年においても年間の譲渡損益200万円に対して、課税対象となる譲渡所得が100万円になり、納税額が大幅に減っています。
なお、証券口座の種類で「特定口座(源泉徴収あり)」を選択している場合も確定申告が必要になるので注意しましょう。
サラリーマンで自腹出費が多い人
サラリーマンで自腹の出費が多い場合は、確定申告をすることで特定支出控除が適用できます。
特定支出とは、職務に直接必要となる費用のことを言います。
特定支出として認められる範囲は、次のとおりです。
通勤費 | 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出 |
---|---|
転居費 | 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出 |
研修費 | 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出 |
資格取得費 | 職務に直接必要な資格を取得するための支出 ※弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も特定支出の対象です。 |
帰宅旅費 | 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出 |
図書費 | 書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用 |
衣服費 | 制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用 |
交際費等 | 交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出 |
※いずれも給与の支払者が証明したものに限ります。
※給与の支払者から補てんされる部分がある場合は、その補てんされる部分は特定支出から除かれます。
特定支出控除の金額
特定支出控除は、その年中の給与所得控除額の1/2を超えた部分について認められます。
特定支出控除額の適用判定の基準となる金額 = その年中の給与所得控除額 × 1/2
給与所得控除額は、次のとおりです。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
180万円以下 | 収入金額 × 40%(最低65万円) |
180万円を超え 360万円以下 | 収入金額 × 30% + 18万円 |
360万円を超え 660万円以下 | 収入金額 × 20% + 54万円 |
660万円を超え 1,000万円以下 | 収入金額 × 10% + 120万円 |
1,000万円超 | 220万円 |
- 給与所得控除額は154万円(= 500万円 × 20% + 54万円)
- 特定支出控除額の適用判定の基準となる金額は77万円(= 154万円 × 2/1)
です。
仮に特定支出が年間80万円であれば、特定支出控除は3万円(= 80万円 -77万円)となります。
確定申告をしないと最大40%の重加算税を課される
確定申告をする必要があるにも関わらず、税務署に申告をしなかった場合は、過去の未払いの税金と合わせて最大40%の罰金が加算される可能性があります。
次は、確定申告をしなかったり不備があった場合の加算税率の一覧表です。
加算税の種類 | 内容 | 加算税率 |
---|---|---|
過少申告加算税 | 本来の税額より少ない金額で申告した場合 (ミスや見解の違いなど) |
0%(税務調査前に修正申告) 10~15% |
無申告加算税 | 申告期限までに申告しなかった場合 | 5%(税務調査前に修正申告) 15%(50万円以下の部分) 20%(50万円を超える部分) |
重加算税 | 本来の税額より少ない金額で申告した場合 (意図的な事実の隠蔽や仮装など) |
35% 40%(無申告) |
延滞税 | 税金を法定納付期限までに納めていなかった場合 (修正申告等により遅れた場合にも発生します) |
最新の税率はこちら |
また、税務署から悪質な無申告者だと判断されれば、最も厳しい重加算税40%がペナルティとして科せられる可能性もあります。
無申告が見つかったときの税金
ある事業者に税務調査が入って、無申告が見つかったとします。
- 申告納税額:0万円
- 本来納税すべき税額:100万円
さて、こんなときはどうなるのでしょうか?見ていきましょう。
本税
まず、無申告により”支払っていなかった分の税金”を納めなければなりません。
100万円
罰金
さらに無申告の罰金として”無申告加算税”を納める必要があります。
本来納税すべき税額に対して、無申告加算税15~20%が課せられることになります。
50万円 × 15% + 100万円 × 20% = 17万5,000円
合計
最終的に納めるべき税金は、
本税 + 罰金 + 延滞税 = 100万円 + 17万5,000円 + 延滞税 = 117万5,000円 + 延滞税
もし、この117万5,000円を「払えない!」と突っぱねていると、延滞税がどんどん加算されることになります。
具体的な延滞税の計算方法については『税務調査の延滞税とは?計算方法と具体例・シミュレーション』をご覧ください。
最後に
確定申告は、収入を得ているなら誰でも”最低限の知識”は得ておくべきです。
なぜなら、
- 確定申告をすることで得になるケースがあるから
です。
基本、確定申告で税金が還付されるケースがあっても、税務署から案内通知などが届くことはありません。
自分で調べたり、詳しい人に聞いて「確定申告をすることで◯◯万円の還付金を受けとることができる。」と初めて知ることが可能です。
特に大きな買い物をしたり、副業による収益が多くなったときは、正しい確定申告をするかどうかで税金の額が”数百万円単位”で変わることもあります。
サラリーマンの副業収入などで節税につながるのが、個人事業主になることです。
ただ、個人事業主は、税制面での優遇を受けられる反面、ルールに従った帳簿付けをしなければなりません。
最大65万円の特別控除を適用できる「青色申告」であれば、会計ソフトをなど利用して「複式簿記」で記帳する必要があります。
複式簿記では、取引を「借方(かりかた)」と「貸方(かしかた)」という形で左右に分けて表す必要があり、専門的な知識が求められます。
時間のない忙しいサラリーマンにとっては大変な作業であり、確定申告の時期には副業の時間を削って書類集めや計算などに奔走することになります。
そこでおすすめなのが、税理士に依頼する方法です。
税理士に依頼することで確定申告書類の作成だけでなく、毎日の取引で発生する売上や経費などの帳簿付けの代行や節税対策の相談に乗ってくれます。
顧問料が発生してしまいますが、
- 事業に注力できる
- 安全確実に確定申告ができる
- 無駄な税金を払わずに済む
などにより、顧問料以上のメリットを生み出すことにも繋がります。
大阪、神戸、京都で税理士をお探しならご相談ください。
税務に精通した専門スタッフが誠心誠意対応させていただきます。
この記事の監修者
尾鼻 純
営業で多様なお客様と接する機会も多いですが、税金のことはもちろんのこと、あらゆる人脈を駆使してプライベートも含めたどのような相談にものれるよう心掛けております。これまで様々な困難な税務調査をクリアしてきました。税務署とは社長が納得されるまで徹底的に交渉させていただきます。
※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
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