税金の知識

持続化給付金は課税対象!雑収入で税金の支払い義務あり

現在、持続化給付金の申請受付は終了しています。

新型コロナウイルス感染症の拡大により経営環境が急速に悪化しています。

店舗の休業や客足減少など、厳しい経営環境を余儀なくされる事業者が増える中、日本政府では数々の経済対策を講じてきました。

その一つが令和2年5月1日に申請受付をスタートした持続化給付金となります。

持続化給付金とは、新型コロナウイルス感染症の影響で売上が減少した「中小法人」「個人事業者」を対象とした最大200万円の経済対策です。

前年同月比で事業収入(売上)が50%以上減少している月が1つでもあれば適用対象になることから幅広い事業者が受けることが可能です。

【新型コロナ】持続化給付金を最大200万円現金支給、個人事業主・中小企業向け

しかし、持続化給付金で受け取ったお金については、課税対象として扱われる点には注意しなければなりません。

この記事では、持続化給付金の税金の取り扱いについて解説していきます。

持続化給付金は課税対象

冒頭でもお伝えしたとおり、持続化給付金は課税対象です。

経済産業省ホームページでも次のように案内されています。

持続化給付金は、極めて厳しい経営環境にある事業者の事業継続を支援するため、使途に制約のない資金を給付するものです。これは、税務上、益金(個人事業者の場合は、総収入金額)に算入されるものですが、損金(個人事業者の場合は必要経費)の方が多ければ、課税所得は生じず、結果的に課税対象となりません。

出典:経済産業省「持続化給付金に関するよくあるお問合せ」

持続化給付金は「雑収入」であり、

  • 法人の場合は”益金”
  • 個人事業主(フリーランス)の場合は”収入”

として取り扱われることになります。

持続化給付金100万円が普通預金口座に入金された場合の仕訳は次のとおりです。

持続化給付金の仕訳
借方勘定科目 借方 勘定科目 貸方 摘要
普通預金 1,000,000円 雑収入 1,000,000円 持続化給付金
芦屋会計
経済産業省のホームページで案内されているとおり、持続化給付金を受け取った事業年度が赤字であれば、課税所得は0円として計算されるため法人税(所得税)は発生しません。

消費税は課税対象外となる

通常、法人および個人事業主は、売上高が1,000万円を超えると消費税の納税義務が発生します。

具体的には、

  • 2年前の”課税売上高が1,000万円超”
  • 1年前の上半期(6ヶ月間)の”課税売上高が1,000万円超”かつ”給与等の支払総額が1,000万円超”

のいずれかの条件を満たしたときです。

しかし、持続化給付金については、消費税の課税対象の要件である「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等及び外国貨物の引取り」には該当せず、不課税取引として扱われます。

芦屋会計
例えば、売上高が950万円、持続化給付金が100万円であった場合、課税売上高は950万円となるため消費税の納税義務のない免税事業者となります。

消費税の「不課税」「非課税」「免税」の違いを分かりやすく解説

持続化給付金の税金の計算方法

持続化給付金が課税対象になることで税金はどのくらい変わってくるのでしょうか?見ていきましょう。

法人

法人の法人所得税は、次のように計算できます。

法人所得税 = 課税所得 × 税率 – 税額控除額

この税率については、会社の種類と規模によって決まってきます。

年間所得800万円以下の部分 年間所得800万円超の部分
中小法人 19%(15%) 23.2%
普通法人 23.2% 23.2%
公益法人等 19%(15%) 19%(15%)
協同組合等 19%(15%) 19%(15%)

※()の税率は、2021年3月31日までに開始する事業年度に適用されます。

中小法人とは、出資金が1億円以下である法人等(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、一般社団法人、一般財団法人、医療法人など)を言います。ただし、出資金が5億円以上ある法人等と完全支配関係がある法人等は除きます。

普通法人とは、基本的には「中小法人」以外の法人等を言います。

公益法人等とは、公益を目的とする法人(宗教法人、学校法人、公益社団法人、公益財団法人など)を言います。なお、公益法人等は、収益事業による所得のみ課税対象となります。

協同組合等とは、組合員の相互補助を目的とする組合(農業協同組合、漁協共同組合、信用金庫など)を言います。

税金の比較

例えば、売上2,000万円、必要経費1,500万円のとき、持続化給付金200万円の「なし」「あり」で税金を比較すると、次のとおりです。

持続化給付金の比較
持続化給付金なし 持続化給付金あり
売上 2,000万円 2,000万円
持続化給付金 200万円
必要経費 1,500万円 1,500万円
課税所得 500万円 700万円
所得税 75万円 105万円
住民税 12万7,000円 15万円
事業税 27万6,000円 42万7,000円
合計 115万3,000円 162万7,000円

※上記の税金の負担額は目安となります。お住まいの地域や事業形態・規模などによって異なります。

持続化給付金が課税対象になることで税金の合計負担額が47万4,000円も増加することが分かります。

そのため、上記のケースでは、持続化給付金の受取金額は200万円から実質152万6,000円(= 200万円 - 47万4,000円)になる計算です。

個人事業主

個人事業主(フリーランス)の所得税は、次のように計算できます。

所得税 = 課税所得 × 税率 – 税額控除額

この税率については、サラリーマンと同じく「課税所得(= 売上 - 必要経費)」が高いほど、税率が上がっていく累進課税が適用されます。

所得税の速算表
課税される所得金額
(課税所得)
税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 9万7,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 42万7,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 63万6,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 153万6,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円

税金の比較

例えば、売上1,000万円、必要経費500万円のとき、持続化給付金100万円の「なし」「あり」で税金を比較すると、次のとおりです。

持続化給付金の比較
持続化給付金なし 持続化給付金あり
売上 1,000万円 1,000万円
持続化給付金 100万円
必要経費 500万円 500万円
基礎控除 −38万円 −38万円
青色申告特別控除 −65万円 −65万円
課税所得 397万円 497万円
所得税 37万4,000円 57万8,000円
住民税 40万7,000円 50万7,000円
合計 78万1,000円 108万5,000円

※上記の税金の負担額は目安となります。お住まいの地域や事業形態・規模などによって異なります。

持続化給付金が課税対象になることで税金の合計負担額が30万4,000円も増加することが分かります。

そのため、上記のケースでは、持続化給付金の受取金額は100万円から実質69万6,000円(= 100万円 - 30万4,000円)になる計算です。

最後に

新型コロナウイルス感染症の拡大により政府では個人、事業者に対して様々な経済支援を行っています。

その一つである国民全員を対象とした一律10万円の「特別定額給付金」がありますが、新型コロナ税特法第4条第一号により非課税所得となっています。

一方、事業者を対象とした

  • 持続化給付金
  • 雇用調整助成金
  • 休業協力金

については、課税対象として扱われます。

新型コロナウイルス感染症などの影響により事業が赤字の場合は、実質的にも給付金を全額もらうことが可能です。

しかし、本記事でも紹介したとおり事業が黒字の場合は、給付金により利益が増えた分だけ税金が上がることになります。

そのため、事業の黒字が予想されているなら運転資金が不足する事態に陥らないためにも給付金を全額使うのではなく、税金の支払いとして一部残しておくことをオススメします。

※本記事は、芦屋会計事務所 編集部によって企画・執筆を行いました。
※記事の執筆には細心の注意を払っておりますが、誤植等がある場合がございます。なお、執筆時から税法の改正等がある場合がございますので、最新の税法については顧問税理士等にご確認ください。

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